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言葉が届けるものを、信じているために

この文章ではまだまだ伝えきれていない、もっと届けるための表現があるんじゃないか。でも、どう書けば伝わるのかわからない……。

原稿を書くときにうじうじと悩んでは、パソコンを開いたまま停止する場面がしばしばあります。たまに、心が折れそうになるときも。

これまでは、「原稿を書く」=「孤独に闘う」だと思っていたので、具体的な相談は編集者にするとしても、根本的なあきらめきれなさを誰かに相談してきませんでした。だって、最後は自分が頑張るしかないから。

でも、4ヶ月ほど前から参加し始めた文章の勉強会で、初めてそのあきらめきれなさを共有できるように。この共有が、原稿を書く背中を押してくれるんだ、とも気づいたんです。

そんなやさしくてストイックな勉強会「YMO会」のとある一回について、ふりかえってみたいと思います。

YMO会とは?
原稿のスキルアップに向け、編集デザインファーム「inquire」が定期開催している集まり。原稿における「Y・M(佳き・モヤっと)ポイント」を複数人で見つけ合ってディスカッションし、最終的にそれぞれが今後の執筆での成長課題「O(推して参る)ポイント」を策定、スキルを磨いていくための会です。

詳しいやり方はこちらをどうぞ
いつでも誰でも誰とでも! 原稿相互フィードバック「YMO会」実施マニュアル

個人のあきらめきれなさが、チームの学びに変わる場

YMO会でふりかえるのは、参加者が執筆もしくは編集した原稿2本。

この原稿に参加者が事前にコメントを入れ、YMO会の1時間半で「どうすればもっとよい原稿を書けるのか」を一緒に考えます。

……こう書くと、とてもストイックな勉強会に聞こえます。でも仕事に限らず、運動でもゲームでも料理でも、なんだかどうしてもあきらめられないことって、ありませんか?

きっとYMO会に参加しているメンバーにとって、どうにもあきらめられないことの一つが「文章で伝えること」なんだと思います。なぜなら、文章で伝える方法に正解がないからです。

同じ取材の場にいても、感じたこと、残った記憶はその人だけのもの。同じ文字起こしから原稿を書いても、人によって全く異なる原稿が完成します。

さらに文章の受け取り方も、これまた人それぞれ。同じ原稿を複数人が読むYMO会でも、コメントを残す箇所と内容は参加者によってばらばら。

だからこそ、一人で原稿に没頭するときとは異なる視点で、「こういう伝え方もありそう」「こうしたら、もっと伝えられるのかも」と模索できます。

このように、個人のあきらめきれなさをシェアしてみんなで可能性を探り、チームの学びに昇華する。それが私の考えるYMO会です。

書き手が文章に託したものは、読者に伝わる

ある週のYMO会は、私の原稿からスタートしました。この原稿は、ちょうど半年前に執筆したもの。半年も前の原稿をしっかりふりかえるのは、私にとって初めての経験でした。

印象に残ったのは、特に自分の熱量を込めて書いた部分に入っていた、たくさんのコメント。

「このメッセージ、すごくいい!」「このエッセンスをもっと原稿全体にもちりばめられたら、ストーリー性が強まりそう」。

読者の目線で書いてくれたコメントを読んで、書き手の「伝えたさ」は読者に届くんだ、とあらためて信じられる気がしました。

同時に、半年前の自分は力を出しきったつもりの原稿でも、もっとよくできる可能性があるんだな、との気づきも。

今回はコメントを入れてくれた人数が多かったので、それだけ多くの可能性を見せてもらえました。書くことって、やっぱりおもしろい。

また似たようなテーマの原稿を書いてみたい、と思って選んだ原稿だったので、次回への決意が固まる時間になりました。

どんな原稿でも、異なるアウトプットの可能性がある

続いて2本目は、他の参加者が編集を担当した原稿をふりかえりました。

私も事前に読んでコメントを入れていたのですが、ともすれば専門性の高くなりそうなテーマでありながら、そのテーマに詳しくない私でもスラスラと読める心配りにびっくり。

他にも、事実を補強するエピソードの選び方から、印象に残る言葉の入れどころまで、一人の読者として「いいな」と思う点ばかり。

「この文章からもっと伝えられるはずだ」と原稿の細部まで神経を張りめぐらせた編集者の姿勢は、読者にまっすぐに届くんだな、と実感しました。

そしてYMO会のおもしろい点は、完成度の高い原稿であっても、みんなで議論すると「こんな伝え方もあるのでは?」と新たな可能性を見出せること。

今回もそうやって見出された可能性に対して、原稿を提出したメンバーが「そっか、こういう方法もあるのか」「もっとこうできたのかもしれない……」とつぶやいていた姿が忘れられません。

どんなに素晴らしい原稿でも、自分が最終的に選んだアウトプット以外の可能性が存在する。原稿を書いている最中もその可能性に気づく視点を持てるようになりたい、と思うひとときでした。

自分の信じる気持ちを、仲間が補強してくれる

私は2020年1月にYMO会に初参加し、これまでに8回ほど出席。インタビュー前の準備から具体的な言葉遣いまで、たくさんの学びを得てきました。

でも私にとって最も重要な学びは、言葉で伝えることをあきらめない姿勢だったように思います。

もっと届けられる。もっと伝えたい。

この個人的なあきらめきれなさを、YMO会に参加する誰もが持っている。どうすればあきらめずに済むかを、一緒に考えてくれる。

そんな仲間がいるからこそ、一人で原稿を書くときに、もっと伝えるための方法をあきらめずに考えたい、と思うようになりました。


やっぱり文章を書く以上、「文章に込めた熱量は、きっと読者に届く」と信じていたい。

その信じたいものを信じる意志を補強し、言葉で伝えることを「あきらめなくていいよ」と背中を押してくれる場。それが私にとってのYMO会です。


YMO会は、どんなコミュニティでも、文章を書く仕事をしていなくても、楽しく学びながら実践できます。こちらのマニュアルもぜひ参考にしてみてください。

そしてあなたの「あきらめきれなさ」を、こっそり聞かせてくれたらうれしいです。

言葉をつむぐための時間をよいものにするために、もしくはすきなひとたちを応援するために使わせていただこうと思います!