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睦ぶご縁


私はこのり。絶賛婚活中だ。数年前、縁結びの神様で知られる、島根県の出雲大社に行こうと一人旅を企画した。当日台風で飛行機が飛ばず、島根県にすら行くことができなかった。帰宅途中、会社の先輩方に遭遇し飲み会したことは、今でも忘れない。今度こそご縁を!私は、一人参加できるツアー旅行に申し込んだ。晴れ渡る青空、空から見渡す雲の間に広がる紅葉の海。ツアー最年少で、また一人旅は私だけのためか、あっという間にツアーのおばさま達と仲良くなった。大人の修学旅行があるとしたらこんな気分だろうか。出雲大社に着いた。感慨深い。新しい、藁のような草木香る、凛としたしめ縄。祈願する大神殿に通された。祈祷の始まりを告げるドラの音。やっとご縁を祈願できる。心わき上がる瞬間。僧侶が祈願する方の名前を読み上げ、始まろうとした、その時。ちょっと待ってください!上品な老夫婦から自分達の名前がないという。お寺の僧侶達が一斉にざわついた。瞬間、豪華なお供物を一斉に下げはじめ、一人残らず、きんちゃん走りのような小走りで、奥の扉へ消えていった。あの衣装で、この走り。なんと素晴らしい身のこなしか。大神殿に残される300人あまりの参列者。10分、20分、待てど暮らせど祈願ははじまらない。まわりもざわつきはじめた。ふと思った。私、またご縁ないのかな。上品な老夫婦、もう何を祈願することがあるのだろうか。ここは、島根県、縁結びを祈る出雲大社だ。心の中での会話が止まらない。曇った表情を察したのか、大丈夫よと、旅の仲間が、そっと励ましてくれる。じっと、そっと、励ましてくれた。待つこと40分、何事もなかったかのごとく、僧侶達が一斉に戻り祈願をはじめた。結局、ツアー旅行の悲しいかな、本殿参拝できず、出雲大社をあとにした。最後まで、旅の仲間が励ましてくれた。旅の仲間の存在は、とてもありがたかった。ふと気がついた。ああ、出雲の神様。すでに私に、ご縁を運んでくれたのだと。人のご縁。あの老夫婦も健康のご縁を願ったのかもしれない。縁にはいろんな縁がある。出雲の神様が睦ぶご縁は、奥行きがある。また、島根県、出雲大社に旅に出よう。私は、今なお、絶賛婚活中だ。けれども、忘れない。澄み渡る青空のもと、出雲の神様が睦ぶご縁は、一つではないと。