見出し画像

21年1月16日(土)「暗闇デパート」

緊急事態宣言が始まって初めての病院。その病院は駅前の商業施設の最上階にあるクリニックで、宣言下の施設終業21時より患者数次第では少し長く営業している。

そして今日はそんな患者数に当たってしまい、僕が最後の患者だった。クリニックを出た時にはいつも雑誌を立ち読みしている本屋が、買いはしないがぷらぷら歩き回るCD屋が、一度だけ外付けHDDを購入した電気屋が、まるで漆黒の服を纏ったようにひっそりと眠っていた。

受付のお姉さんにスタッフ専用の裏口出口まで案内してもらっているときにふと思いついた。もしもこの誰もいない広大な面積を有する、もはやダンジョンとも言うべき暗闇に1人置いてけぼりにされたら…。これは一筆ネタになるかもしれないと思い、帰り道に頭の中でプロットをフル回転で構成した。以下、その途中経過を記す。

主人公は横暴な性格。遅れた診察時間に文句を垂れながら看護師に対しても横柄な態度を繰り返す。当然、裏口案内時には暖房の切れた館内の気温は下がりそれが彼の神経を逆撫でした。

「ここでいいよ。あとは道沿いだろ」丁寧にリードする看護師をよそに、スタッフ専用の扉の前で言い放った。人と話すのも億劫なほど彼の気は短い。スタッフを追い返し、彼は口で説明された道の通り進むも、要領を得ない。客向けに想定された案内板とデコレーションが豊富な施設内と異なり、スタッフ通路は閑散として、汚れた豆腐のような壁が延々と続いているだけだ。

主人公は、何度も似たような道を通りながら現在地を把握しようとするが、目印になるものが見当たらない。エレベーターもなければ階段に続く扉もわからない。試しに重たい金属の扉を開けようとしても非常用扉で固く閉ざされているか、開けてみても期待をよそに別の通路に出るだけ。鈍くて重たい音が、余計主人公の焦燥感を煽った。

堪忍袋の尾を身勝手に切らした主人公は、クリニックに引き返して看護師に再度案内させようと思い立った。だが無駄に終わる。クリニックは無情にも灯りを落とし、電光看板は院内に運ばれスタッフは誰もいなかった。

「おい!誰か!誰もいねえのか!おい!」ガンガンと彼の拳から奏でる苛立ちの音だけが虚しく冷たい空気に吸収される。気温はさらに落ちて主人公は上着の襟を立てた。何とか非常用階段でも見つけなければ…

それからは、食品売り場で飯を調達したりホーム売り場で布団に潜り込んだりと朝まで待とうとします。しかし、誰もいないはずの施設内に怪しげな足音が近づいてきて…てな感じで話を進めれば40分シナリオくらいにはなるかしら🙂せっかく考えたしラストまで書いてみます
꒰ ´͈ω`͈꒱ノ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?