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smashing! きみはアーリーアダプター

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。彼は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己と付き合っている。

「これもこれも何て新鮮…素晴らしい…」

佐久間イヌネコ病院より少しだけ郊外、伊達の住む平屋の一軒家。月に数日そこに滞在するようになった雲母は、必要な食料品の買い出しも兼ね、この「市場」に買い出しに来ていた。
手作りの看板が微笑ましい「いたどりショッピングモール」。何のことはない、広い倉庫かなんかをそのまま居抜きで改装した市場。それでもかなりの住民が毎日ここに足を運んでいるようだ。

食料品、朝採れ野菜は勿論、精肉鮮魚、乾物、果ては衣料品まで幅広く揃っている。まんま倉庫な外観とは逆に、建物の中は広く明るく、まるで吹き抜けのように高さが感じられた。
雲母は一見クールに、だが心の中はテンアゲ状態(?)で、広い市場の中、カートを押し進んでいく。そんな時。丁度衣料品売り場。これまでの雲母にはほぼ馴染みのなかった、ある紳士用の衣類が数多く並んでいた。

「?何だろ…見たことない…」

つるんとしたマネキンに着せられていたそれは、少し透け感があって、涼しそうな白の上下クレープ素材。これは実に涼しげですね。上下デザインもシンプルでかつ機能的。雲母は丹念に生地を調べた。なんとスーピマコットン100%。織り方によって涼しさ倍増なのですね成る程、らくらく?…この表記はおそらく伸縮でしょうか。なかなか僕が出会えないタイプ。ちょっと僕には丈が短そうだけどまあよしとして、こんなに仕上げも丁寧で…上下でなんと、このお値段。え?セールとかじゃないのに?素晴らしいこれはぜひ伊達さんとペアでこの夏を過ごしたい…ンフフフ…。雲母は白、黒、伊達の好きそうな紺に龍ぽい柄を2サイズづつカートに入れた。

それぞれの売り場の「島」には様々なトラップが仕掛けられているのが常。案の定雲母はいとも簡単に引っかかった。冷感素材の便利な薄手タオル…これ!こういう所に穴があったらと僕思ってたんですよ伊達さんのお庭の野菜を摘み取るときにいつも首の後ろが暑くて。これなら日にも焼けませんねなんと!え?UV99%カット?そんな優れた機能まで?(ハルちゃんボイスは全てノンブレスにてお送りしております)

気付けば雲母のカートは前カゴに厳選した食料品、下のカゴはステテコ類と夏の便利グッズで埋め尽くされていた。冷風を感じます、な扇子…いいセンス…プッ…クク…一人で受けて一人で笑ってる。180超えで鯖江フレーム、シンプルな白シャツにジョガーパンツの細っそい男子。端から見たら一体どういう種類のイケメンなんだろな感。しかしこの辺りでは雲母は既に有名人になりつつあった。
あれ伊達さんとこの先生だ。ああ、税理士先生綺麗な。俺んとこも頼もうと思ってるんだよ。更に顧客が増えそうな気配に気付くこともなく、雲母はディスプレイされたとあるコーナー、そこのネクタイに目を奪われた。

数種類飾られたその姿は洗練されており、纏った色は深い森の翠や海の碧を思わせた。細かいストライプやチェックの織りは主張しすぎず、手触りは軽く柔らかだがハリがあって、少し細身なのがまたいい。裏側には「おだじま」と記された控えめなタグが縫い付けられていた。
このタグのついた物、とてもハイクォリティで光っている。デザインも縫製も素晴らしい。そして信じられない価格設定。安。雲母は「おだじま」さんの商品を丁寧に全てカートに乗せていく。なんて素晴らしい出会い。今度この方とオーダーのお話をさせてもらおうかな。商品の横に置いてあった生産者名刺をそっと手に取り、雲母は楽しそうにレジに向かった。

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稲がだいぶ揃ってきて綺麗だな…俺、田んぼの匂い好きなんよね。そんでここしばらくはこの帰り道が極楽に続いてるんよねンフフ。雲母が家で待っていると思うと、フージコちゃんを与えられたルパーンみたいになってしまう男・伊達雅宗。実は宮崎ルパン推し。
門をくぐり引き戸を開けた瞬間、異様な気配に気付く。あれこれ何だ?三和土から玄関の床にかけて大量に積まれた野菜やら米袋やら…。一体何があったの?

「ただいまハルちゃ…」
「おかえりなさい伊達さん!ご近所の方がね沢山お裾分けを…あの、これ僕の服、どうですか?」

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上下白いステテコで統一し、首にはUV加工と思われるパープルの便利タオルを粋にいなせに巻いた雲母。…え?肌色スケ…え全裸?全裸なん?

「ハルちゃん、中…パンツ、履いてる?」
「ンフ。伊達さん、ほらちゃんとTバックですよ?下着の線が透けちゃったら皆さんに失礼ですからね」
「…ハルちゃん、まさかそれで外に…」
「お庭の茄子とトマトにお水上げて、家の周りのお掃除なんかを」

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お裾分け量の凄まじさはそのせいか。雲母は新しい機能的ウェアが気に入ってニコニコしてる。分かってない。それがもう可愛くてしかたない。あとこのステテコ上下、ベージュなんかと思ったら白。透け感けっこうあって焦るわ。なんだこれほぼ全裸か。実に実にけしからん。ていうか、ステテコっておっちゃんのかと思ったら、存外エロいな。

「伊達さんご飯もうすぐですから、着替えてくださいね?」

ハルちゃんが軽い足取りで台所に向かってく。うっわ後ろ側。すげえな脚も尻もな。履いてないと思って間違いないな。クラックラしながら洗面所に向かう。途中上着やら何やらハンガー掛けて、着替え入れてくれてるカゴ見たら…紺に龍ぽいやつだけど、入ってるじゃん俺のも。わぁいステテコデビューだよ佐久間達に自慢しよ!

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「ああ、龍ぽいやつ、とてもお似合いですね伊達さん」

台所でご飯作ってくれてるハルちゃんの後ろに立つ。いいにおい。もうすぐですから待っててくださいね。あこれ、白い上下な…至近距離だと更に威力がとんでもないな。あ、やべ、勃つ(魔神先生風)
ハルちゃんにそっと抱きついて擦りつけたら、困ったように低く笑う声。しょうがない人。ガスの火を止めてこっちに向き直って、上から降ってくるキス。この上下、外では着ない方がいいですね、だって、丸わかりになっちゃいますから。ハルちゃんの指先が「俺」を辿るように撫でる。ああ、さらさらした生地の感触が気持ちい。二人でそのままもつれ合いながら台所出て、側の部屋の畳の上に転がって。


生地に透けたハルちゃんの白い肌、熱を確かめるように撫で上げた。




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