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smashing! かんちがいでどちゃしこ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。
本日、院長の佐久間の具合がどうにもよろしくない。

大きめの医療用マスクで顔中を覆い、診察時は極力息を止める。元から持っていた花粉症と風邪がマッチングし、マスクの中は目と鼻からの水がダダ漏れなのだ。
会話通訳は助手・喜多村が速やかに行う。飼い主からの心配の声に、これも喜多村がムード歌謡よろしくムーディヴォイスで応対。一体ここ何の病院?ていうかクラブ?喜多村先生いつもの唄って!オッケーあいをください〜!(あいを〜)待合室に混乱を招きながらも、悪ノリ大好きな常連さん達のお陰で面白可笑しく午前の診療が終了。
午後は大事を取って休診することに。佐久間はゴネるが飼い主さんに移ったら大変でしょ?喜多村の説得に渋々納得。

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「鬼丸、ご飯食べて、あと薬ね」

目が届くからとリビングのフロアソファに寝かされ、ブランケットで巻かれた佐久間。喜多村の作ったネギたっぷり卵おじやを無言でモリモリ食べる。腹は減るらしい。思い切り鼻をかみ、用意された風邪薬を飲み、ジョッキ入りの麦茶で一息つく。これでよくなってくれればいいが。明日も休診だなんてことになったら目も当てられない。
食べているときは良いが、熱のせいもあってかクラクラする。佐久間は再び横になり、目を閉じる。風邪特有の不安感やら倦怠感でいらない考えも一緒に頭の中でぐるぐる回る。食器を下げにきた喜多村が、丸くなって唸る佐久間を見て苦笑いする。

「鬼丸、辛いか」
「…なんか身の置き所がないんよ」
「俺んとこに置いちゃる。おいで」

ソファに座った喜多村が膝に手招く。少し考えて佐久間はおずおずと喜多村の膝枕に横たわった。固いわ高いわ、正直枕としては使えないが、そこは温かくて喜多村の匂いに安堵する。大きな手で背中や腕を摩られると、一体何を悩んでいたんだろ、そんな気持ちにさえなって。だがしかし。

「千弦。これなんとかならんの」
「…勘弁して下さい。見なかったことにして下さい」

丁度佐久間の頭部にゴリる例の物体。こんなとこに佐久間の顔があったらそりゃ仕方が無い。ゴリゴリはいいとして、それでもずっと身体を摩り気遣ってくれている。
暫くすると佐久間が寝息を立て始めた。少し赤くなった目元が可愛い。鼻かみ過ぎて赤くなってて可愛い。いつもよりじっくりと佐久間を観察できる機会に喜多村はにやけが止まらない。それにしても。動けないというのはそれなりに困るな。喜多村は手持ちぶさたに携帯を手にする。すると一件のメール。雲母からだった。

【牛尾さんに休診と聞いて。なにか手伝いましょうか?】

渡りにハルちゃん。喜多村は速攻返事を打った。

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「お邪魔しま…あら。膝枕」
「ハルちゃん助かった!ちょっと変わって欲しいんだ(小声)」

ここに集まる者は全ての家の合い鍵を交換しているため、前もって連絡を入れれば出入り出来る。今日は代休なので。そう言った雲母は珍しくパーカーにヴィンテージジーンズ。今日の喜多村とほぼ被っている。本日の手土産はクレーム・デ・ラ・クレーム。ほんと外さない。
雲母は喜多村と変わるため、佐久間をそっと自分の膝に移動させた。

「起きないね。膝気持ちいいんでしょうね」
「やっと寝たんだ。俺そろそろ家のことしないと。助かったよハルちゃん」
「任せてくださって大丈夫。膝枕慣れてるので」
「おいィ…やるなあ雅宗先輩」

喜多村は苦笑しながらリビングを出た。

…あれ。なんかすっごい良い匂い。千弦珍しいこういうの付けるとか。膝、さっきより寝心地良くなった気がする。時々ふわっと頭撫でてくれる。気持ちい。眠くてでもふわふわする。そういえばさっきまでのゴリゴリがない。治まってるな。俺が元気なら何とかしてやれるんだけどな…だいぶ気分も良くなったし、うん…手も動くな。ちょっとお返しに出させてやるかな…

「…!え?」

佐久間の手がいきなり雲母の股間に触れる。ゆっくりと摩られる感触に雲母は思わず固まった。軽やかに指先がファスナーを下げ、目を閉じたまま、本格的にソコをアアしようとする佐久間。アア。

(おにまるくんぼくハルちゃんだよ?きみがナデナデしてるのはハルちゃんのハルちゃんだお!あ!アア!待って鬼丸くん待っ)

「やばい起きてねえ鬼丸く…ンフ…きもちい…じゃなくてっ待っ」

雲母に身体を揺り動かされ、漸く佐久間が覚醒する。喜多村かと思った膝枕はまさかの雲母。ナニが起こった?状況が全く掴めずフリーズした佐久間。手にはハルちゃんのハルちゃんを握ったまま。
コーヒーと雲母の手土産を持ってリビングに入ってきた喜多村は、最初からその様子を凝視していた。ずっと。

「…シコい」

止めないんだ?そっちに驚く雲母に微笑みながら「つづけて♡」何故か口パクで表現してくる喜多村の喜多村は、もう大変な状態になっていたのだった。



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