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レジリエンスをレゴ®︎シリアスプレイ®︎でどこまで身につけられるか

 レジリエンス(resilience: 再起力)は近年注目されるようになったコンセプトだ。現代も過去も人生には予測もしない困難がつきまとう。親しい人との死別から戦争や災害、犯罪被害、仕事上の失敗、までさまざまなレベルで心的なストレスに私たちはさらされている。

 上記のハーバード・ビジネス・レビューの論文集にも収められているダイアン・L・クーツ氏による「レジリエンス(再起力)とは何か」という論文によれば、さまざまな研究に共通してみられる「レジリエンスの高い人が要する3つの能力」は以下のとおりである。

①現実をしっかり受け止める力
②「人生には何らかの意味がある」という強い価値観によって支えられた確固たる信念
③超人的な即興力
  ※これらの日本語表現は上記の『レジリエンス』中の訳のままである。

 補足しておくと、①にある「現実」は、起こりうる可能性も含めての「現実」という意味合いである。論文では例として、モルガン・スタンレーがテロに備えて複数のオフィスを持っていたことをあげている(そして9.11が実際に起こったにもかかわらずすぐに再起した)。また、安易に楽観を抱く人は失望に何度も襲われることになり再起ができなくなっていくということも指摘している。「現実」は今起こっていることだけではなく、起こらずに終わった可能性も含めての「現実」なのである。

 ②については、「確固たる信念」という表現から、固定されたようなものに感じるが、実際には真逆である。ここで重要なのは「意味を見出す」ことである。つまり、困難な状況においても、それを自分の有望な未来への第一歩だと解釈する柔軟さ・意味づけの力がポイントである。

 また面白い指摘として、ダイアン氏は「個人として」レジリエンスが高い人ばかりだと組織が弱くなる可能性を指摘している。困難な状況を組織を出ていくチャンスと柔軟に解釈してしまうからだ。つまり、その組織で働く人々には、困難な状況でもお互いがつながり合って組織の活動の価値最大化を目指すという意味でコミュニケーションを取り合うことが求められる。その感覚を「有事」となる前から行っておかねばならないのだ。

 ③について、即興力にも解釈の力、意味づけの力が問われるとともに、手元にあるものをうまく組み合わせて事態を切り抜けることが求められる。宇宙で空気清浄機が故障して生死に関わる危機的な状況から狭い宇宙船内の手持ちの材料で地球に帰還したアポロ13号のケースはその好例だ。

 また、そうした意味づけと組み合わせの即興力は制約の中でこそ生まれるという。使えるものや範囲が限られるからこそ、どこからか新たに何か持ってくるのではなく目の前の物事の解釈に向かうということなのだろう。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎の中のレジリエンス育成要素

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークで使われる中核要素の一つは、人間のイマジネーションに基づく「プレイ」である。プレイは今の目の前の現実そのものではない。今ある起こり得ていない事に思いを馳せることである。ポジティブに感覚をふれば自分の中の眠っている才能や、周りにあるチャンスということになろう。ネガティブに感覚をふれば、隠れている自分の中の脆弱性や弱さ、潜んでいるリスクである。ネガティブに問いを振ることで、レジリエンスを「プレイ」の中で安全にトレーニングできるだろう。

 また、レゴ®︎シリアスプレイ®︎を同じ組織のメンバーと行うなかで、皆のつながりをより強い方向にもっていく(お互いを活かすということでもある)ように作品の解釈を重ねていくことは、「有事」の際のために組織にレジリエンスを埋め込むことになるだろう。レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、ブロックでの作品作りを通じてそれぞれが考えていることが非常によく出るので、お互いのことを分かり合うようになる。そのこと自体も、お互いに有事に向き合うレジリエンスの強化に寄与するだろう。

 即興性については、ワークを通じて、レゴ®︎ブロックという限られたパーツであらゆるもの(具体的なもの・抽象的なもの)を表現することで自然と感覚的に身についていく。ワークの本題とは外れたところで、私も参加者のパーツの使い方にしばしば感心させられる。それはレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークの隠れたA-haな瞬間なのであり、レジリエンスのもとになる制約の中で表現したいものを十分に示す力が向上した瞬間なのである。

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表現の可能性を超えていけ!
(飛んでいるように見えます?)

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