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自由すぎる自由研究

夏が来れば思い出す。
息子が小学生だった頃の、彼の自由研究。

小学生の夏休みの宿題の中で、最も親を悩ませるメインコンテンツ、ザ・自由研究。
そんな親の心の声が届いたのか、最近では「読書感想文か自由研究」を選べるようになっている学校もあるようです。我が息子の学校もそうでした。

毎年最初の1週間でなつやすみのともを終わらせるMy Son、その年は応募作品となる習字も早々に終わらせて、あとは読書感想文か自由研究を終わらせるばかりとなっておりました。
7月も終わろうというある日、「さっさと読書感想文やっちゃいなさいね」と言うと、息子が誇らしげに言うのです。「今年はボク、自由研究やるんだ!」
自分の息子ながらナンですが、息子さんに「研究」のココロがあるとは思わなかったので少しビックリ。すると彼は、更に誇らしげに私にカラクリを告げるのです。
「友だちと一緒にやるって約束したんだ!」

その友だちとやらの名前も聞いたけど、いままで聞いたことのない名前。少なくとも我が家に遊びに来たことはない子だ。学校では親しくしてるんだろうか?
「それでね、その自由研究の関係で◯◯川に行きたいんだけど、どうやって行けばいい?」
我が家から◯◯川は、自転車で20分はかかる距離。そして我が息子さんはかなりの方向音痴でありまして、母親としてはあまり一人で行かせたくはない場所。仕方ないので車が空いているときに連れて行ってあげる事にしました。
息子を車に乗せて、いざ◯◯川に向かいながら、私、聞いてみたんです。
「大井川に行って何すんの?」
息子さん、誇らしげに言います。
「写真を撮るんだ!」
……写真?(。-`ω-)
「写真を撮ってどうするの?」
「色を比べるんだよ」*/*/
……色?(。-`ω-)
「何と色を比べるの?」
「あのね、友だちが昨日海に行くって言ってたから、海の写真を撮ってきてくれてるはずなんだ。あと、明日2人でプール当番だから、そこでプールの写真を撮れるでしょ」
……海?プール??(。-`ω-)
「それからね、あとコーラ!」
`;:゙;`;・(゚ε゚ )ブッ!!

「ちょ~~~~~!!!まてまてまてまてまて!!!」
お母さん、大慌て。
詳しく聞きなおしてみると、要するに「水の色を比べよう」という自由研究をするんだそうだ。比べる方法は、撮ってきた写真を見比べる。水の色を比べてどんな結論を出したいのかわからないが、海と川とプールとコーラの色を比べると言っている。
きっと友だちと二人で盛り上がって「いいじゃんいいじゃん!」って話になったんだろう。
母が何故慌てているのか全く理由がわかりませんけど、どうしましたか?という顔をしている息子さん。

とりあえず母として、このまま「海と川とプールとコーラの写真で色を比べました」という自由研究を提出させるわけにはいかないので、慌ててコンビニにピットイン。
「いいか、息子よ。海や川を写真に撮ると、角度や天気で全く違って写る。たった1枚の写真をして色を比べて何らかの結論を得るのはまず無理であるぞよ。故に母としては、せめて海や川やプールの水をペットボトルに汲んで、その濁り具合や色を比べることを提案する。あと、コーラはやめろ。」
すると、息子さんも何となく問題点がわかった&ペットボトルに水を汲んで比べるというのがちょっと彼のツボに入ったらしく、コンビニで水のボトルを3本買って、川へGO。
残念ながらいい天気が続いたあとだったので、川の水は限りなく透明に近い透明であった。水道水と変わらんwww

翌日、空にしたボトルを息子に持たせてプールに送り出し、母は友人と会う際に頼んで海に寄ってもらい、海の水をボトルに収めてきた。これで我が家には「海の水」「川の水」「プールの水」「水道の水(汲んだ)」「コンビニで売ってる水」のボトルがそろった(コーラは却下)。
いよいよ自由研究の始まりである!

材料が揃って、あとはその友だちが今日家に来たら、写真とペットボトルを材料に研究をまとめるだけ。そのへんは、まあ、本人たちに任せようと生ぬるく見守っていたのだが……。

来ない。

その友だちが、いつまで待っても来ないのである。
「友だちどうしたの?」
と聞くと
「分からない。電話してみたけど繋がらない。約束を忘れているのかもしれない」
とのお返事。
「じゃあ、しょうがないから明日だね」
「明日からしばらく、新潟のおばあちゃんちに行くから無理だって」
……(。-`ω-)?
「あ、そういえば、友だち海の写真撮ってくるの忘れたんだって!だからママが撮ってきてくれて助かったよ!」
……(。-`ω-)?

このへんで、私の頭には相当数の「?」が浮かんでた。
そのお友だちの役割は「海の写真を撮ってくること」だけじゃなかったか?そのたった一つの約束は忘れるわ、まとめようと言ってた日を忘れるわ、翌日から新潟に行っちゃうとか……。
「その友だち、大丈夫?ホントはやる気ないんじゃないの?アンタが一人で張り切ってるだけなんじゃない?」
「そんなことないよ!一生懸命調べてくれてるんだよ!カルキのこととか塩素のこととかカルキのこととか!」
カルキや塩素が好きなのか、その子は。
とりあえず、私がその子を否定しようとすると一生懸命かばう息子さん。私も知らん子のことをそれ以上悪く言うわけにもいかんので、とりあえず引き下がっておく。

8月後半に入っても、件の友人から連絡はない。
そろそろ水が腐るんじゃないかと心配する母。
息子を促して連絡を取らせると、もうとっくに新潟からは帰ってきていたようだ。しかし、とりあえず今日は来られないという。

それを聞いて、母としてはやることがひとつあった。
読書感想文作成の準備である。
絶対大丈夫だよ、と友だちをかばう息子を説き伏せて、読書感想文を下書きさせる母。そして原稿用紙を用意して、翌日を待った。

翌日、ようやく件の友だちが来た。
これで一安心、私の心配も杞憂であったならそれでよし。
と寝室で猫とイチャイチャしていると、どうもリビング方面で息子と友だちがもめている様子。どうも友だちが「用事がある」とかで帰ろうとしているらしい。おいおい、まだうちに来てから1時間も経ってないよ。
あまりに息子の引き止め方がエキサイトしてきたので、さすがに様子を見に行ってみると、私の顔を見た瞬間にはっきりと「( ゚д゚)ハッ!」という顔をして、態度が変わる友だちA。家に来た時のまんま、ヘルメットすら脱いでない、カバンも下ろしてない状態。
……この子、何しに来たん?(;´∀`)

結局息子が引っ張って写真をプリントしにコンビニに行ったのだが、しばらくして一人で帰ってきて、ポツリと彼は言った。
「読書感想文、清書するね」

そんなふうに、息子が大人の階段をひとつ登った、小学6年生の夏休みでありました。
そんな無謀な自由研究をしようとしていた息子も、いまや大学院生。先輩が研究の発表間近で隣の僕の机にまで資料を山積みにしてるので学校に行っても何もできない…という文句を言う程度には、研究というものをやる立場になりました。
そろそろ、彼が忘れているこの恥ずかしい自由研究のことでも話して恥ずかしい思いをさせてやろうかなと思う今日このごろである。

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