見出し画像

【読書感想文】 たまには身体に悪いものを筒井小説のすすめ

4月に読んだ本

これでもいいのだ  :ジェーン・スー
悲嘆の門(中)  :宮部みゆき
悲嘆の門(下)  :宮部みゆき
罪人の選択  :貴志祐介
堕地獄仏法/公共伏魔殿  :筒井康隆
ビアンカ・オーバースタディ  :筒井康隆
恐怖  :筒井康隆
細菌人間  :筒井康隆

お気に入りの1冊

たまに、身体に悪いものを食べたくなる時ありませんか。マクドナルドのポテト然り、カップラーメン然り…。私にとって脂っこくてにんにく強めのべたべたした癖になる食べ物みたいな本が筒井康隆さんの小説です。

スーさんの本で自分の生き方を振り返り、宮部さんの厨二病ワールドに浸って、貴志さんの文章力の厚さに圧巻した後に、ちょっと久しぶりに身体に悪いものでも食べたいな…となったのと同時に、Twitterのタイムラインで見つけた筒井さんの新書「堕地獄仏法/公共伏魔殿」を発見。よっしゃとばかりにそこから何冊か筒井さんの小説を購入して、3月はゲロゲロになるぞと意気込みました。

堕地獄仏法/公共伏魔殿

画像1

あらすじ

蠱毒(こどく)の小説集
筒井康隆の小説は蠱毒である。
読めば強烈なショックを受け、その面白さに侵される。
巨大な権力を握った某国営放送の腐敗と恐怖を描き、
一読すれば受信料を払わずにはいられない「公共伏魔殿」、
諸事情によりここにはあらすじを書けないもうひとつの表題作「堕地獄仏法」、
ロボット記者たちに理路整然と問い詰められた政治家がパニックになり、
無茶苦茶な答弁をしてしまう「やぶれかぶれのオロ氏」、
大学生と予備校生の喧嘩が殺し合いにまで発展してしまう「慶安大変記」など初期傑作短篇16作を収録。
ひとの愚かさが変わらないかぎり、筒井康隆の小説は面白い。
つまり、筒井康隆の小説は永遠に面白いのである

Amazon引用
【収録作品一覧】
「いじめないで」(「NULL」10号/1964年1月)
「しゃっくり」(「SFマガジン」1965年1月号)
「群猫」(「別冊宝石」1963年9月号)
「チューリップ・チューリップ」(『東海道戦争』早川書房/1965年10月)
「うるさがた」(「SFマガジン」1965年5月号)
「やぶれかぶれのオロ氏」(「NULL」7号/1962年7月)
「堕地獄仏法」(「SFマガジン」1965年8月増刊号)
「時越半四郎」(「話の特集」1966年11月号)
「血と肉の愛情」(「メンズクラブ」1966年7月号)
「お玉熱演」(「話の特集」1966年6月号)
「慶安大変記」(「SFマガジン」1967年10月号)
「公共伏魔殿」(「SFマガジン」1967年6月号)
「旅」(「SFマガジン」1968年2月号)
「一万二千粒の錠剤」(「週刊プレイボーイ」1967年8月15日号)
「懲戒の部屋」(「小説現代」1968年6月号)
「色眼鏡の狂詩曲」(「小説現代」1968年4月号)

感想

お気に入りの話だけをチョイスして感想を少しずつ。

チューリップ•チューリップ

タイムトラベルが出来る発明品を使ったら別未来の自分が現代に来て来て来て…自分がどんどん増えていくお話。
元に戻す計画と共に、自分との共同生活が始まりますが、どたばた生活がツボにはまりました。

だが、それも無意味ではなかったと思っている。無意味なことは他にいくらでもあった。

本当に一部ですが、この一文がお気に入りです。

やぶれかぶれのオロ氏

記者会見を開いた政治家のオロ氏。しかし記者は全員ロボット。人間だと各々の汲み取り方で認識のズレが起きるからロボットの方がすべての紙面にて同じかつ正しい情報が行くだろう、との戦略。
「なるほどー」と思って読み進めていくと、ロボットだからこその理路整然な質疑応答の細かさにオロ氏はわたわた。オチには思わず声をだして笑いました。

ある四人はとある過去の過ちから蒸発屋による心理劇流刑により蒸発する。というのも、大脳を取り出し、残された身体は南半球に冷凍保存される、というもの。身体は自分以外の三人からのイメージで形成される。イメージの中で繰り広げられる世界と、終わることのない世界。
まるでパプリカみたいな文章構造と展開は、読者を混乱に陥れさせます。真剣に読んではだめですよ!

色眼鏡の狂詩曲

ある日筒井氏の元にカリフォルニア在住の17歳の少年から手紙が届きます。
「私はSFファンです。第二次日中戦争をテーマにした小説を書いたので読んで、日本の雑誌社へ売り込んでください。」
翻訳家の江藤君に頼んで、小説を和訳してもらい読んでみると…。
本だけで勉強することと、実際見聞きすることでは見解がかなりずれてきます。そんな話。あー、面白かった。

どの話も1960年代に書かれたものとは思えない、ストーリー性。他にも好きな話はあるのですが、長くなるのでこのへんで。
筒井氏のドタバタ劇が好きな方にはおすすめの一冊です。エログロは控えめなので、ちょっと筒井さんのドタバタ劇が気になっている、という方にもおすすめです。
久しぶりに独特な刺激をもらいました。少し疲れたので、しばらくはさっぱりとした、健康的な恋愛小説でも読んでみようかと思います。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?