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たなカー&ぷらっとの原点を思い出す

雑誌CAR GRAPHICを読んでいて思い出した。書き止めておきたいことがある。

ジョルジット・ジウジアーロ氏の寄稿特集で紹介されたカプスラに関する話だ。

1982年:カプスラ

カプスラというクルマのコンセプトは、様々な機能を着せ替えできる点に尽きる。いわば機能のモジュラー化で、ベースとなる車体は1つだが例えば移動販売車にできたり救急車にできたりする。だから、複数の車両が維持困難な主体や日替わりでサービス提供したい事業者にとって非常にメリットが大きい。

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2009年:たなカー&ぷらっと

実は、これに着想を得て、もう少し、都市計画・建築寄りにプラン化したものを提案したことがある。(着想を得ていたこと自体あまり表に出してないが。)それがたなカー&ぷらっとである。東京大学の都市デザインスタジオという公開授業で発表して好評を得た。たなカー&ぷらっとのコンセプトとイメージは以下の通りである。

今後縮小していく日本の都市デザインを考える上で、人口、施設を「中心」に集中させ効率良いサービス提供を行うコンパクトな都市構造が目指される一方で、縮小していく「周辺」での豊かな暮らしを守っていくこと、更には縮小する過程をデザインすることが必要となります。「周辺」では「買い物難民」をはじめ、日常生活を支える機能の欠如が大きな問題となっていますが、それに対し「機能を動かす」ことに着目しました。
「機能を動かす」ことに着目し、提案をしているのが、“たなカー&ぷらっと” です。日常生活に必要な商品の販売や、暮らしを支えるための医療、
行政サービス、文化的な楽しみをもたらすものまで、様々な形で考えられるモバイル施設“たなカー”。その“たなカー”が停車する場所“ぷらっと”。
両者を連動させてデザインすることで、地域での暮らしを支えていく基盤を作ることを目指しています。

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それが2009年のことで、様々な地域、自治体、国等の支援のお陰で、2020年現在も地域のまちづくりを支援するNPO法人balloonとして活動を続けている。

2011年:東日本大震災、2020年:covid-19

この活動を続けてよかったと個人的に思うこと。1つは、クルマ離れが進むなか、クルマの有効な活用方法を提案できている点である。トヨタのe-paletteなんかはコンセプト的に近いので、個人的にはもう少し使い方を一緒に議論させてもらいたいと思っている。

もう1つは、東日本大震災やcovid-19のような有事においても、都市に大きな改変を強いることなく徐々に人々の生活に馴染むようなデザインとなっている点である。残念ながら東日本大震災以降はこのような動きが主流とはならなかったが、covid-19以降は大きく変わりつつある。個人個人が今住んでいる地域でどうすれば充実した生活を送ることができるか、盛んに議論されるようになった。従来、人は移動し過ぎだったのではないか。機能が迎えに来ることがあってもよいのではないか。ジョルジット・ジウジアーロ氏の提唱するモジュラーコンセプトのような代替性・柔軟性が40年の歳月経たいま受け容れられるのではないかと思う。


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