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smashing! おれらのひみつのかくれが

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。彼らの友人、小越優羽と結城卓。仲間内では「ちっちゃいものクラブ」と呼ばれている。小越は売れっ子の若い庭師。元不動産会社エリート営業マンだった結城は、うんと年下の小越と付き合い始めて2年が経つ。


「今日は一人作業だから、卓もおいでよ」ここのところ季節の変わり目で忙しくしてた優羽が、珍しく俺に声を掛けた。ちょうど今日はペットシッターのリリーザが来てくれる日。1号から6号も彼にとても懐いているから、安心して出掛けられるんだけどね。

久しぶりに車出して優羽乗っけて仕事場へ。あれ?なんか見覚えあるなと思ったらこの先の道行ったら伊達くんち近いじゃん。帰りに突撃してなんか食べさせてもらおっか。優羽と笑ってたらいつのまにか今日の目的地に到着。

優羽が刈り込んだ植木の葉や枝を、ざっと石箕に集めたりお庭を竹箒で掃除したり。俺でもちゃんとできる作業があるとちょっと嬉しい。優羽は作業が一段落するたび、目を合わせて笑ってくれる。
可愛いお弟子さん連れてるね。家の人が俺のことも褒めてくれる。どの家でも帰りにいろんなお菓子やお土産を持たせてくれる。こういう時ほんと「ちっちゃいものクラブ」って皆に愛されるしお得!って思ったり(鼻息)。

もしかしたら買い物するかもって、トランクに保冷ボックス積んでてよかった。今日は頂き物でいっぱい。すごく早く仕事終わったし、いっそこのまま伊達くんちでも寄っていこうか。優羽はしばらく考えて「卓、ちょっと俺につきあって?」

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着いたのは平日はガラーンとしてて人気のない、でも寂れてもない、スーパー銭湯とかの、いくつかある駐車場のひとつ。端っこの木陰に車停める。
ここは大体いつもすいてるから、勝手に停めてても怒られないんだ。言い終わらないうちにシートがいきなり倒されて、ビックリしてギャアなんて声出て「卓は俺のことギャアって呼ぶよね最近」「ちげーよ優羽がでっかい虫とかひけらかすから悲鳴しか出ないんだよ」そんな俺のこと笑いながら、有無を言わせない強い力でもって着てるシャツを剥かれる。

優羽の鯉口シャツにぴったりと沿った腹掛けを取ろうとして「なんか紐が絡まっちゃった」って言ったら優羽は笑って「いいよこのまんまで」そうもいかないと思って頑張ったけど、結局紐は外せなかった。肘から上を縛られた感じのままで優羽が抱き寄せてくる。

ふわりと漂う松脂と刈り立ての草と、優羽の汗の匂い。くしゃくしゃの作業服やらが無造作に置かれたレンジローバーの中、息出来ないくらいにきつく抱き竦められて。濃紺とピンクが合わさるほんの境目で俺たちは互いの焦点も合わないままひたすらその温もりを享受する。車体揺れないといいけど。心許ないブラックスモークがそれなりに俺たちを日常から覆い隠してくれてることを願う。こんな真っ昼間。


触れられなかった分、思い切り与え合いそして奪い合う。




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