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思い出したこと

 先月、とあることで10歳の長男の言葉で傷ついてしまって、

自主的家出をした母であるわたし。(主人にも子供にもちょっと外に出てくる、ときっちり言ってから)

一人で夕食はなかなかないのだけれど、いつもわちゃわちゃとご飯を食べているのでなんだか手持ち無沙汰。

そんな時、妙にはっきり思い出したことがあって。

それは私が長男と同じぐらいの10歳ごろのことで今から30年ほど前。

自分の母と地元の西武百貨店の洋服屋さんに入って、母が試着室で着替えをしている間に、店の向こうのほうから何だか大声で叫んでいる人が来ている。

聞くと「私はTの妻よ。ここの全部は私の店だったのよぉー!!!!」と何度もいっている。

こわいよーと思ってもこの緊迫感が伝わらない試着室内の母。

そうこうしている内に気がついたら目の前に大声を上げていたその女性が来ていて、

「お嬢ちゃん!」ガシッと肩を掴まれて (この時点ですでに私は顔面蒼白)

「お嬢ちゃん!怖い人が来たらね。助けてー!っていうのよ。助けてぇぇー!!!って!!」

周りに木霊するほどの「ぇぇー」の語尾。

私は今助けてと言いたい。。。


女性がその場から去ったところで試着室から「どうしたん?」とのんびり出てくる母。


大人になって、時々思い出すその時のこと。

社会人になった時に母にその話をした時、私はこれまであの女性は虚言癖のある女性だと思っていたのだけれど

「ああ、あの人。あの人は本当にそうや。時々(テレビで)見てたもん」

道理で、普通なら周りの従業員の方たちはお客を守ってくれるはずなのに

大声で叫ぶ女性に目を合わせてはいけないように下を向いていたはずだ。。

眼が開いて、思い詰めた顔をした女性。

私と主人がインド旅行に行ったときに、もう死んでいるのではないかという子を抱いて空港近くで「お金を恵んでほしい」といっていた女性の目に似ている。

経済的には富んでいたはずの人と、インドの道でやせ細って死にそうに立っている女性。

豊かさってなんだろう

一人ご飯の時間が、なぜかセゾングループの栄枯盛衰、インドの女性に思いを馳せる時間になったのでした。







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