走り続けるために、手を止める──2019年8月
二人の大工がいました。
一歩踏み出すたびに少しきしんだ音のする心もとない足場に立って、毎日汗を流しながら、自分の道具を使って家を建てる大工。
ふぅ〜、今日も一仕事終えた。
暗くなってきたら、二人の大工は家路につきます。今日も疲れたなあ。
一人の大工は、毎日家に帰ったらお酒を片手に夜ごはん。そのままぐっすり眠って、翌朝寝起きのまま仕事に向かいます。
もう一人の大工は、毎日家に帰ってから10分だけ使って、自分の仕事道具と向き合っています。金属の刃をじっくり研いで、留めを合わせ、持ち手が歪んできたらかなづちでトントンと調整。
この大工にとっては、道具と向き合う時間を経てようやく一日の仕事を終えられるのです。
5年後。
今日も二人の大工が働いています。
一人の大工は、なんだか仕事の進みが悪そうです。手に持っているのこぎりの刃が、なかなか進んでいきません。
「昔と同じように進まんくなったなあ。いや〜歳かいなあ」
そうつぶやいていたら、切れ味が落ちていた刃が自分の指に刺さり、大怪我をしてしまいました。しばらく仕事から離れなければいけないようです。
もう一人の大工は、今日の自分に合っている道具を使いながら仕事しています。5年前よりもますます仕事がはかどっているよう。
道具を使いこなして技術も上がり、任せられる仕事もどんどん大規模になって、今では5人の大工を束ねるリーダーになっています。
そして自分の部下である大工には、こう言い聞かせるのです。
「面倒でも疲れていても、定期的に道具と向き合う時間を確保したほうがいいぞ。日々道具と向き合うことで道具が最強の味方になってくれて、未来の自分の怪我を防ぎ、技術を伸ばし、より大きな仕事をもたらしてくれる」。
こんなたとえ話を、大学生の頃にアルバイト先の上司が聞かせてくれた。未だに覚えているのは、未だに実践できていないからかな。
置いてけぼりにしがちな身体のメンテナンスもそうだし、仕事道具のメンテナンスや仕事のやり方のアップデート、スケジュール管理、仕事環境(=部屋)の改善や整頓、そして勉強。
8月を終えようとした頃にお仕事のお話をいただいて、雪崩れるように9月に入ってそのまま身体を追い込みながら表現と向き合っていたら、結果的に身体が絶不調になったり表現に向き合う気持ちが折れかけたりとか。
8月中にこのたとえ話のことを思い出しながら、そのまま「道具」とほぼ向き合わずに9月に突入し、9月最終日に8月のふりかえりを書いているとか。9月、毎日吹っ飛んでいったわ。
思考とインプットのために、そろそろちゃんと手を止めて立ち止まって、自分の「道具」と向き合うことも必要だなあと痛感した夏でした。フリーランス二年生、引き続き模索中。
2019年8月のふりかえり
■ お仕事
定期的にご一緒している「READYFOR note」で、MVPのインタビュー記事を書きました。READYFORは7月末に「READYFOR SDGs」というインパクトのある発表をしていて、その実現を可能にした立役者です。
「達成するにはどう考えても時間の余裕がない」中で大切にしていたことは、「自分で考え、答えを探して、つくろうとすること」。
READYFORの採用のためのWantedly掲載記事。同じく言葉を扱う仕事をしているので、自分の言葉で目の前のひとの役に立てる喜びの話に共感した。
「結婚あした研究所」で東京會館におじゃまして、取材してきました。100年の歴史を誇るプロフェッショナル精神に惚れ惚れしたし、ここまで考えられているものなら「広告」のイメージがちょっと変わったかな。
「haletto」さんからは、編集を担当したとらや本店である赤坂店の記事が公開されました。
ライターさんがすごくいい取材をしてくださったおかげで、伝統への自負とトップランナーであり続ける覚悟を感じられる言葉を聞き出せていて、編集にも思わず力が入りました。
このお話をいただいたときに大学生だった当時読んだ閉店挨拶の言葉を思い出して、4年経っても消費されない言葉のとうとさにしみじみした。
「READYFOR SDGs」公開にあわせて開催されたカンファレンスのレポートを書きました。SDGsが企業としてここまで自分ごとになるか、表面的に取り組むのか、その先の差は理念が決めるのかもしれないよなあ。
あとは引き続き「CX Clip」の執筆や「IDENTITY名古屋」の編集などを担当させていただきました。継続的な編集は、ライターさんの変化を実感できるからうれしい。私も自分をもっとアップデートしていかねばね。
■ 暮らし
8月の頭に運転免許を取りました。長かった2ヶ月半の教習所通いもぶじ終了。やったー。そのあと数百メートルしか運転していません。
大切なひとたちがつくっているお祭りが毎週あって、ビアガーデンに花火大会に盆踊りに流しそうめんに、ひたすらお祭り三昧な夏だった。
今月の奥多摩訪問は、私もメンバーに入っているOgouchi Banban Company主催の、年に一度の大切なイベント「まちおこしモンスターフェス」へ。
ずっとインタビューでうかがっていながら一度も目にしていなかったライブを初めて見て、今まで聞かせてもらってきた言葉がすべてつながって、予想どおり最初から最後まで号泣してしまった。あんなに幸福度の高い空間は他にあるだろうかと思うくらい、温度のあるイベントだったな。
たくさんお祭りに参加して、地域のことやお祭りのことをたくさん考えるきっかけをもらい、すごく「生かされている」って手のひらで実感する夏。
滋賀で過ごす初めての夏。できるだけ一瞬一瞬を見逃したくないと思って、まばたきしないように過ごしていた夏。8月の最後には、ギリギリ滋賀に引っ越して一年経つ直前に琵琶湖一周を達成できたのもたのしかったなあ。
あざやかでまぶしかった夏。まぶしさから目を背けずに、まばたきをしながら、秋はちゃんと磨いていこう。表現を。