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恐怖の合唱コンクール

夏休みが明けると、いよいよ合唱コンクールだ!
私が通っていた小学校では、運動会、秋の遠足、極寒のマラソン大会に並ぶ一大イベントだった。
この日に向けて4月終わり頃から、選曲、指揮者、伴奏者、練習日の計画、衣装をどうするかなど、学級会での話し合いが始まる。
初めはみんな「夏休み明けだから、まだまだ先だよねぇ。」といった感じで意見も出ずのんびりしているが、1ヶ月もすると次第に熱が入り始める。


課題曲は先生の選曲で決まっているので、まずは自由曲を決める。
指揮者は、去年に引き続きA君に決定!
練習は、「とにかく頑張ろう!」ということで、毎日放課後に行う!
衣装は、上は白の長袖シャツ。ズボン、スカートは黒で統一!
体育館シューズはきれいに洗って当日に挑むこと!


生徒数の少ない学校だった。1学年で多くて3クラスほど。
その為、ピアノ伴奏ができる人は極少数に限られる。
私の学年は2クラスしか無く、6年1組でピアノを弾ける人は私しかいなかった。必然的に、伴奏者は・・・私・・・ということになってしまう。


小学生生活最後の合唱コンクールだ。
緊張するけど、ここは頑張るしかない。
楽譜を家に持ち帰り、何度も練習する。
週1回通っていた近所のピアノ教室でのテキストとは比べものにならないほど・・・難しい・・・。
でも、ここはやっぱり頑張るしかないのだ。


6月7月と日を追うごとに、クラスのみんなは練習に熱が入り、殺気立ってくる。練習も放課後だけでなく、授業と授業の間の10分の休憩時間や昼休みにも、いつの間にか歌っていた。
早く給食を食べ終わって練習!といった雰囲気なのだ。


ピアノの練習も、毎日家で頑張った。
静かで流れるような音で伴奏が始まり、歌に合わせて次第に力強く・・・。
力みすぎたからか、家族から「リズムがバラバラ。」「音がきつい。」「大丈夫?」など指導が入る。



いよいよ7月始めから講堂のステージでの自主練習だ。
ステージにはグランドピアノが黒く光る。
そっと蓋を開けて鍵盤を叩くと「♩♩♫ ♪」。
家のピアノとは全く違った音がする。緊張はMAX・・・。


そして夏休みに突入。
3日ほどある登校日は、先生のお話、教室の掃除。そして合唱の練習!
みんな走って講堂へ行き、歌う。
指揮者のA君もやる気満々。
なぜか早々と、白い長袖シャツと黒いズボンの衣装で来る男子もいる。
暑い講堂で汗だくである。


2学期が始まった。
始業式での校長先生の「2学期はとにかく行事が多い。まずは合唱コンクールだ。みんな精一杯やろうね!」というお話にますます緊張する。
休み時間にひとり講堂で弾いてみたが、緊張しすぎて小節を飛ばしたり、体が硬くなって指が思うように動かない。まずい・・・。
でもコンクールは来週だ。

ついに、本番当日。
6年生なので出番は後半。
正直、私は待っている間に緊張しすぎて疲れ切っている。
しかし、みんなは漲っている。

6年1組の番になり、みんなでステージへ上がる。
静まりかえった講堂で、ピアノの譜面台に楽譜を置く。
A君、そしてみんなと視線を交わす。

「♬♩♪♩♬♩♬♬♪♪◇▲◆#◎☆★♭?∮∪⊆§£∞∂・・・・・」

私は弾いている。みんなは歌っている。あとは・・・真っ白だ。


生活していると、楽しい時もあれば、そうでない時もある。
疲れている時は、なぜかこの合唱コンクール当日の夢を見る。
「うわっ」と目が覚めて、「あぁ夢か・・・。」と、ちょっと安心する。




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