見出し画像

smashing! おねだりときみと

佐久間イヌネコ病院。佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が住む二階住居。


二人は診療時間が終わっても大抵は一緒に居る。掃除などの家事をするとき以外はどこかしら無意識に身体を触れあわせながら、黙って各の作業に没頭している。
不意に佐久間が立ち上がり、キッチンに向かう。戻ってきたその手には焼酎の瓶と炭酸水、陶器グラスが2つ、ホワイトチョコレートと燻製ささみジャーキー。
佐久間は無類のチョコレート好きで、よく酒と合わせて食べたりする。肉好きの喜多村はなんとかジャーキーが定番。いつもなら温かい肴の一つでも作るのだが、今日はこれから観たい映画がある。友人の庭師・小越優羽(最近ほぼなんでも屋ぽい)に設定してもらった配信用チャンネルで、目当ての映画を探す。
大抵は開始数分で佐久間が落ちる。突然電池が切れたように倒れ込む佐久間を、喜多村は動じることなく、自分に凭せかけブランケットで彼を包む。しばらくして佐久間が目を覚ます。ああ、またやっちゃった。目をこすりながら起き上がる。大丈夫。話全然進んでないし。喜多村が笑う。
観るのは昔のアクション映画やドキュメンタリー。最近のアニメなら小越のおすすめを。後味のいい、シンプルで楽しそうなものを選んで観る。映画の途中で、今度は喜多村がうつらうつら。佐久間は画面から目を逸らすことなく、ブランケットを喜多村に掛け直す。エンドロール、ようやく喜多村が起き出す。いつもこのパターンな。ラストは想像通りのあれだったよ。そっか。
他の番組をチェックしながら、喜多村の腕が佐久間に回され、すっぽり抱き込む。一回り違う体格だとこういうとき便利な。喜多村は笑って、佐久間の額にキスする。
少しだけ焼酎呑んで、それぞれのつまみを囓って。つまみ口に入れたままキスする。ジャーキーと白チョコ割と合うな。二人で笑いながらもう少しだけ深く、長く、キスをする。
腰の辺り、喜多村のが当たるのが分かって、少しだけ佐久間の動きがぎこちなくなる。間近で合わせた視線が今にも蕩けそうで、たまらず逸らした先、リモコンに指が当たり再生され始めた番組には二人の好きなコメディアン。つい二人とも見入ってしまう。
鬼丸ぅ俺より松ちゃんのほうがいいの?だったらどうする?ソファから段々と床へ滑って落ちてく佐久間の、頬から顎のライン、そして唇。喜多村の指がゆっくりと辿る。その仕草の意味を察し、喜多村のあからさまに盛り上がったジャージにおずおずと佐久間は手を、掛ける。


そんな、ふたりだけの日常。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?