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「T」の横軸の話。

 先日テレビでチラ見した「林先生の初耳学」。その中で、青山学院大学陸上部の原監督が高学歴ニートたちの悩みに答える授業があり、人生には「T」の字が大事との自説を語っておられた。

 曰く「T」の字の縦軸は、自分が打ち込んでいること。対して横軸は、縦軸とは直接関係ないように思える、さまざまな人との出会いや知識、経験など。原監督の場合はずっと陸上という縦軸があった一方で、選手から一営業マンになったとき、人としての横軸がなかったことに気づき苦労したという。横軸で手に入れた経験が、いずれ縦軸に大切な影響を与えてくれるのだ、と。

 コロナ禍で就職が難しかったり、やりたい研究や打ち込んできたスポーツが続行できず不安を募らせる学生やニートたちに向けて、今は横軸を培うときだから不安は置いておいて、さまざまな出会いや経験を大切にしてほしいと話しておられた。

 息子に聞いておいてほしいなと思うような話は、たいてい自分にも当てはめて考えている。というか、当てはまることがほとんど。この話もそうだった。

 長くコピーライターという仕事をしてきた。自分にとってはそれが縦軸だと思う。でもその中で、横軸になるようなものをどれだけ得てきただろうか。もちろんたくさんの出会いや経験をしてきたけれど、それをどれだけ大切にしてきたか、というと、もったいないことにずっとその価値に気づかずに通り過ぎてきたように思う。

 自分にとって必要か否か。心地良いか不快に感じるか。有益かそうでもなさそうか。そのとき、その場の浅はかな判断で遠ざけてきたり、遠ざけこそしなくても繋がり続けるための簡単な手間をかけなかったモノやコト、人がどれだけ多かったことか。

 世の中にはいろんな価値観の人がいて、みんな違うからおもしろい。

 よくそう言うけれど、自分との違いを認めるのってなかなかに難しくない? 自分にとってのセーフティゾーンを知らず知らずのうちにつくっていて、その中に入る人だけが周りに残っていく。年齢を重ねてきて、今はこれまでの自分の結果なんだなぁとつくづく感じる。

 でも、大事な人やモノコトは確かに手の中にある。そしてこれからもまだまだつくっていける。今度はセーフティゾーンをちょっと広げていこうと思う。セーフかどうかわからなくても、たいした問題ではないし、あ、ダメだと思ったらすぐに方向転換すればいい。その判断は早くなっているから。

 最近はコーチングを通して本当にたくさんの人との出会いがある(ほとんどオンラインではあるけれど)。必要以上に話すわけではないけれど、自然と見えてくるその人たちの生活や過去、願いや大切なもの。ときには自分には想像もできない経験をしてきた人にも出会う。それを安心して話してくれる関係性に心から感謝したい。聴くことを通して、私はコーチとして、コピーライターとして、「横軸」を強く太くしていけるのかもしれない。

人の話を聴かせていただく。

 今、コーチングに向かう自分の姿勢を形容するなら、そういうことなんだと思う。

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