Kohei Kamiyama

上山晃平です。中学校国語科。楽しくて学びのある授業を目指しています。探究学習、読書家の…

Kohei Kamiyama

上山晃平です。中学校国語科。楽しくて学びのある授業を目指しています。探究学習、読書家の時間、作家の時間に興味があります。関心領域は人文学と教育学、最近は経済学も気になっています。今は「読む・書く・話す・聴く」の統合を実現することがテーマ。学校と出版社をつくるのが夢です。

マガジン

  • Reading & Writing Workshop

    ひたすら読み書きに没頭する、Reading & Writing Workshopに関する記事です。

  • 2021年の推薦図書

    2021年に読んだ本をまとめています。

最近の記事

  • 固定された記事

これまでの足跡と自己紹介。

最初にこの記事を書いたのは、教員2年目の2019年のこと。あれから4年の歳月が流れた。2020年には初任校の教務主任から「1年につき1本、論文を書いたほうがいい」と言われ、初めて教育論文を執筆、応募した(僕は人文学部卒の人間なので、卒論も文学で書いた)。 結果として入選はしなかったが、論文という形式で書く行為そのものが、今までにないリフレクションになった実感があった。それから論文を書くことがライフワークになり、こうしてnoteの記事を書く習慣もついた。逆に、書くことを控えめ

    • インストラクションをやめてみる。

      2024年4月17日(水)の夕方。僕は長岡市へ車を走らせていた。何か鬱々としたものが、胸のあたりに刺さっているようでもあったし、詰まっているようでもあった。とにかくよい気分ではなかった。 いつもの詩作で始まるはず、が 異動したての僕は、まず環境に慣れることを最優先にしたかった。全学年の国語を受けもつのと、空きコマが今年は少ないのとで、いきなり3学年ぶん別々の授業準備をするという選択肢を捨てた。授業の質を担保するためでもある。だから、どの学年も詩作の授業で始めることにした。

      • 読書家の時間、虚構が現実を変えるとき。

        読書家の時間(Reading Workshop)。学生時代にこの授業の存在を知り、初任者の2学期から実践を始めた。本から得られる情報以外はリソースがほとんどなく、先輩教員のK先生のRW以外はしっかり見たことがない。常に手探りで実践してきたRWだが、先日の授業でようやく手応えが感じられるようになってきた。 2024年の2~3月にかけて、1・2年生を対象に20時間の「読書家の時間」を行った。最終課題はレターエッセイ。その中で自分なりに手応えのあった「生徒が自立した読書家として育

        • 俳句の解像度を高める質問づくり。

          解像度という言葉が市民権を得てきた。僕がこの言葉を初めて知ったのは、落合陽一の本だったと思う。元々はコンピュータのディスプレイ上に表示される図や画面の総画素数を指す言葉で、解像度が上がれば上がるほどグラフィックが鮮明であることを示す。最近はこんな本も出てきて、目に見えないイメージを具体化する意味での一般的な比喩表現になってきたのかもしれない。 俳句や短歌、詩歌の単元を終えた後に、「鑑賞文を書こう」なんていう課題は教科書中によく設定されている。しかし、生徒たちに鑑賞文と感想文

        • 固定された記事

        これまでの足跡と自己紹介。

        マガジン

        • Reading & Writing Workshop
          6本
        • 2021年の推薦図書
          7本

        記事

          『訂正可能性の哲学』を読んで思う、僕が授業で本づくりを目指す理由。

          はじめに 初任者の頃から読書家の時間、作家の時間にチャレンジし続けてきた。そうした学びを経て1年間の国語を終えたとき、どんな収穫があったらよいのだろう。そう問い続けてきたけど、最終的に生徒の作品を本にして読み合いたいというのが今年の目指すところだ。1年間の授業を終えて、生徒に本を手渡せたらどんなにいいだろう。学びの足跡が目の前に質量をもって存在するというのは、達成感や充実感に溢れた体験だと思うのだ。 いや、でも手渡すって言うと、僕のつくった本をみんなに手渡す感じだ。そう

          『訂正可能性の哲学』を読んで思う、僕が授業で本づくりを目指す理由。

          働くということ。

          noteのダッシュボードを眺めていると、過去に書いた記事がなぜか消されているのを幾つも発見した。昔の僕が恥ずかしがって削除したのだろう。でも、今になって読み返すと味わい深いものがある。なんだか勿体ないからリサイクルすることにした。 以下の文章は、2019年5月5日、22時4分に投稿された記事である。僕がまだ教員2年目の頃だ。この時間まで教材研究していたのだろうな。教員に慣れることに必死で、授業も部活もうまくいかなくて、毎日帰ったら気がつくと寝ていて、起きてすぐ学校へ向かって

          働くということ。

          2022年、教師に薦める本5選。

          久しぶりの更新。最近は、総合学習をどのように進めていくか、ということをよく考えている。 この実践をブラッシュアップしたものになるし、自分の専門領域がふんだんに活かせそうなのもあって、とてもわくわくしている。ちょうど、その総合探究が走り出したところ。 PBLに関係あるものもあるし、ないものもあるけど、直近で読み終えた5冊を紹介したい。 プロジェクト学習とは PBLという言葉も、身近に使われるようになってきたと思う。Project Based Learning,プロジェク

          2022年、教師に薦める本5選。

          国語教師が中学生に薦めた本10選、後編。

          前回の記事に予想以上の反響をいただいた。 RW/WWを2月から予定しているので、それまでに生徒が興味をもちそうな本をできるだけ図書室に入れておきたい。 さて、今回も冬休みにぴったりの10冊を紹介する。 中学生諸君、読書はいいぞ! 『子どもの頃から哲学者』私の敬愛する、もはや説明不要の教育哲学者、苫野一徳先生の自伝的著作。 今の印象とはかけ離れた、衝撃的な経験の数々!(笑) だれも僕のことなんてわかるもんか(わかられてたまるか)。友だちがいない。便所飯のパイオニア。全校

          国語教師が中学生に薦めた本10選、後編。

          2021年、教師に薦める本5選。

          時代の急激な変化、といった手垢まみれの言葉では表しきれないくらい、日に日に人間を取り巻く環境は変わっている。 教員4年目。 最近に特に思うことだけど、大人こそ学ぶ姿勢が必要だと思う。 生意気だと言われるかもしれないが、生徒の姿を見ていると余計にそう思う。 大人が新しい知識を得ていかないと、既存の価値観や経験値では、とうてい太刀打ちできないような問題にぶつかる。 ほとんどの人は、それらの問題を解決しようとせずに何かのせいにする。 結果、不幸な学校や家庭が増えていく。 そし

          2021年、教師に薦める本5選。

          国語教師が中学生に薦めた本10選、前編。

          もうすぐ、今の学校に赴任してから初の夏休みを迎える。 なかなか担任している生徒とうまくいかず、へこたれそうになった時期もあった。 しかし、徐々に生徒との関係性はよくなってきた。 課題は山積しているけれど。 教員4年目にして、勉強が必要だと感じる。 夏休みは存分にインプットしたいな。 さて、7月からReading Workshopを始めている。 RWを実施する前の準備段階として、4~6月の学年だよりにしつこく推薦図書を掲載し続けてきた。 学級文庫や図書室の中から、10代

          国語教師が中学生に薦めた本10選、前編。

          SDGs×地域課題、その学習を振り返って。

          今年、総合的な学習の時間における「プロジェクト型の学び」を考える機会に恵まれた。 総合学習というと、「地元を学ぼう」といった単元学習、職場見学・体験などが、真っ先に思い浮かぶのではないだろうか。 そうした経験も大切であることは間違いないが、毎年の恒例行事と化してしまうことが多い。「何のための職場体験だっけ?」 また生徒のアウトプットも、スライドによるプレゼンテーションやポスターセッションなど、決まりきった方式で行っている場合も少なくないと思う。 なぜ探究学習なのか紋切

          SDGs×地域課題、その学習を振り返って。

          生徒に宿る言葉をフィードバックしたい。

          3年生が卒業した。 先の記事でも書いたように、今年度の授業、RW/WWもこれにて終了。 レターエッセイはほぼ全員が書き切った。 文章には、一人一人の個性が出る。 レターエッセイを読むと、それを実感する。 青春群像劇、グルメ、ミステリー、ホラー。 関心をもつものも違うし、文体も違うし、注目するところも違う。 「みんな一緒に」の作文教育では、こうはいかない。 完成した作品を読んで評価するときが、最も楽しい(そしてしんどい)。 コメントにも熱が入る。 3学年はおよそ60人

          生徒に宿る言葉をフィードバックしたい。

          生徒が書く、教師も書く。

          社会人1年目から見てきた3年生が、間もなく卒業を迎える。 残り少ない彼らとの授業・会話を楽しんでいる一方、一抹の寂しさも覚えている。 アトウェルのレターエッセイ3年生の授業は教科書範囲も終わったため、何度かここでも紹介しているWriting Workshopを参考に、書く活動を行っている。 Reading Workshopは1・2年目でも行ってきたが、いまいち「生徒が書きたいように書く」というイメージがつかめずにいて、Writingには手を出せずにいた。 しかし、もう3

          生徒が書く、教師も書く。

          新学習指導要領が学校に変化を起こす3つの理由。

          2021年4月から新学習指導要領がいよいよ全面実施となる。 それに合わせて、職場も少しざわついてきた。 新学習指導要領の最大のポイントは、評価が変わることである。 例えば国語科で言うと、5つもあった評価の観点が3つにまで絞られる。 旧指導要領下では、作文は「書くこと」の分野で評価、ディベートは「話すこと」の分野で評価……など、ある程度の棲み分けがなされていたため、分かりやすく評価することができた。 しかし、今回の改訂によって、評価の観点はこのように変わる。 この、「主

          新学習指導要領が学校に変化を起こす3つの理由。

          「私だけの先生」はいますか?

          皆さんは、好きだった先生はいますか? 中でも、「みんなはそうでもなかったけど、私は好きだったな」という先生、いませんでしたか? リーディング・ワークショップで紹介するために、中高生向けの本も読むようにしています。 この習慣のおかげで、自分が読んでこなかった名作に出会うこともしばしば(『西の魔女が死んだ』『博士の愛した数式』など)。 中でも、先日読み終えた『先生はえらい』。 この本が「学ぶってどういうこと?」「先生って何?」という問いに対して、著者が脱線しながらも本質的

          「私だけの先生」はいますか?

          選択肢を与えればよいわけではない。

          授業の中で、選択式の課題を設定したことは今までにもあった。 「課題を選択式にすれば、生徒の学習意欲が高まるだろう」という浅はかな意図しかないままに、授業づくりを行っていたこと。 この本を読んで、そのことに気づかされた。 ストレッチゾーンにいるということこの本の序盤に、ヴィゴツキーの発達の最近接領域(ZPD,Zone of Proximal Development)という言葉が頻繁に出てくる。 ZPDを簡単に表現すると、ストレッチゾーンである。 例えば、自転車に乗れない子ど

          選択肢を与えればよいわけではない。