見出し画像

マイナポータル利用規約の怪しい言語表現について

長すぎる等の点で物議を醸しているマイナポータルの利用規約ですが。
私もマイナンバーカードを作った後に、初めてちゃんと利用規約を読みましたところ、日本語表現がアレ過ぎることに気がつきました。

利用規約の作成・レビューには、高額な費用を払って法律事務所に依頼していたり、優秀な官僚も携わっていると考えられます。
それなのに。
驚きのあまり思わず記事にしました。


おかしな日本語

1. 「HUNTER×HUNTER」的なやつ

マイナポータル利用規約14条
利用者が、口座情報登録等(省略)を行う場合、デジタル庁に対して次に掲げる事項について同意したものとみなします。
一 デジタル庁に対して、氏名、住所、生年月日及び個人番号を提供すること。
(以下省略)

https://img.myna.go.jp/html/riyoukiyaku_ja.html

これは利用者がマイナンバーカードと銀行口座の紐付けをした場合の個人情報に関する規定です。言いたいことは分かる。

けど、落ち着いて整理して要約すると、次のようになります。

デジ庁「利用者がデジ庁に対して『デジ庁に対して氏名等を提供すること』を同意したものとみなします」

なんかよく分かんないですね。
「デジタル庁に対して」が重複してます。1個削除しないと。

そもそも、利用者はマイナンバーカード作成の申し込みの時点で、デジタル庁に対して氏名等を提供していますよね。
なぜ「銀行口座との紐付け」という局面で、あらためて個人情報を提供したような形になるんだ?

しかも「提供することを同意したものとみなします」とかいう遠回しな言い方。
「既に提供されている個人情報を銀行口座との紐付けのためにも使いますよ」(利用目的の明示)という形なら理解できるが。

さらに「デジタル庁に対して×2」という表記ミス。
何か「HUNTER×HUNTER」的な深い意味があるのでしょうか。

2. 「対して」の使い方

22条3項本文
「デジタル庁は、次の各号のいずれかに該当すると認められる場合は、利用者に対し、事前にマイナポータルに掲載して、システムの利用の停止、休止又は中断をすることができるものとします。」

「利用者に対し」が何にかかっているのか不明です。
「掲載」?「システム利用の停止」?
どちらにしても日本語として不自然です。

利用者に対して「通知」するとか「利用停止処分」をするとかなら意味は分かりますが。
文章をよりよく変えるとしたら、「・・・場合は、事前にマイナポータルに掲載する方法により利用者に対して通知した上で、システムの・・・」となります。

3. 定義もなんか変

2条7号
「支払基金等」とは、社会保険診療報酬支払基金及び公益社団法人国民健康保険中央会を指し、オンライン資格確認等システムの運営主体をいいます。

これはパッと見た感じ別によさそうですよね。まぁダメなんですけど。
この書き方だと、「支払基金等」というと、「社会保険診療報酬支払基金及び公益社団法人国民健康保険中央会」なのか「オンライン資格確認等システムの運営主体」なのかがよく分かりません。
ややこしいですが、分かりやすく置き換えると以下のようになります。

①だめな表記
「ラーメン等」とは、ラーメン及びつけ麺を指し、麺屋菊池の主力商品をいいます。

②良い表記
「ラーメン等」とは、麺屋菊池の主力商品であるラーメン及びつけ麺をいいます。

①だと、将来まぜそばや油そばが主力商品となった場合、「ラーメン等」に入るのか分かりませんよね。
あくまで、「ラーメン等」は「ラーメン及びつけ麺」だけだというならば、②のようにすべきです。
まぁ「麺屋菊池の主力商品である」自体、削った方がもっといいですが。定義規定の中に余計な説明を入れるとややこしくなるので。

他にも色々気になる

マイナポータルトップのURLは「https://myna.go.jp/」です。
一方、利用規約のURLは「https://img.myna.go.jp/html/riyoukiyaku_ja.html」です。
なぜドメインが変わるのでしょう。「img」とは何なのか。

また、利用規約のURLに「ja」(Japanese)とあります。
マイナポータルには英語版ページもあるので、英語版の利用規約もあるのかと思い、英語版マイナポータル最下部の「Terms and Condition」をクリックすると、日本語の利用規約に飛ばされます。

特に利用規約に関しては、他にも気になるところを挙げるとキリがないです。
今回の記事では内容的におかしい点(例えば、この権利は制限すべきでない等)については触れておらず、形式面の一部の指摘にとどめていますが、日本語がこれだけ怪しいのだから、内容も・・・という感じです。

結局一番問題なのは

マイナンバー制度に関しては、政府がなんとしても進めたい政策で、ポイントという形でお金をばらまくほどマイナンバーカードの普及を促進しています。
それにもかかわらず、頻発するトラブルと未成熟な利用規約。
政府は、1億人にこの利用規約を読んで同意してほしいのではないのか。

現在の状況下では、本記事で挙げたような些細な問題でも国民の政府の能力に対する疑念を生じさせる、深めさせるに十分だと思います。
あと、本記事はマイナンバー制度反対派がいちゃもんをつけるために書いた記事ではありません。
私としては、マイナンバー制度は行政コスト削減に欠かせない政策だと思っていますので、むしろ賛成派です。

この記事が皆さんが制度について考えるきっかけになりますように!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?