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smashing! あじわいつくされたいおれ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。


本日も無事終了。夕飯食べて早めに風呂に入って、ベッドでごろごろしながら配信&缶ビールでちょこっと晩酌。重ねた枕をクッション代わりに新着の配信をチェックする佐久間の横で、喜多村はベッドにうつぶせでタブレットに指を滑らせる。

「ちょっとこれやっつけていい?」
「いいよ。何読んでんの?」
「これ、ここにお菓子落とすゲームがさ…」

喜多村のタブレットにあったのは、ファンシーな絵柄とは正反対の鬼畜系パズルゲーム。ゲーム好きの小越と結城が入れていったというアプリは、小さな穴に同じお菓子やご馳走を落としていくのだが、これがなかなかに難しい。

「この…黄色いなにかが、カド邪魔してて…」
「この形状が落ちづらく出来てるのかな」

喜多村は大抵どんなゲームでも淡々とクリアしてしまうタイプだが、どうやらこいつは少々毛色が違うらしい。本腰を入れようと起き上がり、タブレットを抱えるように膝を立てて座り直す喜多村。その後ろ側に枕を押し込んでやりながら、佐久間も隣からタブレットを覗き込む。

気付かれないように横顔に見入る。喜多村は普段から全裸だったり性欲魔神化したりちょっとアレな2枚目ではあるが、こうして真剣になにかと向き合う顔はとても美しく荘厳ですらある。伊達が「毛虫感」と褒め称える眉も睫毛も、間接照明の淡い光に深く影を落とす。

喜多村の興味がこちらを向いていない時の佐久間の癖。
どうにも、キスしたくなってしまうのだ。

あの無防備な顔が一瞬たじろくのが見たい。その目に自分が映り込む瞬間を見たい。そしてこの自分を認識し邪に変貌していくあの表情が、見たい。

「そんでさ、鬼丸ここの…」

タブレットから目を離した一瞬、喜多村の動きが止まる。唇を辿る温かな感触に、腕の力が抜けタブレットがベッドに滑り落ちる。んふ。軽く鼻で笑って佐久間にされるがまま目を閉じる。喜多村の睫毛が佐久間の瞼を軽く擽り、自然と抱き合いながら、喜多村は佐久間に覆い被さる。

「…ゲーム邪魔しちゃったな」
「あれはもう見切った…終わったら秒でクリアすっから」

佐久間はそっとタブレットをサイドテーブルに避ける、互いの昂りを直に感じ流されながらも、そんな技ができるようになった。だけど抱きしめられ、食うように暴かれ、容赦無く追い上げられる。あの感覚には未だ慣れることはできず。


毎回「キスしたかっただけ」では済まない展開。
それでも、満更でもないか、なんて佐久間は思っている。らしい。



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