レゴ®︎シリアスプレイ®︎で新規事業の”インパクト”を可視化する
先日、竹林一氏の『たった1人からはじめるイノベーション入門』を読んだ。竹林氏からは直接お話を聞いたこともあるが、この本で書かれている通り、あらゆることについてその把握の仕方が独特かつ鋭い(それでいて、ユーモアあふれ親しみやすい!)方という印象であった。
上記の本でも、いろいろと考えごたえのある材料がてんこ盛りという感じ。その中でも今回は、単に「イノベーション」を連呼するのではなく、「あなたのやろうとしていることには、世の中にどのようなインパクトを与えるのですか」という問いが大事という指摘が刺さった。それによって「やろう!」という意志が生まれ、その意志こそがイノベーション実現の基礎的な条件だからである(あきらめたら絶対に実現しないので)。今回はこの指摘を受けて以下、レゴ®︎シリアスプレイ®︎に何ができるかを考えてみたい。
アプローチ① 社会(業界)システムを組んでインパクト経路を可視化する
ひとつめは、まず自社を取り巻く社会や業界システムをモデルで組んでみることから始める。例えば以下は私のレゴ®︎シリアスプレイ®︎を活用した授業で学生たちに現代社会のモデルを組ませたものである。現代社会を支えるいくつかの要素を出して、それぞれの関係がどうなっているかを議論しながら結んでいる。つまりシステムとして表現させていく。
こうしておけば、ある事業を行った(アイデアを実現させた)ときに、どの要素に影響が出て、別のどの要素に波及していくかを繋がりを中心に追っていくことができる。
まず、どの部分に影響がでたかを皆で判断する。そののち、どのくらいの強さでどのような質の変化が起こったかを参加者同士でモデルをもとに話していくことになる。システムで表現された関係性を辿りながら、ある事業やアイデアのインパクトの意味を把握する。
上記のことがイメージできるように、以下の写真では、矢印でその影響を書きこんでみた。実線が一次的波及で、点線は二次的波及を表している。
便宜的に上記の写真に矢印を書いているが、実際には、参加者がモデルを作っていく中で、要素間の関係性の性質についても議論し表現している(ふさわしいパーツを選んでつなげている)ので単純に1次・2次な区別では話は終わらない。
深く意味づけされたインパクトのストーリーが語られることになる。
実際にモデルを掴んで物理的に要素の位置を変化させる(ずらしたり持ち上げたり)ことによって影響の伝わり方を確かめるような方法をとることができるのもブロックで作ることのメリットである。
この方法では、参加者同士が、背景にある社会の構造を意識してインパクトを検証するので、高い納得性のもとでインパクトのストーリーを抜き出せる。
しかし、背景にある社会の構造がどこまでうまく描けるかが大きな勝負になるので参加者の選抜(もしくは準備)とそれを十分に引き出すファシリテーションが鍵になりそうだ。
また、少々時間がかかる。初めてレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークに参加するなら1枚目の写真に辿り着くまで6時間はみておきたい。さらにインパクトの検証をするので(検証対象になるアイデアの数にもよる)、もう少し時間が必要となるので8時間ぐらいはかかるだろう。
1日で事業インパクトの検討ができるなら、効率的かつ効果的だと私は考えるのだが、みなさんはいかがだろうか。
アプローチ② 事業アイデアのモデルをスタートに波及を表現する
もうひとつの方法として、事業アイデアを表現したモデルを作り、それをテーブルにおいて、それについて参加者が説明を聞いた後に、それぞれがイマジネーションを発揮して影響を表現する方法が考えられる。
イメージとしては、以下の図のような感じとなる。まず、①を事業(アイデア)モデルとし、作ってテーブルなどの中央に置く。次に、①の話を受けて②のモデル(社会における変化)、次に③のモデル(その変化を受けて生じる変化)のように作って配置していく。
参加者のイマジネーションを助けるように、テーブル上にあらかじめエリア分けをしておいてもいいかもしれない。例えば、「PEST」や「ファイブフォース」などは役立つかもしれない(発想の制約をしてしまうリスクもある)。
この方法だと、アプローチ①よりも時間が短くて済む。どこまで副次的な影響を考えるかにもよるが、肌感覚でレゴ®︎シリアスプレイ®︎初心者であれば、最短で4時間といったところだろうか。
ただし、複数のアイデアを検証するとなると、毎回、ゼロから作り直しなので1つアイデアが追加されるごとに2時間ぐらい追加で時間がかかるだろう。また、イマジネーションが鍵になるので、参加者の選抜(準備はしにくいかも)とイマジネーションを十分に掻き立てさせるファシリテーションが鍵を握りそうだ。
インパクトを自他に見せる
新規事業インパクトをレゴ®︎シリアスプレイ®︎を使って考えるための2つのアプローチを紹介してみた。まだ他にもアプローチがあるかもしれない。
いずれにせよ、自分のしようとすることのインパクトが生き生きと描けるかが意志を生み、人を動かし、社会を変えるならば、レゴ®︎シリアスプレイ®︎はその描くお手伝いができるのではないかと考えている。
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