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#08 人と生き物が共に暮らすということ|外来種から考える

前回のふりかえり

前回は、卵農家さんや漁師さんなどの様子をビデオで見て、「イノチのそばではたらくこと」について皆で考えました。

私たちはスーパーマーケットに並ぶ卵や魚を、つい「商品」として見ますが、それらはもともと命だったもの。

ニワトリの出産シーン、豚や牛肉などが屠殺される様子、漁師が冬の海で命を落とすこともある。そういった生産者=「命を命でないものに変える仕事」によって、私たちの生活は支えられているわけですが、商品棚や自宅のテレビ通販を見るだけでは、なかなか気づきづらいものです。

彼らが安心と誇りを持って、仕事を続けるために、大都市にいる私たちは何ができるだろうか。それを考え始めたのが、前回でした。

参加者のコメントを拝見すると「あーよくわかりました!スッキリ!」よりは、割り切れない思いもあったようでした。今回も、引き続き、「生き物」の話です。

とある生き物の物語

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私は、札幌市のある地域で暮らしてきました。仲間や家族と喧嘩をしたり、天気が悪くて大変な日もあったけれど、この土地のリズムや恵みのもとで、幸せに生きてきました。しかし、ある日、自分たちに見た目が似ているけれども、これまで会ったことがない、自分たちよりも倍以上大きい生き物たちがやってきました。ちょっと怖い感じがしたし、言葉も通じないし、正直、まだ彼らのことをポジティブにはちょっと考える気持ちの余裕がないです。気づくと彼らはあちらそちらにいて、自分たちの暮らしのテンポがすっかり崩れてしまいました。食べ物が取れなくなったし、あまり好きじゃない匂いがするし、戦っても勝てそうにないし…。以前のように暮らしたいと仲間と話そうにも、仲間も減ってきています。せっかく住み慣れた土地なのに、どうしたいいんだろうか。

なぜ「自分たちに見た目が似ているけれども、これまで会ったことがない、自分たちよりも倍以上大きい生き物」がやってきたのでしょうか?

札幌市・市川さんのお話

札幌市環境局環境都市推進部環境共生担当課の市川さんにお話を伺いました。外来種とは、「もともと住んでなかったのに、人間の手で持ち込まれた生き物」です。

いくつか具体的な事例を踏まえながらお話いただきました。北米原産の”アライグマのラスカル”はペットとして連れてこられたが、世話をしきれずに今は日本の各地に広がり、農業被害や希少種の食害を起こしていることなどです。他にも、ヒキガエルが「国内外来種」。ワカメは日本近海から非意図的に拡散され、それを食べる文化がない国では、海外で外来種として猛威を振るっているとの話については、参加者から「へー」という反応が多くありました。(養殖カキの阻害や漁業用機械に絡まるなどを引き起こしているそうです)。

かつては長期輸送に耐えられずに耐えられずに途中で死ぬ種も多かったのと、在来の生態系が侵入をブロックできたが、現在は世界中で在来種が問題になっているとのことでした。

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「仲良くすればいいじゃん」という声の方もいるかもしれません。しかし、生態系への影響、人間にも影響(倒木などの事故や農業被害、桜を食べる虫で「お花見」文化の喪失)などの問題が出てきます。それゆえ、上記の3原則が必要になります。

また、この問題の難しいのは、「一度定着した外来種を駆除でゼロにするのは不可能」であることです。しかし、放置するとどんどん広がるので、駆除が必要になります。2018年に年間30匹見つかったアズマヒキガエルは、2020年で3000匹になりました。

市川さんによると課題はこうです。

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お金も時間も限られているのにし続けないといけない。それに、それ自身が悪な訳ではない生き物を殺さなくてはいけない。その目に見えることに、クレームが市役所に寄せられる。「悪意のない生き物をなぜ殺すのだ」。危機感を共有するのが難しい。

みんなの声

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・一度定着した外来種は0にはならない、という事実にことの大きさを感じました。
・どれも生き物、外来(外)か内かは立場・視点が違うだけなのだなと気づきました。生態系のバランスの中に私達もいる。私達はなにかにとって必ず『外来』なんですね。
・元々いる動物も外来種も悪くないのに、人間のせいで互いに苦しめられているのを聞いてとても悲しくなりました。

市川さんからこのように補足がありました。

ワカメのように、非意図的、つまり、誰かが何かを悪くしようとしているわけではないものがあります。そういう外来種も多い。外来種以外も、人間によって生態系のバランスが崩されることはある。オオカミが絶滅したことで、エゾシカが増えた。それでも、エゾシカが外来種を食べてくれるということもある。外来種が、かえって別の外来種とのバランスを取ってくれることもある。大切なのは、バランスがとれているということです。

仕組みを考える

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このゼミで何度も話している「アクトローカリー」、「仕組み」を考えました。

Q.外来種の問題をはじめとるす生物多様性の問題に向き合っていくために、私たちがつくりたい/やめたい/続けたいと思う社会の仕組みはなんでしょうか。

Q.生物多様性は、気候変動と同じように、私たちにとって大切な問題にもかかわたず、「どうなったらまずいのか」という因果関係が明確ではなく、もちろん進行の度合いを計測することもできません。このような課題に対し、私たちに、どんな姿勢や学び、視点を育てていく必要があると思いますか。

みんなの声

・私達にとって『やだ・まずい』が、他のなにかにとっては『すき・よい』。生き物である以上、生命体としては利己的な人間がこれを学ぶには、他の生物の立場・視点に立てるような体験ができる学びが必要だと思いました。
・自分たちも生態系の一部問うことを意識したい。
・単純な因果関係で済ませず、人間も生態系の一部という意識を持って正解はひとつではない!という前提で話し合える視点を持ちたいです
・イキモノの自分が人間として生きているのは偶然であり奇跡。土にかえって何に生まれ変わるのか?なにから生まれてきたのか?ながーい循環の中に存在していることに感謝し、次回までを過ごしてみたいと思います
。

今回、私たちは「外来種はだめ!」「生き物を殺すのはかわいそう!」「やったらすぐに成果が出る」そういった表面的なやりとりだけではどうにもならない、事態の複雑さに触れました。すぐに解決はできないが、なんとかしたいと思った時に、私たちに求められる視点や実践とはどのようなものでしょうか。どのような仕組みが必要でしょうか。さらに学びの旅はつづきます。

今回のじわくら

今回のじわくらは、自然の持続可能性についてのお話でした。そのグラフィックはこちらです!

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