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ひとりの水泳指導者としてできること

命を預かっているという自覚

危ない。「起こるはずはない」という認識

悲しい事故が起きてしまいました。
昨年の今頃は、あの知床の観光船の遭難事故がありました。
今年は陸上自衛隊のヘリが墜落、沈没しました。
いずれも水の中で尊い命を落としました。

昨日のYahoo!ニュース。
衝撃的なニュースを目にし愕然となりました。

富山県高岡市のスイミングスクールで5歳児の死亡事故。
十分な監視体制ではなかったことが原因のようです。
【記事はこちら】

私も富山県に長く住んでいましたので、当該施設のことは知っています。
どちらかというとジュニア選手の育成に熱心なクラブで。
私にとっても「まさか」な事故でした。

このクラブの代表のコメントにありました。
「溺れるわけはないだろうという過信があったのだろうということだと思います。」
この一言に尽きます。

私たち水泳指導者ほど思ってはいけないことです。
水と共にいる以上、大事故は背中合わせ。
事故が絶対に起こる前提を心がけておかないといけません!

きっと、当事者も
「そんなこと分かってるんだよ。」
そういうことなんだろうと思うんです。

慣れとか、偶然とか。
きっと他にも同じようなケースは何度かあって。
助かっていたから今回も大丈夫だと思ったのか?
そういうのは絶対に認めていてはいけないのです。

水泳指導者や施設管理者の心構えは常に高く。
事故を未然に防ぐ。
これが必須というか前提なはずなのです。


事故のニュースを見た日に

同じく昨日、私は子供たちを連れてとあるプールへ。
いわゆる一般開放のプールで子供たちを遊ばせました。

昔からあるプールです。
でも私にとっても子供たちにとっても初めてのプール。
どんな感じなのか楽しみでした。

しかし、入場してすぐにガッカリに変わってしまいました。

まず、「監視員」とみられるスタッフがいません。
プールには約30名の利用者。
家族連れから高齢のお客様までがプールを楽しんでいます。

施設には「監視中」という貼り紙のガラス越しにスタッフルーム。
でも、数分おきにプールを覗き見るスタッフがいるだけ。
プールには誰もいないという奇跡に近い環境でした。

当然、水質もよろしくない。
潜っても5メートルのちょっと先までしか見えません。
それどころか二羽の鳩が天井近くを飛んでいて。
あの鳩がもし糞を落としたらこのプールって…。
そう想像すると鳥肌でした。

飛び込み禁止の表示はあるけれど、余裕で飛び込む子ども。
当然注意する人などいません。
滑りやすいプールサイドを全力疾走する子ども。
当然注意する人はいません。

正直、恐ろしかったです。

我が子を遊ばせるために行ったプールでした。
このプールはこれがスタンダードなのか?
事故が起きていないなんて奇跡だ。
ましてあのニュースを見た当日に!
ドン引きというかなんというか。
ショックに近い感覚でプールを後にしました。。。


コメント欄を見なければよかった

各スイミングスクールにおいては人材確保に苦労している現状。
よくよく理解できます。
経営上、それでも回さないといけない事情も理解できます。

でも、今回のような事故が起きてしまっては経営も何もないんです。

失われた命を元通りにすることはできないんです。
絶対に。

プールでレッスンしている以上、水を飲んで吐いちゃうとか。
転んで皮膚をケガしてしまうとか。
どんなに安全に配慮していても少なからずあると思います。

でも、それを「見ていたか」どうか。
十分な監視体制のもと、説明のつくような事故で大事に至らせない。
命を預かる以上、これが最重要ではないでしょうか。

事故を起こしておいて「見ていなかった」じゃ話になりません。
だって、お金を頂いている以上はプロなんだから。


安全で楽しい指導、指導力の向上を心がける

私の胸に深く刻まれた水泳指導者としての「訓示」です。
安全で楽しい指導、指導力の向上を心がける。
私はこの言葉の示す通りに水泳指導を行っています。

ひとりの水泳指導者として、昨日は大変ショックな一日でした。
事故もそうだし、プールの現状もそう。

でも、こんなことではこの業界はいけませんね。
しっかり正すところを正していかないと本当に滅びます。
そんな危機感さえあります。

私の事業はマンツーマンが基本です。
だから大人数を指導するスイミングスクールに比べると事故のリスクは相当低いと考えています。
でも、それでも事故は想定外に起こるもの。
そういう心構えで指導させて頂いています。

そして、一般社団法人パワーストロークの理念に基づく水難訓練。
安全に水に親しみ、水を楽しむための普及活動です。
ひとりの水泳指導者としてできることを考えて取り組んでいます。

もっと高い安全意識で、もっと質の高い指導を提供したい。
そういう志をもって、お客様の前に立ちたい。
心からそう思っています。

もう一度。失われてしまった命はもう元通りにはなりません。
まだ5歳。
楽しいはずのプールでなんて残念な事故でしょうか。
水の中で苦しかったよね。つらかったね。
本人、ご家族の無念を思うと涙がこみ上げてきます。

もう二度とこのような事故が起きませんように。
心よりご冥福をお祈りいたします。

そしてまた私は気持ちを引き締めプールへ入ります。
最後までありがとうございました。
また連絡します。



スイミングスクールのない地域、水泳を教えられる先生のいない地域へ出向いて指導を提供し水泳を安全に楽しむ技術や水泳を通した健康づくりを普及させたいと考えています。ぜひ皆様のお力をお貸しください。