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きくちよKG
2023年5月30日 23:39
「文学は懐が深い。テーマにならないものはない」 作家の小川洋子さんはそう言い切る。それでも自身、苦手な分野があるといいます。 それが「性・官能」をモチーフとする分野。 なるほど、上品なイメージがある彼女の作品。でもそれとは裏腹に、弟の肉体を密かに慕う姉だったり、妊娠した姉に殺意を抱く妹だったりと、書くテーマは禁断領域に軽々と踏み込んでいます。 透明感をまとった穏やかな言葉遣いに身を任せて
2023年7月19日 19:39
もうこの世にない人がいいのですなぜなら誰をも裏切らないから誰のものでもないから決して手にすることはないからずっと美しいままだからうつつのものでなければ手に入れようともがくこともないし成就のむなしさを予感することもないし裏切って苦しめることもないし知りたくないことを知って憎むこともありません『眠れる美女』 川端康成/新潮文庫うつつの切り裂き魔・カワバタが見せる地獄の所
2023年5月23日 10:36
小説の冒頭、さらには最初の一行というのは、いわば物語の顔。 これが印象的だと、物語の世界に一瞬で入り込めます。 最も有名なのが川端康成の『雪国』だけど、これに限らず川端はとくに短編における冒頭がすこぶるパワフルなのです。 たとえば、『片腕』の冒頭。 ありえないことをありえない世界の中で描くと、ファンタジーが予定調和の域を出ない。 そうではなく、このように不条理を強引にして繊細に