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smashing! そういますぐおれと

俺が忙しくて鬼丸と中々触れあえない、以前そんなことが数回あったが、鬼丸の方が忙しくて俺をかまってくれないのは、これが初めてだ。

ほんとごめん千弦ごめん。鬼丸は色々説明してくれてたけどお前がいないんなら何でも同じなんだ。
日中はちゃんと仕事して、終わるとすぐまた鬼丸は出掛ける。金鳥社長、ここを手配してくれた不動産屋さんなんだけど、どうやらその社長に鬼丸は時間が空くと駆り出されている。今日は無理言って雅宗先輩にも来てもらった。佐久間大変だな!でもあとで肉奢ってもらえるかもよ?脳天気なこの人はずっとそんな事言ってる。

診療終わって、鬼丸がいない家で一人で飯食って。あ、鬼丸の分はちゃんと作ってある。けっこう深夜になって戻ってきてるみたいで、寝室には来ないでリビングで寝てる。俺を起こしたくないのと、朝また早いから。そう言ってた。でも今夜で全部終わる。そう言って鬼丸は出掛けていったんだ。

夜11時を過ぎた。明日は休日。けっこう遅くまで起きていられるから、あいつが帰ってきたら「おかえり」言ってやろう。疲れてるだろうけど、キスだけはさせてもらう。だってこの三日間。俺は一度も鬼丸に触れてないんだ。
リビングで配信番組を見る。鬼丸の好きなドラマを流してると、隣にあいつもいるような気がする。そんな中、俺がトイレに立ったその数分。リビングに戻ったらいつのまにか鬼丸が帰ってきてた。

ただいま!ごめん遅くなった!ちょっと痩せちゃった頬の辺が影になってて、胸の奥が鷲掴みにされた。おかえり言う前に身体が動いて、思い切り鬼丸を抱き締めてた。たった三日なのに。信じられないくらいの乾きが俺の中で渦巻いて。項に、そのくしゃっとした髪に、胸元に。俺は全身で鬼丸に触れたがっていた。

ほんとごめん。もう行かなくて大丈夫だから。鬼丸はそっと俺の背中を撫でる。少し緩めた腕の中、鬼丸の顔が近づいて、その唇が優しく啄んでくるその感触に、されるがまま俺は目を閉じる。

あのさ鬼丸。社長さんの用事何だったの?

え?俺言ったよ?

え?

鬼丸は俺にちゃんと言ってたらしい。でも俺の頭の中には「鬼丸はこれから三日間忙しくてかまってくれない」くらいの情報しか残ってなかった。耳が聞くの拒否ってた。俺は最初にショッキングな情報が入ると、キャパオーバーになるタイプらしい。そんなバカな。
落ち着いて聞いたら、社長と他数名のお偉いさんと将棋を指してたんだそうだ。指してたのって駒だよね?別のじゃないよね?俺の額に鬼丸院長の痛恨のヘッドバット。痛い。
お偉いさんはほぼ初心者で、上手いこと指南しないといけないから加減が難しくて。鬼丸は困った顔をする。だけど社長は殊の外喜んで、沢山ご馳走してくれると約束してくれたそうだ。特技が人の役に立つって面白いな。鬼丸が笑う。でもさ俺は全然面白くないんだけど。

千弦、俺今から風呂入るけど、一緒に入ろうか?

今日は無理かと思ってたけど、無理を押してくれてる感満載な鬼丸の、それでもちょっとだけ浮ついた感じが見て取れる。足りないの俺だけじゃなかったって、確信した瞬間。何もかもぶっ飛んじゃって、鬼丸に飛びかかって毟るように着てる物を剥ぐ。ここ風呂じゃないのに。

鬼丸は怒る代わりに、噛み付く勢いのキスをくれる。
そして上げた声までも、俺は飲み込まれてく。


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