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感想『母性』(作 湊かなえ)

こちらの感想ではネタバレは極力入れません。
ぜひ、未読の方に興味を持ってもらえたらと思います。配信アプリ「ツイキャス」で、この本の紹介しながら、配信を見ている方とおしゃべりもします。
紹介する内容、ピックアップする点は基本的に記事と同じです。
しかし、ライブ配信なので、予定調和にはなりません。

配信予定日時
7月25日(木)20:00〜
https://twitcasting.tv/c:eureka0202

*ツイキャスを見る際に、会員登録等は不要です。

*リンク先は八朔の配信ページに直接繋がっていますので、お気軽にどうぞ。

「もっと簡単な存在、母と娘です」p285

あらすじ

物語は、女子高生が自宅の庭で倒れているのが発見されたことから始まる。
女子高生の母親は「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるんて」と語る。
そこから、「母の手記」「娘の回想」「母性について」の三部構成で進む。それらが交錯して浮かび上がる真実とは。
『母性』とは何かを問うミステリー。


感想

湊かなえ作品に精通しているとは言えないけれど、どの作品読んでも「うわぁやられたぁ」という気持ちになる。途中でおかしいな、と思うのだけれど、最後の結論にはたどり着けない。
いやぁ、勝てないなぁ。
でも、その勝てないミステリーだからこそ、私は安心してこの作品を読めました。


「母の手記」と「娘の回想」は一人称で進みます。
なので、1つの出来事について語っていても、その人の感じ方によって、景色は変わって見えます。
温かい思い出なのか。
冷たい思い出なのか。

記述の順序として、「母の手記」が先にあるのです。
つい、「母」の心理を理解し、それに共感できるかどうかはさておき、それを「事実」として認識した後で、読者は「娘の回想」を読むことになります。
それが混乱を呼び、何が「事実」なのか、全く分からない状況に陥ったところで、なぜか「母性について」という章で高校教師が語り合っている。
わけがわからない!

しかも、「母の手記」で語られる義実家の酷いこと酷いこと…。
嫁いびりなんてものじゃないし、なんていうか本当に奴隷のような扱いを受けます。
義母は自分の娘には甘いものだから、余計と読むのが辛いターンです。

そこに「娘の回想」が加わると、次はジレンマに陥ります。
母に愛されたいがための行動は、子どもなりの精一杯なのだが、やはりうまくいかない。
いや、あれは娘が悪いのではなく、周りの大人のせいなのだけど…

と、ころころと変わる視点に、惑わされ、狂気を感じ、疲れたところで読むのを止めないでほしいです。
答えはその先にあります。

読後感は、満足感があります。
しかし、どこか小骨が喉に刺さっているように感じるかもしれません。
その違和感は、自分の母親が「愛能う限り、」なんて言うことのない母親だったからかな、と私は思っています。


余談ですが、今回、湊かなえさんの作品は、ドラッグストアのようだな、と思いました。
薬品、殺虫剤、化粧品、芳香剤、食品、アルコール、タバコ。
清潔に並ぶ、生活に必要なものは、取り扱い方によっては毒になる可能性も孕んでいます。
人間誰しもに宿りうる[毒]の可能性が、小説というフィクションの中に表現されていると思っています。


お前はもっとできると、教えてください。