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現代の教養のための大学入試小論文 #12 ~コミュニケーションスキルの習得~

ごきげんよう。小論ラボの菊池です。

人間は「コミュニケーションスキル」をどのように学んでいくかということについて、成長段階を追いながら考えていきます。

キーワード

コミュニケーションスキルの習得

説明・要約

 人の豊かな社会生活を成り立たせているのは他者とのコミュニケーションである。コミュニケーションには人と会ったり話したりして行う直接のコミュニケーションと、文字や画像をやり取りして間接的に行うコミュニケーションがある。後者はネットでのやり取りが主流だ。コミュニケーションスキルを学ぶのに重要なのは直接的なコミュニケーションでの経験である。それは複雑な過程を伴うがゆえに、自分が相手に向かって表現したことを相手がどう受け止めるか、また相手から自分に表現されたことをどう受け止め解釈するかについて、小さな決定と小さな検証が連続して発生する。コミュニケーションとはその相互作用である。
 決定と検証が必要とはいえ、それを絶えず行うと、コミュニケーションの流れが阻害される。そのため、手続きのかなりの部分を省略することで、相手との一体感が感じられ、コミュニケーションが深まる。これには相手への「信頼感」が必要だ。
 こういったコミュニケーションスキルの習得は乳幼児期からはじまっている。乳児期の赤ちゃんは、養育者との間にゆっくりとした一定のリズムをもつシンプルな関わり合いをもっている。あやされたときに声をあげて反応するのもこの一部であり、この一連のやり取りがその後の発達を支える。
 幼児期になると、養育者に対して感じた信頼関係や安心感が子どもを支え、他者が自分を支える存在であるとともに、他者を自分の鏡として捉え、他者のために自分が行動する能力をもつこともイメージできるようになる。
 小学校入学後の児童期には、子どもたちは急激に社会の視界が開けていく中で、仲間同士の親密さや自身の孤独を通して、本格的に複雑な大人のコミュニケーションを磨き始める時期になっていく。コミュニケーション習得の試練はここから始まる。
 思春期以降は、多くの行動パターンの引き出しをもち、複数の可能性を同時に考え、そこから適切と思われる考え方をひとつ試してみて相手の反応を見ていくようなコミュニケーションスキルが期待され、自分もそうありたいと思うようになる。思春期から培ったコミュニケーションスキルはその後の人生に寄り添うようになる。
 人の人生は、どの段階でも様々な人との関係の中で営まれ、コミュニケーションが存在し、スキルが磨かれる。特に青年期は、過去・現在・未来の自己のイメージを統一したものとして連続して考えることが求められる。人生の仮まとめだ。自分は他者と折り合いをつけていける存在なのかを問うのがこの時期なのである。

出典

新谷和代著『地域活動のススメ すべての世代がひとつになれる、とっておきの方法』(幻冬舎ルネッサンス新書、2019年)

出題校

福島大学人文社会学部人間学科―特別支援・生活科学(前期)

解説

 私たちは日々他者とのコミュニケーションの必要に迫られます。その際に、相手の言葉や動作から瞬時に判断し、適切な反応をすることになります。相互にこのやり取りをすることで、コミュニケーションは成立します。そして、このスキルの習得は乳幼児期からはじまっているのですね。人生とはコミュニケーションの営みだとも言えそうです。
 発達していく過程でのコミュニケーションについて知りたい方は、「情動調律」、「基本的信頼関係」、「自我同一性(アイデンティティー)」などを調べてみてください。

拙著もよろしくお願いいたします。それでは♨


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