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Boys mature slow

この1ヶ月以上、高校生の息子の右手の指の調子が悪い。

あれは夏休み最終日のことだった。友達のアパートでバスケットをしていて負傷したらしい。。

最初は単なる突き指だと思っていた。素人目に見ても骨折をしている様子でもない。内出血があるのか、指の内側が青黒い。その晩は、大学でバスケットをしている姉のアドバイスで塗り薬を塗り、副え木(アイスキャンディーの棒のような)で固定をする手当てをした。

それから1週間。流石に副え木を外したがまだ痛むようで、自分なりにテーピングなどしていた。「突き指にしては随分長引くなぁ?」とは思ったが、腫れているわけでもなく、我慢出来ない痛みがある様でもなさそう。引き続き様子を見ることにした。

怪我をしてから1ヶ月くらいが経った先週のこと、指はまだ痛むとのことだった。流石にこれは普通ではないのでは?と家族の間でも疑問の声があがり始めた。本人にもう一度指を良く見せる様に言ってみた。

右手の中指なのだが、何となく少し変形して曲がっている様にも見えた。これは自己流に間違った手当てをし続けていたせいなのか⁉︎と嫌な予感がした。いつもはマイペースな本人も流石に不安を隠せない。

しかし、しばらくすると息子がこう言ってきた。「指は怪我をする前から曲がっていたよ。」「何でそんな事が分かるの?」と問うと、息子が自分のスマホのアルバムに保存していた写真を見せて来た。

「!?」


そこには紛れもなく息子の、中指を立てた右手が写っていた!あぁ、高校生男子は(うちの息子だけかもしれないが)、何でこんなくだらないことをするのだろう。どうせふざけて友達に送ったりした写真なのだろう。ともあれ、正常時の指の状態を知るにはその馬鹿げた写真は大いに役立った。

遂に1週間前に病院で診察を受けた。医師の問いかけに「指は最初から曲がっていた」と自信を持って告げる事が出来た。指を立てた写真のことはもちろん医師には内緒。撮ったレントゲン写真では問題があるようでは無かったが、念のためもう一つ精密な検査を受ける様勧められた。

昨日、その時に受けた検査の結果を聞きに行った。幸い骨には異状はないが、関節の軟骨に問題があるとかで?さらに専門家の診察を受ける必要があるとの事だった。次の診察日まで手は再び包帯でぐるぐる巻きにされることになった。

「重いからちょっと荷物を持つのを手伝って!」「出来ない!」、「自分の汚したお皿くらい洗っておいて!」「洗えない!」、「外から帰ったらよく手を洗ってよ!」「洗えない!」。。怪我のことをつい忘れて色々言ってしまっていたが、こんなやり取りが又続くことになる。

息子には小さい頃から色々心配させられてきた。生まれたてから神経質で気難しく、よく寝ない赤ん坊だった。現地語習得に難儀したせいか、人並外れて幼く交友関係で悩んだものだ。

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それが今やすっかり別人のようだ。どんな環境でもすぐに友達を作る。狭く深く、の姉より社交的な性格。(反対に母親には無口でぶっきらぼうなのだけど。)母親の影響で幼少時は日本語優位に育っていたが、母も理解出来ないような若者特有の現地語を巧みに操るまでになった。

あんなに人見知りで、いつも母親の陰に隠れていたのが嘘のよう。母親の心配も何のその、出かけてしまえば完全に糸の切れた凧状態で青春を謳歌している。大勢の友人たちに囲まれて毎日楽しそうだ。

でも相変わらず部屋は散らかり放題、朝は叩き起こさねばならず。母子でのバトルは毎日のようにある。体の大きさは充分に大人だが、精神的にはまだまだ子供の域を脱していないのだ。

大好きなジャズピアニスト、大江千里さんのBoys  mature  slowという曲を聴くと、息子の事がつい頭に浮かぶ。男子成熟するに時間を要す、まさにその通り!息子の心配から解放される日は一体いつになることだろう。


固定された右手中指を立てながら鉛筆を握る息子に思わず苦笑い。1日も早く指が完治するよう願ってやまない。母の心配は今しばらく続きそうだ。


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