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佐久間イヌネコ病院 luv.25 セ・ラ・ヴィ

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なんということだろう、年に一度のあのお祭りの日を、伊達さんもこの僕も失念していたなんて。

立冬を過ぎ、本格的に税理士業務も忙しくなり始め、確かに油断してた。もともと僕には日付の観念が甘いところがあって、ありとあらゆる記念日、お誕生日、お得意様のなにかしらのお祝い等、余す所なくカレンダー機能に打ち込んである。ただその日だけは絶対大丈夫だろう、僕は高を括っていたんだ。

年に一度の、ボジョレーヌーヴォーの解禁日。

丁度そのことに気づいたのは、鬼丸くんの家で帳簿のお話をしていた時のこと。今年のヌーヴォーさ卓たちがたくさん貰ったって置いてってくれたんだ。そう言って千弦くんが出してくれたのはグランド・キュヴェ。僕はボジョレーをお店やワイナリーに直接買いに行くのが好きなので、予約という発想はもともとない。そこへですよ、急にラスボス級ボジョレーのキュヴェがあらわれた!マジでか。ウチの末っ子彼氏設楽くんが降臨しちゃう勢いです。

「え!ハルちゃん達が解禁日を忘れるってあるの?」
「ウチとこ…何本も呑んじゃった…」
「僕のうっかりですから…それにこうやってお二人にご馳走していただけるなんて。今年はかえって福が転ずるかも」

よし!じゃハルちゃんちょっと待ってて?千弦くんが奥の方に姿を消した。何か思い当たることがあったのか、鬼丸くんが嬉しそうに僕に耳打ちする。

「千弦、今きっと着替えてると思う」
「え?何に?」
「ボジョレー開けた時、ソムリエみたいな格好してくれたんだ。すごくカッコよかったんだ(鼻息)」

おまたせー!リビングに現れたのは「喜多村ソムリエ」。コスプレ好きの僕にはとんでもない爆弾ブッこまれです。にこやかにワインを手に歩いてくる千弦くん。反射的に携帯のカメラを連打。ちょっと興奮してバーストしちゃいましたが、問題ありません。僕もそれ着たい。

「…おふたりの所に来る時はビデオカメラ必須でした。油断してました…」
「ハルちゃんそんな真面目に。俺はいつだってコスできるから大丈夫!」
「……やっと慣れたのに」(喜多村のコスにあまり耐性のない院長)

僕がボジョレーを頂く時期がズレたのは、きっとこの姿を堪能させてもらうため。なるほど、どんなことにもタイミングが必須ですね。間違えても、失敗しても。その先には高い確率でお宝が用意されているもの。それにしても、伊達さんが忘れるなんてことはありえないから、あの方なりのサプライズが隠れている可能性も無きにしも非ず。想像するだけで楽しくなってしまう。

これだから「毎日」は味わい深く出来ているんですね。




/雲母春己
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佐久間イヌネコ病院
ボジョレーの解禁日に
あえて国産新酒を味わう
これもある意味贅沢ですね
(院長)





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