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『学習する組織』をレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの文脈で読む(17)第Ⅳ部 第12章「基盤」p371~

 この章では、「学習する組織」を導入するときに実践の現場の中でしばしば起こってきたこと、およびそれをどう乗り越えればいいのかについての示唆が示されている。

 この章では大きく2つの基盤づくりについて扱われている。

基盤づくり①:「参加的な開放性」の罠を避け「内省的な開放性」に向かう

 最初に取り上げられるのは、「開放性の精神」を組織に取り入れようと、「参加的な開放性」にとどまり、「内省的な開放性」に至らずに苦しむというケースである。

 「参加的な開放性」を行う組織では、組織のメンバーに自由に発言する自由を与える。何でも言ってよいとすることは一見よさそうに見えるが、他者との衝突や確執を生む可能性もある。組織の雰囲気の向かい方によっては、声は小さいが堅実な仕事をするメンバーが嫌気がさして組織を離れていくかもしれない。

 これに対し「内省的な開放性」を奨励する組織は、自分自身の考え以外の別の可能性に対して自由になろうと呼びかける。この場合、相手の主張にまず耳を傾けて、同じ組織の仲間とどこまで共有できるかを考えることになる。

 後者の「内省的な開放性」が浸透していくには「自己マスタリー」への取り組みが必要である。

 自己マスタリーの考え方の詳細については以下のNoteで扱っている。

 ポイントは「高度な自己マスタリーに達した人は、人生において自分が本当に求めている結果を生み出す能力を絶えず伸ばしていく」ということである。

 自己マスタリーのために、組織のメンバーにそれぞれ、自分が本当に求めていることについて考えさせる必要がある。「内省的な開放性」がここで問われるわけである。もちろん、それを全ての人が掘り起こせるわけではない。

 そこで、経営者が「社員が献身するに値すると感じる目的を掲げる」ことができなければならない。経営者もまた「内省的な開放性」のもとで、社員や世の中の声を聞き、目的を練り上げるのだ。

 また、自己マスタリーは自分自身の弱さにも目を向けさせる。自分の弱さを十分にわかっていないと、感情的な緊張に置かれたときにそれに流されてしまう。流されると他の人の話が聞けなくなり、変化へと踏み出させなくなってしまう。

基盤づくり②:「組織は生きているシステム」だと感じさせる

 もう一つは、「組織は生きているシステムである」と組織のメンバーに納得させることである。実際に、センゲは多くの組織で「組織=目的達成の機械」というメタファーが浸透しているとみている。

 このメタファーに従うなら組織のメンバーはその機械の部品(歯車)とかメンテナンス作業者というメタファーに自然と行きつくことになる。

 そのように自己規定をした組織のメンバーは、そのイメージでしか動けなくなる。

 「生きているシステム」というメタファーにいきなり近づけないことも多いだろう。もう少し入りやすい入り口として、本書では「組織を利益を生み出す機関ではなく、人々のコミュニティとしてみる」という見方を紹介している。

 つまり、一緒に働いている人は人間であり、私たちは運命を共にする人間の集団なのだということである。会社を表す英単語のcompanyの語源は「パンを分け合う」であり「仲間」である。

 そのような感覚をつくるためにしたほうがよいことは、何よりも他の人の仕事をよく理解しようと話を聞くことである。そして、その振り返りのなかで、お互いのつながり無くして仕事は回らないということに人々に気づかせるということである。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドによる学習する組織の基盤づくり

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを活用したワークでは、どのようなテーマであれ、「参加的な開放性」ではなく「内省的な開放性」を促進させることができる。

 標準的なワークショップとして、(1)お互いが普段の仕事で大事にしていることを語り、お互いに聞きあうこと(2)そして目指したい組織について語り、共有されたストーリーを作ることに取り組むのが良いだろう。

 この(1)と(2)で「自己マスタリー」が明らかになるとともに、組織とは同じ目的を目指す仲間である、という「学習する組織の基盤」を確立させることができると考えられる。

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