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「NPO法人」としてのきっかけ食堂

NPO法人きっかけ食堂の【note特別更新4days】(3月8日~3月11日)の2日目を担当させていただく、理事の久保匠(くぼ たくみ)です。よろしくお願い致します。

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2019年10月にきっかけ食堂がNPO法人格を取得し、私は理事として参画させていただくことになりました!
しかし、振り返ってみると、きっかけ食堂が「なぜNPO法人を選択したのか?」ということをちゃんとお話しする機会は、あまり作れていなかったように思います。

なので、この場をお借りして私のこと、きっかけ食堂がNPO法人取得に込めた想い、今後の決意について、お話しをさせていただきたいと思います。

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「たくみさん、きっかけ食堂はなんでNPO法人になるんですか?」

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(東京メンバーとのMTG風景)

私がきっかけ食堂東京支部のMTGに参加した時に、学生メンバーから投げかけられた質問です。その答え以下のようなものでした。
・事業の性質上、寄付、会費をたくさん集めたい
・NPO法人にすれば、獲得できる助成金が多い

様々な法人格と比較検討した末、NPO法人を取得することで、よりスムーズに事業展開を行うことが出来ると考え、NPO法人を選択しました。
ただ、その時の学生メンバーの反応は、イマイチでした。

私は理事として、現場で一生懸命活動するメンバーが納得するような説明ができるよう、「きっかけ食堂がNPO法人である理由」について、改めて考え、ここに書いて残しておきます。

私のバックグラウンド

私は現在、日本ファンドレイジング協会というところで、NPO、ソーシャルビジネスの資金調達である「ファンドレイジング」の仕組をつくる仕事をしています。前職は、愛知県の知多半島に拠点を置く、福祉系NPO法人で働いていました。更に学生時代は、地域福祉や被災地支援活動に邁進していたので、20歳を過ぎたあたりから、ずっとNPOというものに関わってきました。

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(東北での足湯ボランティア活動の際の写真)

こんな自分でも、誰かの役に立てたという経験

私は、昔から自己肯定感が高い人間ではありませんでした。学校の勉強では、常にクラスでも下位を争っていましたし、何より物事を考えて自分の意見をはっきり伝えることが非常に苦手でした。大学に入学してすぐの授業で、グループ討議があったのですが、周りは自分の意見をハキハキと発表している中、私は下を向いて黙っていました。「変わりたい・・」と思っていた矢先、授業のゲスト講義に、福祉系NPO法人の代表の方が来たのです。

「誰もが社会に必要な存在であり、人の役に立てる存在なのです!」

正直、何を言っているのか、全く意味が分かりませんでした。ただ、直感的に「これは自分を変える最初で最後のチャンスだ!」と思い、後日、そのNPO法人の事務所を訪問し、「関わらせてください!!」とお願いしました。

小さな一歩を踏み出した私は、地域福祉、災害支援、等のNPO法人に関わり始めました。大学2年生の夏には、名古屋のNPO法人が主催するプロジェクトで、初めて東北にボランティアに行きました。
「今までテレビの画面でしか見たことが無かった場所に、自分が立っている。」緊張で足が震えたのを今でも覚えています。

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(初めて訪れた時、大川小学校の見学)

私が訪問したのは、震災から2年が経過した2013年でした。瓦礫はある程度撤去されており、ライフラインも整い始めていたので、「何かしたい!!」と意気込んでいた私は、自分に何ができるのか全くわかりませんでした。
それでも、何もせず帰るのは嫌だったので、仮設住宅に住むおばあちゃんに、「私にできることは無いのでしょうか?」と尋ねました。

すると、そのおばあちゃんは、「東北で起こった出来事を教訓に、あなたが住む町で困っている人が命を落とすことが無いように、防災に取り組んでほしい」と言いました。

自分の住む町に帰ってからすぐに、一緒に活動している学生メンバーと障害者支援施設の避難訓練を企画・実施しました。
翌月にもう一度東北に足を運び、その事をおばあちゃんに報告すると、「約束を守ってくれてありがとう。よくやってくれたね。」と言って手を握ってくれました。

私は目の前のおばあちゃんのために、「こんな自分にも、できることがあるんだ」と感じ、なぜか涙が止まりませんでした。

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(東北に行った時に見つけた張り紙)

きっかけ食堂は、なぜNPO法人なのか?

きっかけ食堂を法人化するにあたって、代表理事の原田、事務局長の弘田と、様々な法人格を比較検討しました。その時に、私たちはあることに対して疑問を持ちました。
「なぜNPO法人は、認証手数料、登録免許税が掛からないのだろうか?」
例えば、一般社団法人だと、定款認証料5万円、登録免許料6万円を支払わなければなりません。しかし、NPO法人にはそれが無いのです。
以前は、「無料で設立できてラッキー」くらいにしか考えていませんでしたが、学生メンバーからの問いかけを受けて、真剣に考えてみたいと思いました。

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(3人で復興庁さんに訪れた時の集合写真)

NPO法が制定されたのは、今から11年前の1998年。阪神淡路大震災で、ボランティア団体が迅速に行動し、被災地の復旧・復興に大きく貢献しました。これを契機に様々な社会課題に対して、柔軟に対応できる民間の主体を育成・応援するために、この法律が出来たと聞いています。東日本大震災でも、多くのNPO法人が立ち上がり、東北の復旧・復興のために尽力しています。もやはNPO法人という制度が無ければ、今の複雑化した社会を支えることは難しいと言っても過言ではありません。

それと同時に、NPO法は、「誰もが社会のために何かの役割を果たすことができる」という可能性を社会に創出したと私は思いました。

私は自分が社会のために何か役割を果たせるなど、全く思っていませんでした。しかし、NPOと出会ってから、「こんな自分にも何かできることがある」ということを感じることが出来ました。これが私の人生に大きな影響を与え、現在は社会課題解決を生業にして生活をすることが出来ています。

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(仕事の風景、講演の様子)

ここで、改めて、きっかけ食堂の学生メンバーからの問いかけに向き合ってみたいと思います。「たくみさん、きっかけ食堂はなぜNPO法人になるんですか?」

今の僕ならこう答えます。「東北のために"何かしたい"と思っている人の想いを応援することに、そして、それを形にしていくきっかけ作りに、覚悟と責任を持つためです。」

NPO法人きっかけ食堂としての決意

きっかけ食堂の活動自体の決意やモチベーションは、原田や弘田は熱く語ってくれると思うので、私は、きっかけ食堂がNPO法人として、社会に対してどのように貢献していくのかについてお話しさせていただきます。

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(イベントでは寄付会員の皆さまから多くの意見をいただきました)

東北支援の団体、そして、NPO法人としてのきっかけ食堂

きっかけ食堂は、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島県の地域支援する団体でありながらも、「東北のために"何かしたい"」という人の想いを応援し、それを形にするきっかけを作る団体でもあります。

これは、私が感じた「誰もが社会のために役割を果たすことが出来る存在である」という、NPO法の理念そのものなのです。つまり、「NPO法人きっかけ食堂」を名乗り、活動を真摯に行うことで、「NPO法人」という法人格の意義を社会に発信し、その価値を向上させることに僅かながら貢献できるのではないかと思っています。

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(代表理事 原田がテレビ取材を受けている風景)

我々は、「きっかけ食堂」として東北に貢献すると同時に、「NPO法人きっかけ食堂」としての社会的責任を果たすという気持ちや姿勢を忘れてはいけません。それを忘れずに持ち続けることが、私が尊敬してやまないNPOの現場で活躍されている先輩方に対する恩返しであると信じており、僅かでもNPO法の発展に貢献できる方法だと思っています。

迷いながらも行動し続けること

私は、東北の人からたくさんのことを学びました。その一つひとつが、今の自分を支えています。
しかし、それらを与えてくれた東北の人が、震災により失ったものは二度と戻ることはありません。つまり、私はその人に対して、直接恩返しをすることは出来ないということです。

今でも時々それを実感し、無力感に苛まれることがあります。しかし、その時は、仮設住宅に住んでいたおばあちゃんの言葉を思い出します。

「今、自分の目の前の人のために『出来ること』をやりなさい。」

この奥深く、力強い、メッセージに報いるために、自分にできることを考え、行動し続けたいと思います。

NPO法人きっかけ食堂 理事 久保 匠

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