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ポートレート02 「シャッフル」
秋も深まった頃の設楽の実家。設楽は6人兄弟の5番目。どこぞの6つ子とは全然別物です。ここに住んでいるのは両親と末弟で大学生の泰良だが、今日はそれぞれが留守にしていた。設楽は伊達と一緒に家の手伝い。恒例の草取りと庭掃除。伊達の手際が思いのほか良くあっという間に作業は終了。
「お疲れさんね設楽!昼飯なに?」
「焼きそば…それかオムライスですかね」
「え!オムライス初耳」
「じゃあそれにしましょうか」
支度の手伝いをやんわりと断られた伊達。まあゆっくりしてて下さい。有り難くその場を設楽に任せ、居間に向かう途中あることを思いついた伊達は、気付かれないようそっと二階へと上がっていった。
「えっと、まだ見てないのこのへん…」
以前(勝手に)入ったことのある「設楽の部屋」。代々使い込まれた様子の学習机の引き出しには、設楽の私物であろうこまごましたものが雑然と押し込まれていた。古びたミニカーや謎のアイドル?のブロマイド、そして底の方に仕舞い込まれていた封筒には「設楽たち」の数枚のポラロイド写真。
「…伊達さんコラ」
いつのまにか部屋の前に設楽が立っていた。ひゃあびっくりしたあ。伊達のひっくり返った声に笑いながら設楽が羽交い締めにする。ごめんごめんていうかこれ何?差し出された封筒を見て、設楽は少し考え込み、数年前撮られたであろうその写真を伊達の前に並べる。
「…俺ら、兄弟けっこう似てるんで、父ちゃんが家に来た人にどれが誰か当てさせたりしてて」
「んー、でもクイズになんないねえ」
「?」
「これ。お前すぐわかるん」
…正解です。えーマジかあやったあ!無邪気に喜ぶ伊達を呆然と見つめていた設楽は、いきなり何の前触れもなく唇を奪う。どこでスイッチが入るのかが掴めない。伊達にとって設楽は7つ程下で、体感的には正直「今時の子」だ。オムライスオムライス。溺れかけのような息継ぎの合間に伊達の必死の声。あそうでした。設楽は意外にあっさり引き下がった。
「それ、伊達さんにあげます」
「えいいの?これお父さんのじゃないの?」
「…賞品。もらってほしいんで」
ありがとね。伊達は受け取った写真に軽く唇を当て、そっと胸ポケットに仕舞い込んだ。ご飯にしましょうか。伊達と設楽は揃って階段を降り台所へ向かった。
「ケチャップ自分で掛けますか?」
「字書いてよ。まさむねくんラブって♡」
「長文ですね」
笑い声が立ち込める湯気と混ざり合って。設楽は目の前の「彼氏」と共にふわふわと覚束ない気持ちでスプーンを口に運ぶ。
本当は言いたかったこと、でもきっと言わないで済むこと。
一発で当てたの、伊達さんが初めてです。
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