見出し画像

睦ぶご縁(400字)


私はこのり。絶賛婚活中。縁結びの神様で知られる、島根県の出雲大社ツアーに申し込んだ。あっという間にツアー客と仲良くなる。大人の修学旅行があるとしたらこんな気分だ。出雲大社に着く。感慨深い。新しい藁のような草木香る、凛としたしめ縄。大神殿に通され祈願始まる、その時。祈願者に名前がないと、老夫婦が待ったをかけた。瞬間、豪華なお供物を一斉に下げ、華麗な小走りで寺の僧侶達が奥へ消えた。大神殿に残された300人あまりの参列者。待てど暮らせど祈願ははじまらない。私、ご縁ないのかな。旅の仲間が、そっとずっと励ました。心がほっと温かくなった。待つこと40分、祈祷が始まった。ふと気がついた。ああ、出雲の神様。すでに私にご縁を運んでくれたのだと。人のご縁。出雲の神様が睦ぶご縁は、奥行きがある。私は、今なお、絶賛婚活中だ。けれども、忘れない。澄み渡る青空のもと、出雲の神様が睦ぶご縁は、一つではないと。