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ネタバレ「東の海神西の滄海」+「漂舶」

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記事「ネタバレいっぱい海神再読」をまとめました! 「十二国記」の「東の海神西の滄海」の感想文、全章に渡って全伏線を拾ったつもり。クライマックス八章2と続編「漂舶」の謎を解け!
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#十ニ国記

ネタバレいっぱい海神再読 海神の謎に挑戦!

はじめまして。樹狐と申します。よろしくお願いします。 早速ですが、これから十二国記「東の海神西の滄海」(以下「海神」とする)のネタバレ再読感想文を始めます。 感想文といってもすごい長いです。各章の各区切りごと、ところによってはかなり長くなっています。あと海神の他の章のこととか、シリーズの他の話のこともでてきたりします。 なんでそうなるかというと、海神を綿密に伏線を張った精密機械みたいな物語と思ってるからです。ネタバレありありなんで、初読の方はシリーズを出来たら全部、最低「月

ネタバレいっぱい海神再読第三十回 六章4. 小松尚隆は何故民のために犠牲になろうとしたのか

七章の前にこれがくるのだ。斡由の暗黒面暴露の前に尚隆の過去が〜。どんどんどん。 あらすじ:二十年前、小松。圧倒的な敵に包囲された海賊城。不安がる民を安心させる尚隆。しかし六太には絶望的状況を語る。 籠城三日目、尚隆は臣下に民を逃がすために出撃すると告げる。 尚隆だけは逃げられるように民を囮に使おうという老爺を怒鳴りつける尚隆。しかし敵は強く、民を守る臣下も民も倒れ、小松氏は滅亡した。 ●優しい嘘 尚隆)まかせておけ。なんとかしてやる とか言っちゃったんだ尚隆。あとで重

ネタバレいっぱい海神再読第三十一回 七章1. 斡由はよく荒廃と戦った。

あらすじ:元州師の兵達は、対岸に留まり動かない王師の大軍に動揺する。 州城の斡由・白沢も何故攻めてこないのか訝る。王師は州城の漉水対岸の新易に堤を築いている。堤ができあがり、下流が堰き止められれば州城のある頑朴が沈められると気づく二人。水攻めされた場合、籠城には兵糧が足りない。斡由は築かれた堤を破壊し、先に対岸に水を流してしまうよう命ずる。反対する白沢。 ●斡由はよく荒廃と戦った。 …という七章1の三人称の地の文、私が海神の版が変わるたびに真っ先に確認してる箇所でもある。

ネタバレいっぱい海神再読第三十二回 七章2. 女官は何故反逆したのか。

サブタイトルにモブ登場…この女官は驪媚に相当する人だと思うので。 あらすじ:六太が意識を回復したのは驪媚の死の七日後のことだった。付き添っていた女官に促され、六太は城外へ逃亡するため城の地下に降りる。 女官は斡由に降伏を勧めるが、斡由は更夜に女官を連れていけ、と命じる。 ●麒麟と血の穢れ 驪媚の血を浴びた六太は逃げるどころか七日意識不明だった。近くで流されたけど触れてない亦信の血でも寝込むんだから、当然かも。その間に斡由が悪心を起こさなくて運が良かった、というか、驪媚は

ネタバレいっぱい海神再読第三十三回 七章3.「斡由の言には一理がある」か?

あらすじ。六太は頑朴城を脱出しようとして、内宮に幽閉された謎の老人に出会う。 …短い。ほぼ七章4の一部のようなものだから〜。 ●頑朴城の闇 六太は地下道を通って内宮の深部にでた。内宮の奥は城主の家族の住むところ、なのに人がいない。まー家族いないし斡由も住んでないんだろうけど(会社に泊まりこむタイプ)無人の家庭に居るのは無声で叫び続ける老人だけ…いや暗い。住処は住人の内面の暗喩と言うけど、人は居るけど殆ど傀儡の白圭宮とか、都を夢見る父が妻とその子と閉じこもって尚隆には居場所

ネタバレいっぱい海神再読第三十四回 七章4. 斡由が元魁を幽閉したのはいつか。その頃斡由はどんな状況におかれていたか。その状況から推察される犯行の動機は何か。

あらすじ:六太は地底で元州侯元魁の話を聞く。斡由はかつて父である元魁を幽閉し、影武者を使って命令を偽装していた。元魁は言う、斡由は元州が欲しかっただけだと。かつて下僕に弓の失敗を押し付けたように、自分の過ちを他者になすりつけるような屑だと。六太は気づく、あの老人が影武者だったのだと。影武者をやめたいと斡由に歯向かったので幽閉されたのだろうと。 ●斡由は屑か 私は斡由を屑だとは思っていません。なぜか。五十年近く荒廃と戦ったから。「荒廃とよく戦っ」て民を守った人間の屑、は言葉

ネタバレいっぱい海神再読第三十五回 七章5. 斡由は何故更夜に女官たち囚人を始末させたのか。

あらすじ:更夜は女官を地下牢に連れて行く。斡由と更夜を非難する女官を更夜は大きいのに喰わせる。悲鳴を聞きながら、更夜は初めて囚人を始末した時のことを思い出す。 ●元州の普通の人々その2 女官やその友人は七章1の元州州師の兵たちに比べると州城内部に詳しい。しかし上層部ではない、そういう一般の元州諸官の意見を整理。 ①(斡由が)起って公道を正すと聞いた。謀反だなんて聞いてない。 ②(王師の数からして)勝敗は確定している。 ③堤を切るのは民を虐げることだ。そうまでして戦う必要

ネタバレいっぱい海神再読第三十六回 七章6. 尚隆と更夜と妖魔の大きいの

あらすじ:六太は地下の迷宮で光を見る。それは頑朴城に潜入してきた尚隆だった。尚隆は六太と共に更夜に会う。 ●尚隆の光 松明の明かりよりほかにない地下に明るい光をもたらす尚隆。六太の見た光であると同時に、斡由の秘密という暗闇に持ち込まれた第三者のクリアな視点でもあるのだろう。 海神という話をミステリとして読む時、探偵役は尚隆なんだよな。謎という暗黒に閉ざされた迷宮を知性の光で解放する者。 ところで、麒麟には天意の器としての自分と個人としての自我があると思うんだけど、尚隆に光

ネタバレいっぱい海神再読第三十七回 七章7. 尚隆は何故この時は更夜を説得できなかったのか。

あらすじ:六太は更夜から怨詛ある血の気配を感じ取る。更夜は六太に自らの絶望を語る。尚隆は身元を明かし、更夜を説得しようとする。 ●麒麟と血の穢れ 六太は更夜に血の臭いがまとわりついているのに気づく。六太が近づくことも出来ないほどの血の臭い、それは女官のものだったけど、殺されたのがあの女官だと気づいてた記述はないし、気づいてたら態度も違ってたろうから、誰のどんな状況での血というところまでわかるわけではないのだろう。 しかし六太は更夜に人を殺す役目を負わせたという理由で、斡由

ネタバレいっぱい海神再読第三十八回 八章1.尚隆は漉水の堤に係る策で何をしようとしたのか

あらすじ:頑朴対岸に潜み待ち構える成笙と王師の兵たち。やがて現れた州師は王師の築いた堤を壊そうとする。王師は州師と戦い民の喝采を浴びる。成笙は尚隆の命令を思い出す。 ●元州の普通の人々その4 頑朴対岸新易に住む勇前たちは、漉水の増水を心配していたから、堤を造ってくれた王師、堤を切ろうとする州師をやっつけてくれる王師を歓迎する。 勇前にとって、かつてあった堤を切ったのが梟王でその後斡由が荒廃と戦ったことなんて、自分の生まれる前の知らない話なんだろう。堤を造らせなかったのが尚

ネタバレいっぱい海神再読第三十九回 八章2前半 追い詰められた斡由は何をしようとしたのか

(これまでの変わった解釈の大元がでます。できたら原作と併せて読んでください。) あらすじ:六太は諸官の前で斡由を告発する。そこへ白沢が頑朴城下の州師の暴走を報じる。斡由は白沢、諸官、六太、王に罪を擦り付けようとする。白沢は斡由を捕えるよう小臣らに命じる。 ●六太の告発 斡由を訪ねた六太。なんで訪ねたのかというと、七章で知ったことを元州諸官の前で突きつけて、斡由を追い詰めるためだったんだろうな。城外では漉水作戦が予定通り進行中、しかし城内はまだ斡由の指揮下にある。六太は使令

ネタバレいっぱい海神再読第四十回 八章2中盤 尚隆は何故、なんのためにあの時点で斡由の前に現れたのか?

☆「中盤」て何だよ…いや、あまりに長いんで三分割しました。どんだけ海神好きなんだよ>自分。 あらすじ:尚隆が進み出て斡由に剣をつきつける。尚隆は斡由にも剣を渡し、斡由は降伏する。 ●海神=ミステリ? さて、再読八章2前半を読んで、こんなこと書いてない、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。確かにこの解釈は普通と違う。しかし台詞と動作は原作そのままです。それに…いわゆる普通の解釈だと幾つか納得できないところがあって。 尚隆は民のためを思ってるはずなのに民の望む堤を造ら

ネタバレいっぱい海神再読第四十一回 八章2後半 尚隆は八章2から何を得たのか

☆これまでの再読、特に八章2前半・中盤を読んでないと多分わけわかめです… あらすじ:尚隆は剣を収めて斡由に背を向ける。斡由は太刀を振りかぶるが、使令に喉を咬み割かれ、尚隆に首を落とされる。 ●尚隆は何故、斡由にわざわざ太刀を渡して、自分だけ剣を納めて背中を向けてしまったのか?  誰か、と尚隆は背後を見やり、剣を収めて斡由のそばを離れる。 ここ、引っかかる人は引っかかるところ。武士の出身の尚隆が、たった今まで敵対してた相手に武器をわざわざ持たせて、自分だけ収めて背中を向け

ネタバレいっぱい海神再読第四十二回 八章3. 更夜は何故、大きいのが尚隆を攻撃するのを留めたのか?

あらすじ:斡由の死に、自分も討てと叫ぶ更夜。尚隆は雁を更夜と妖魔が人とともに暮らせる国にすると約束し、元州諸官も処罰しないと宣言する。 ●更夜は何故、自分も斬れといったのか? 斡由の首を斬った尚隆は、諸官を見渡し更夜に歩み寄る。 「すまなかった」 「礼を言う」 これは更夜の眼の前で斡由を斬ったことへの詫びと、更夜が大きいのの攻撃を止めたことへの礼だよね。 更夜は尚隆に自分も斬れと言う。大逆には斬首が慣例だからと。断る尚隆。 更夜は叫ぶ。 ①更夜)おれはあなたを助けようと