見出し画像

黒髪

 日本で出演させていただいたバレエ公演で、海外のダンサーと話していて第一声に質問されたことが、

「なぜ日本人は茶髪なのか、あれは地毛なのか」

だった。

 それはきっと私が黒髪だったから、自分達の知っている日本人のイメージとぴったりで、だからそのような質問をしてきたのだと思った。
 確かに、洋画で観るアジア人は皆髪の毛が黒いイメージがある。それもあってか、彼らのほとんどは、映画で観る黒髪日本人が、日本人だと思っている。



「なぜ日本人が茶髪なのか。」


 その質問を聞かれて思い出したが、そういえば、アメリカから日本に帰ってきた当時、日本人の茶髪にかなりの違和感を感じた。


アメリカにいた時は、堀の深い顔立ちに金髪や赤毛、茶髪という見た目に見慣れていたため、帰国してから、東洋の顔をしているのに茶髪や金髪という見た目がどうもミスマッチだと思ったのだった。


そしてこの海外のダンサー達も、その見た目に違和感を持っているということがわかった。


その質問に対して私は、

「オシャレの一環だと思う」

と答えた。



 15歳と16歳の夏、私はバレエのABTサマーインテンシブに合格して、夏季合宿に行かせていただける機会をもらった。

ABTサマーインテンシブにて(2016年)


アメリカ人の子供達13〜18歳と一緒に寮で暮らす機会があった時に、金髪で青い瞳を持つ子達が、みんな褒めてくれるのだ。
何をって、この黒髪と黒い目を。


 初めは冗談かと思った。なぜかというと、日本でおしゃれな人といえば、茶髪にしている人だからだ。


 しかし、どうも本気で言っている。褒めている。



 そして、アメリカに住み始めてから何ヶ月も経ち、英語がだんだんと理解できるようになってくると、サマーインテンシブ以外でも、通っているバレエスタジオ、ご近所さん、そして学校のチアリーダーでさえ、私の黒髪と黒目を褒めてくれるのだ。

 そんなに褒めるのはなぜだろう。
 そこで、なぜそこまで褒めるのか聞いてみた。



 その理由は。

 髪にハリがあって、天使の輪があって、サラサラで、黒い目。これがもうクール&ビューティーらしい。


あぁ、質問してしまってごめんなさい。

そう、心の中が恥ずかしくなった。


 日本人在住が少ない州に住んでいたのもあり、私が、黒髪、黒目という、日本人らしい、彼らが知っているイメージを作っているようだった。
うーん、もっと綺麗な黒髪を持つ子はたくさんいますよ。私は本当にただの普通の黒髪なんです。
私は私の髪の毛を褒めてもらうのがとっても申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 それはともかくとして、そうこう彼らと話すうちに、私達が白人の金髪や茶髪、青い目に憧れるように、彼らも私たちの黒髪や黒髪に似合う目の色を素敵だと思ってくれるんだ、と気付かされました。だから私は、あの時思った気持ちを忘れずに、黒髪を大切にしようという思いがあり、地毛である黒髪で過ごしています。

実は、黒髪は海外の人からはウケがいいみたいですよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?