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【エッセイ】不思議な昆虫ユープケッチャ(500字)

昨日聴いた絶望名言の中で語られていた「ユープケッチャ」という安部公房が考えた架空の甲虫。小説「方舟さくら丸」作中に登場し、肢が退化し動き回れない代わりにその場でぐるぐる回り、自分の排泄物を食べ、1日かけて1回転するので時計虫とも呼ばれるとのことだ。そのゆっくりとした回転の中で食べた排泄物を消化管内で発酵し栄養を強化するので食べるのには困らないらしい。

ユープケッチャ想像図

ラジオの中で文学紹介者の頭木弘樹さんはこのユープケッチャはヒトの自給自足への欲求と解説されていた。

私はユープケッチャの説明を聴いた時に永遠に成長しない我々の精神の隠喩だと感じた。

我々はどうしても自分のうちから出るものを大切に抱え、変化や進歩を忌み嫌う性質を強く持つ。平たく言うと激しく保守的だ。

まるでユープケッチャのように自分から出る便で満足する。それを幸せと感じるのか。悍ましいと感じるのか。人それぞれだろう。しかし私は思う。自分から出るもので十分なら、生きている意味など全くない。生きていることに意味はないと言い切るヒトがいるがそれをヒトに強要するのは間違いだ。どんな辛い経験をしたか知らないが、そんなことは自分の中で抱えておいて欲しいと思う。

生きている意味を考えるのが正に、生きている意味ではないだろうか。と私は強く思う。

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