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RTS2.0に向けて

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのファシリテーターの一人である小出正三さんを交え、有志で年末に「リアルタイム・ストラテジー」と名付けられている戦略策定プログラムのアレンジ版の試行を行った。その時の振り返り報告が先ほどアップされた。

 この記事では、上の小出氏のNoteを受けて考えたことを記しておきたい。

 結論から言えば、現在の標準プログラムである「リアルタイム・ストラテジー」の進化系が朧げながら見えてきたということだ。ここではそれを小出氏に合わせて「RTS2.0」と呼びたい。

アイデンティティからパーパスへ

 今回の一連の試行のなかで私が一番感じたことは、このRTS2.0においてはその中心に配置する組織を表すモデルを「アイデンティティ・モデル」から「パーパス・モデル」へとバージョンアップさせるべきということである。

 アイデンティティ(われわれは何者か?)からパーパス(われわれの存在価値はどこにあるのか?)は似ているが、少し重心の置き方が違う。

 以前に書いたNoteから改めて引用するとパーパスは次の3つの側面を含んでいるといえる。

 ①コンピタンス型:自社の商品サービスが果たす機能を表現したものとしてのパーパス
 ②文化型:事業を他の人たちとどのような思いや価値観のもとで進めていきたいかを表現したものとしてのパーパス
 ③大義型:実現したいと望む社会善(ソーシャル・グッド)を表現したものとしてのパーパス

ハーバード・ビジネス・レビュー日本版の2022年6月号に収録されている
ジョナサン・ノウルズ他「パーパス策定の原則」より。一部、筆者が表現を変更して掲載。

 上記のうち、特に②と③に反映されていることではあるが、「アイデンティティ・モデル」では必ずしも「他の人たち」と思いを共有することは求められないが「パーパス・モデル」ではそれが求められることが特徴となる。

 さらに「パーパス・モデル」ではエージェントの一部は、環境変化の撹乱要因ではなく自分たちが思いや価値観を共有するパートナーとなる。この組織がパートナーと共にパーパスを追求しつづける関係は、企業の活動を発展存続させる大きな原動力となるので、一種の「エコ・システム」と呼ぶことができる。「パーパス」と絡めて「パーパス実現システム」と呼ぶ方がより良いかもしれない。

RTS2.0の基本シナリオ(案)

 具体的なワークの進行例としては以下のような流れが考えられるだろう。なお、この流れは、(細部は異なるが)2022年の年末に粗々ではあるが試行しており、参加者の一人として手応えを感じた。

(1)「自社の商品やサービスが世の中のために提供している価値とは何でしょうか」という問いに対してモデルを作る。
(2)(1)で作ったモデルを統合して一つのモデルにする。
(3)「自社の商品やサービスを本当に必要としている人々や組織とは誰でしょうか」という問いに対してモデルを作る。
(4)(3)で作ったモデル間の関係性を、モデル相互の配置で表現する。
(5)「自社の商品やサービスを必要としている人々に提供できるために特に重要となる活動とは何でしょうか?」という問いに対してモデルを作る。
(6)(4)に(5)で作ったモデルを加え、それらのモデル間の関係性をモデル相互の配置で表現する。
(7)「自社が提供したい価値の創出に協力してくれる人々や組織はどのような方でしょうか」という問いに対してモデルを作る。
(8)(6)に(7)で作ったモデルを加え、それらのモデル間の関係性をモデル相互の配置で表現する。

 このとき、関係性は「配置のみ」ではなく、実際にパーツを使ってコネクションさせても良い。コネクションさせると「パーパス実現システム」としてより理解しやすくなるだろう。

パーパス実現システムのイメージ

 さらに、いくつかの追加ワークが考えられる。

<追加ワーク1>
(9)このコネクションを貼っていく順番の優先順位と実施時期を設定する
 ならば、それはそのまま「パーパス実現プラン(戦略)」となる。

<追加ワーク2>
(10)その関係を揺さぶる不確実性を生み出すものは何であるか、それらが実際に生じたら何がどう変わるのかを検討する
(11)その対策について、モデル化して配置する
 
この2つによって、より柔軟性を含む「リスク対応力組み込み済 パーパス実現プラン(戦略)」として示すことができるだろう。

<追加ワーク3>
(12)組織のメンバーにそれぞれ自分の取り組むべきこと・できることをモデル化し、「パーパス実現システム」にコネクションさせる
 これは、人々のエンゲージメントを創出し、パーパスの実現可能性を高めることになる。

 このRTS2.0のシナリオ(案)では、ある会社組織の構成員だけでなく、多くのステークホルダーを加えても実施できる。事業再生や地域創生などのテーマにも使うことができそうだ。

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