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レゴ®︎シリアスプレイ®︎で「セルフ・コンパッション」傾向を育てる

 失敗したり、挫折したりすることは誰にでもある。新たな挑戦や競争が求められる時代にとっては避けられないといってよいだろう。このとき「セルフ・コンパッション」の傾向を示せるかどうかが、成長や生活やキャリアの充実と深く関わってるということが研究でもわかってきているという(下記雑誌参照)。

 「セルフ・コンパッション」とは、失敗や挫折を感じた時に(他者に責任を求めず、かつ)自分に対して寛容に向かいあえる態度である。他者に対して責任を押し付けることは、自らの成長の機会を奪い他者からのその後の協力可能性を奪う。自らに厳しくあることは時に美徳といわれることもあるが、自己の能力を過小評価することになり、こちらも自らの成長の機会を奪ってしまう。

 この罠を抜け出せる「セルフ・コンパッション」のレベルが高い人は次のような3つの行動をとるという。

①自分の失敗や誤りに対して批評せず、寛容である
②人は誰でも失敗するということを受け入れる
③自分の残念な気持ちを受け入れるがマイナスの感情に支配されないアプローチをとる
(セリーナ・チェン「セルフ・コンパッションは自分とチームを成長させる」HBR日本版2019年5月号 30-31ページ)

 このうち③のアプローチに関しては、マインドフルネスの技術が有効だという。落ち着ける場所に身を移して、大きく息を吸ったり吐いたりしながら、自分に向かって「今、何が聞こえるか」「どんな考えが頭を巡っているか」「その考えにどのような反応を自分はしてしまっているか」などの問いを投げ、今、自分の周りと気持ちの中で生じていることに意識を集中させる。それによって、自分が誰かから責められているという状況解釈から離れて、実際には何も起きておらず、自分が自分を責めようとしている気持ちだけがあることに気づけるのである。

 ①や②の形成については、その人がそれまで積み上げてきた人間観や能力観からの影響が大きいだろう。もちろん、それらは変えられないものではない。日頃から、自分の過ちや失敗はもちろん成功も自分の能力だけで起こらないことを理解し、他者も自分と同じように失敗し苦しむことを知る機会が必要である。それは教養と呼ばれるものの中に含まれるのかもしれない。

「セルフ・コンパッション」傾向を育てるためのワーク

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎で、この「セルフ・コンパッション」傾向を人々の中に作っていけるのだろうか。答えはYesである。特に(A)自分のもつ能力・価値観・強みが、成功の絶対条件ではなく、ときには失敗の原因になることを知ること、それは(B)他の人も同じであり、模擬的に失敗を想定する中で、その教訓をお互いに共有することで、”自分に寛容になる”ことへとつながっていく。これは前節で紹介した「セルフ・コンパッション」の①と②を育てることにつながる。

 特に、「寛容さ」に関しては、単に「甘やかし」や「自己憐憫」ではないとすることが重要であるという指摘があるので以下に紹介しておく。

 セルフ・コンパッションの「失敗を優しく受け入れる」とは、失敗の中でも自分が頑張ったこと、貢献できたこと、得られた教訓など、良い側面についても悪いところと同様に受け入れることである。そこから自分を改善して次のステップへ向かおうとする動機づけが高まる。
(有光興起「セルフ・コンパッション:最良の自分であり続ける方法」HBR日本版2019年5月号 45ページ)

 少し具体的にワークのイメージを紹介すると、(A)について「仕事上での自分の強み」についてまず作品を作ってもらう。そして、同じ作品を使って「自分の仕事が失敗した原因」として作品を語ってもらう。これは、以下の記事と同じようなアプローチで、同じものも「まなざし」の向け方次第で、評価が変わってくることを知ることにつながる。何らかの能力や考え方が、絶対的に良いとか、大きく優れているということはないということへの理解が失敗への寛容さを大きくしていくいく。

 さらに、そのことを実感したいならば、「仕事上の自分の強み」という作品の周りに、追加して作品をつくる形で「あなたの能力が生かされる状況とは?」と、「あなたの能力が失敗を引き起こす状況とは?」とを、それぞれ作って語ってもらうということが良いだろう。抽象的な要素がからむ(この場合は能力)状況を扱うワークに、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は「見える化」することでその効果を高める

 このワークによって、能力の発揮は、状況との適合性という要因が非常に大きい事を参加者に知ってもらえるに違いない。ただし、失敗の責任を全て状況に転嫁してしまうと成長の機会が損なわれることにはクギを刺しておかねばならない。できるならば「あなたの能力が失敗を引き起こす状況とは?」のあとに、「自分の能力をどう改善すれば同じ失敗が起こらないか、一つだけブロックを足して自分を成長させた表現をしてみてください」などの、追加ワークをしたほうがよさそうだ。

 (B)他の人も同じであり、模擬的に失敗を想定する中で、その教訓をお互いに共有することについては、上記のワークを、複数人で一緒にすればよい。それぞれの「自分の能力上の強み」がどのように状況との関わりで変化していくのか知ることで、他者の失敗をあげつらったり、自分の失敗を過小評価することは避けられるであろう。ワークの時間を共有することで、実際に失敗が起こったとき、お互いを励まし合う関係も生まれてくることも期待できる。

 なお、「セルフ・コンパッション」が高い人は、オーセンティックな(自分らしい)状態にもあることがこれまでの研究で指摘されている。以下の記事も併せて読めば、「セルフ・コンパッション」と「オーセンティック・リーダーシップ」の二つの間をまたぐワークのあり方もイメージできるだろう。よければ以下の記事も併せて読んでみてほしい。

 このようなワークを通じて、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は、「セルフ・コンパッション」を育てることに貢献することができそうだと考えている。

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