こんな夢を見た (大学のシステムを構築した経験、の話)

昨晩こんな夢を見ました。(寝ている間に見る方)

大学の指導教官が、研究室に新しいマシンたちが入ったよと教えてくれました。見ると、Sunのワークステーションです。紫色の外装パネルをつけていて、Ultra Sparcあたりの新型のようです。何台か入ったようです。とてもうれしい。
そこで先生:「セットアップしなきゃいけないんだよね。」
すかさず私:「あ、私やりますよ、システム係ですし。」
しかしそう言いそうになるすんでのところで口を紡ぎます。そうなのです、私は忙しくて新しいタスクを積むことはちょっとできなかったのです。しかし新しいマシンはいじりたい。しかも現実問題として研究室で新しいワークステーションのセットアップができるスキルをもっているのは私だけなのです。どうしようかなー。やっちゃおうかなー。でもほかも忙しいしなー。

そう考えてるあたりで目がさめました。

夢の中でまで積み上がっている仕事の量を意識してしまうのが今の俺の状況だよなー、とか思いつつ、しかし気持ちは当時のシステム構築のワクワクに飛びました。以下は夢からさめてからの回想です。

当時(というのは私が学部4年から大学院1年くらいのころ、今から20余年前)、私のいた大学の研究室では、UNIXマシンで研究作業用のシステムを作っていました。計算機でシミュレーションをさせたり、TeXで論文の原稿を書いたり、あとはメールやネットニュースを読み書きしたり、遊んだり(重要!)です。
当時UNIXマシン(Sunのワークステーションでした)は高価で研究室で導入できる台数も少なかったため学生1人ひとりには行き渡らず、複数のUNIXマシン(画面付き)をすべて同じようにログインして使えるように設定して、早いもの勝ちで画面(GUI)を使えるようにして、あるいは、これは1人1台(正確には各デスクに1台)置いてあったパソコン(Dynabookでした)からターミナルサーバ経由でアクセスして使えるようにしていました。計算機シミュレーションの実行やメールの読み書きならターミナル経由でのアクセスでも全然問題なかったのです。1台のUNIXマシンをみんなで使うようなTSSの集中システムの時代から、少しだけ分散方向に移行しつつあった時代でした。

私が大学院1年のとき(6月頃?)に研究室に新しいSun Ultra 1が入りました。懐かしいですね。当時最新鋭のマシンです。

これを既存の研究室のシステムに組み込む必要がありました。まさに上の夢で見たシチュエーションはこの時のことなのです(正確には入ったマシンは1台だけでしたが)。私はM1の夏休みをこの作業に当てました。しかも既存のシステムをリニューアルすることにした大改造でした。当時稼働していたシステムは構築から既に7,8年ほど経っていて更新はされていましたが古くなっていたのは明らかでしたし、私は新しいシステムを作ってみたくて前のめりになっていたので(今風に言えばイキっていた、とでも言うのでしょうか)そうすることにしたのです。
まさに夏休みのほとんどすべての時間を費やしたシステム構築の末、なんとか9月の新学期には新システムを稼働させることが出来ました。この研究室の新システム構築経験は、私のその後の人生に非常に大きな影響を与えたというか、礎になったものであるのは間違いありません。

ワクワクの懐かしい思い出はここまでです。翻って、今の学生さんが大学の研究室の計算機システムを作るのはどうやってやるのだろうと思いを馳せました。物理サーバが必要ない環境であれば、クラウドを利用するのでしょうか。物理サーバが必要な場合でも、その物理サーバはある研究のために専用の環境を構築するのであって、私が学生だった当時のような共用の日常環境を構築するといったことはなくなってきているのでしょうか。共用の日常環境というのはローカルの(あるいはリモートの)マシンに作り込むものではなく、SaaSの組み合わせを設定して「場」として作るものになっているのでしょうか。そうだとしたら、私が経験したような、システムを作り込む・使い込む経験というのは得られるものなのでしょうか。
年寄りの若者批判をしたいのではありません。おそらく、時代が経ることでレイヤが変化したのだと思います。物理マシン上にOSをインストールしてXを入れてNFSやらNISやらを設定してという作業が、クラウド上にシステムを作り込む、SaaSの設定を入れ込む作業に変わってきたということであって、その作業を通じての、要件を明らかにしながらシステムを設計し、コンポーネントの細かいところまで精通していくこと、トラブルシューティングを経験していくこと、などという事自体は変わっていないのだろうなと思います。そうであってほしいとも思います。
(実際のところどうなのでしょう。よかったら現在の大学の情報系の研究室のシステム構築の様相についてぜひ教えて下さい。)

私は夢からさめた後こんなようなことを考えて、そして今現在の大学の研究室でのシステムのあり方・構築の仕方を具体的にイメージすることが出来ませんでした。だいぶ現場から離れてしまったのではないかと危惧を感じたのも事実です。新しい技術・システムを使ってみて知識を得て研鑽を深め続けていかないといけないなと思いました。同時に、今の学生さんにも自分一人用よりもう少し大規模なシステムを作り込む経験というものを、与えられる環境があればいいなと思いました。

(おまけ)
私が大学院1年のときに研究室のシステムをリニューアルすることが出来たのは、それ以前に、SALA(Science Art LAboratory)という、ソニーが学生向けに開放していた研究施設(みたいなもの)に入り浸って、そこでUNIXとシステム構築について色々と教えてもらっていたからです。このときの知識こそが私の本当の礎です。SALA(の運営をされていた方)とそこに集っていた諸先輩方(今でもSNS等で繋がっている方々も多くいます。切れてしまった方もいます)には今でも深く感謝しています。どなたも皆偉大な先輩方です。
諸先輩方を見るに、私などまだまだ足元にも及ばないという気持ちで一杯になり偉そうな御高説を垂れるなどもっての他と感じますが、一方で、自分が受けた恩を後輩に伝えていかなければならないな、とも思いはじめています。機会を見て何かを伝えていきたいと思っています。(そのための何かを成し遂げなければ...という気持ちになり無限ループ...。)



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