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smashing! ろくときゅうのあいだで

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。週末。大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗が週1勤務に来てくれる日。


「こんにちわ!今日はどうされました?」

いつものように爽やかヴォイスで問診する喜多村。ただ微妙に違うのは、本日の彼はほぼ直立不動の姿勢しかとらないということ。

「すみません伊達先輩…」
「いやもう全然俺はいいんよ、けど、どしたん千弦」

言えるような理由ならばとっくにネタバラシてるのだが、とても真正面からは言えない。佐久間は言葉を濁しながら、立ったままほぼ動かない喜多村の後ろ姿を見やった。

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朝起きたら、自分の太ももが喜多村の頭を挟んでいた。

待って。こう言うと語弊あるよねそうだよね。正確にはどうやら昨夜、喜多村と6と9の体勢を取ってしまってた様なんです。そしてお互い下半身丸出し。ちなみに佐久間は全然覚えがない。
昨日の夜は普段通りテレビやら配信流して、ちょっとお酒なんか入って機嫌良く、それでも佐久間は普段より少し疲れていたせいか、ベッドに横になった途端寝落ちてしまった。その後、喜多村が何やらいたしていたようなのである。
酒が入ると中々勃たなかったり出なかったり、そんな感じになることが多いが、どうやら喜多村は、佐久間の佐久間を何とかすっきりさせてやろうと、頑張っていたようなのだ。そりゃ一方的ではあるが。もちろん6と9の体勢になるからには自分のも佐久間のおクチにインさせたい。でも佐久間は眠ってしまっている。それで先っぽだけイン状態で我慢したのだ。
そのうちほろ酔いの自分にも睡魔が襲ってきて、佐久間の大腿部に挟まれたままつい寝入ってしまった。そのまま寝返りを打ったのか、気付けば完全にヘッドシザースを食らった体で喜多村が安らかに落ちていた。
お前何してんん!朝一番佐久間の絶叫。喜多村は幸せそうに佐久間の太ももに挟まれ白目を剥いていた。そして首を寝違えたまま元気に勤務にあたったのである。

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何とか朝夕の診療時間を終えて、今日はサービスしたげると言って伊達が二人の夕飯の支度を請け負い、佐久間は不本意ながら喜多村の首や背中を摩ってやっていた。

「ご飯も炊いといた。ね千弦だいぶよくなった?首」
「少し…でも俺何の悔いもないっていうかさ」
「ちょっと黙れやお前」

佐久間に怒られシュンとする喜多村。下半身剥かれたまま朝を迎えた佐久間は少し風邪気味である。その鼻に掛かった声もいいなあ、喜多村の的外れな意見は頑なにスルーし、佐久間は無言でマッサージを続ける。

「ハルちゃん今ちょっと忙しいらしくてさ、先に部屋行ってようかなって」
「すいません俺らのご飯まで…先輩助かりました」
「あ、それとさ」

6と9のやつすんなら、酒入ってない状態でないとマジ危ないからな。ケラケラ笑いながら伊達は玄関へと去っていく。

バレてたな。深い溜息をつく佐久間。

「てか千弦なんでお前はノーダメージなんだよもう。俺ほんと恥ずかしかったんだからな今日」
「えだってさ、あんなこと言うってことは、先輩もたぶん経験者じゃね?」
「…あの二人もあんなバカやってんのかな」
 
今日やっと聞けた佐久間の笑い声に、喜多村の目が細められる。いや、あれは歴代のあのへんのあの彼氏の時…じゃなかったかな。勿論口になんて出さず、心の中で呟く喜多村だった。




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