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その弱さが見たいんだよ

『私たちが世界に接する二つの態度』

宗教哲学者のマルティン・ブーバーは、私たちが世界に対する接し方には二つの態度があると言います。
一つは「我―汝」、もう一つは「我―それ」です。
「我―汝」は、“対話”という「関係性」の世界。そして「我―それ」は、一方的に対象を物質化する「もの」を相手とする世界です。
先の事例のとおり、相手が利用する価値がある間だけつき合う“損得関係”と言えます。

マルティン・ブーバー「我と汝」

外界からの動きが心を邪魔してくる。余計な情報を毎秒1000こぐらい与えてくる。うるさい、うるささのノイズ。波動。
だからこそなにかひとつのことに目を向けたくなる。スマホの画面を開く前にその先に見える世界がある程度予測されるのだ。広告動画。海外のおもしろ動画。知り合いの投稿。芸能ゴシップ。皺がなくなる薬。陰惨なニュース。新しいアプリ。株価指数。著名人の名言。論破。女子アナが脱いだ。奇跡の1枚。

世界での立ち位置としてマルティン・ブーバーの言う「我=汝」ではなく「我=それ(it)」でありたい場面ってのがある。だからこそ行きつけとか常連になりたくないってのはある。そっとしておいてくれ、っていう。あなたのその真心はありがたいけど今はitでいたい、と。たとえば喫茶店なんかそう。地域密着型の、マルシェとかヨガセラピーとかやるカフェってのもある。地域の人にとって必要とされる居場所として、それとは別の居場所の在り方ってのもある。街外れのしがない喫茶店。店主は個人的なこちらの事情に介入することなくちゃんと自分の役割にだけ徹してくれる。静かな時間が流れる。そんな個人に寄り添う居場所。どちらもなくてはならない居場所ではあるけど、時として無機質な角張った人間の言語を話せるだけの物質としてだけ存在したくなる。

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