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レゴ®︎シリアスプレイ®︎で「考える力」を高めるワークを構想する③ありえないことワーク

ワークの狙い

 ある考えや意見に向かうときに大事なのは、その正しさを吟味することである。現代はその一つ一つを確かめている時間がないぐらい、新たな情報に溢れており、それを追いかけることに私たちは時間とエネルギーを奪われている。その分、正しさの吟味の経験や習慣が失われている。フェイクニュースの氾濫はそうした私たちの隙をついている。
 正しさを吟味するということは、自分自身のもつ「判断の基準」に気づくことにもつながる。それを確認するときには、私たちが「正しい」と考えることよりも、逆に「クレイジーなケース」を検討することでやりやすくなるというのが、このワークの基本アイデアを支えている。そのアイデアは、以下の本からいただいている。

 もう少し、この「クレイジーなケース(ありえないこと)」を考えるときに起こっていることを説明してみたい。

 例えば、「1つ目の人がいる」というケースが「ありえないこと」として挙げられたとしよう。次に「なぜそれがありえないのか」と問うと「人の目は2つだから」と理由が返ってきたとする。

 このようなやりとりは、「1つ目の人がいた」、「人には目が必ず2つある」、ゆえに「”一つ目の人がいた”ということない」というような論理の上に乗っている。

 これを意識することで、次のような思考をすることにもつながる。それは理由の真偽を吟味することである。「『人には目が必ず2つある』というのは真だろうか」という問いを投げ込む。
 参加者から「病気や怪我で1つ目になってしまった人もいるのでは」「生まれつきで1つ目の人もいる可能性は」などの意見が交わされるかもしれない。さらに「いままで1つ目の人をみたことがない」という擁護の意見は帰納法での推論になるし、「目が2つあることが『人である』条件としてふさわしいのか」「図鑑などでは必ず人は2つ目で書かれているから、それを標準として考えるのはおかしくない」といった定義の妥当性に話が及ぶかもしれない。こうした可能性を出し合うことで、ある情報の正しさの吟味の仕方を学ぶというしかけである。

 さらに、あり得ない理由は現在の人間の能力や知識や社会規制からくる限界に基づいていることへと参加者の意識を拡張することもできる。つまり、「1つ目の人がいない」という意見を支えているものには、遺伝子操作技術がそこまで高度化されていないこと(技術が確立すれば真偽がひっくり返る)や、技術があってもそうした操作が社会で許されていないこと(価値観が変われば真偽がひっくり返る)などへと目を向けることにもなる。そこから参加者の遺伝子操作への関心や社会規制への関心を高め、新たな学びへの動機関心を掻き立てることができるかもしれない。

具体的なワークの進め方(構想)

グループを3〜10人で組む。グループには、進行役としてファシリテーターが必ずつく。
※今回は、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のメソッドに従わなくても、ある程度成立する内容になっている。ただし、メソッドに従った方がより参加者のワークへの集中力は保たれると考える。メソッドに従う場合には、ブロックの使い方の練習などを済ませてから進める。

(1)皆に「絶対にありえないこと(もの)は何か」をブロックで作って出してもらう。
※言葉だけで説明させる「ありえない」だけに人によって、イメージのズレが出てきてしまう。そのズレを小さくするためにブロックでの表現というのは良い方法だと考える。

(2)各自に作った作品を説明してもらう。あわせて「絶対にありえない」理由についても作品を通じて語ってもらう。
※理由については、ホワイトボードなどに書き出しておくとよいだろう。
※ファシリテーターが論理構造として整理するのも一つの方法である。

(3)その作品の「絶対にありえない理由」の真偽の吟味をする。
※「どうしてそれが真であるといえるのか」「どうしたらそれが真であると証明できるのか」「それが当てはまるケースと当てはまらないケースが同時に存在していないか」などの観点から意見を出してもらう。作者本人だけよりも、参加者皆で意見交換するほうが、実りある時間になるのではないかと思われる。
※ときに発言が論理的な思考から外れる場合もあるかもしれない。ファシリテーターはその発言の中に論理性が担保されているかを常に判断し、場合によっては論理的でないことを指摘する必要もあるかもしれない。

(4)上記(2)〜(3)について、参加者の作品ごとに順番に行っていく。
※さきに参加者全員分(2)をしてしまってから、(3)に移る方法も考えられる。

(5)ワーク全体を振り返って学んだことや日頃からの生活や勉強で活かせそうなことについて、お互いに意見を述べてもらう。
※ペアや少人数グループに分け直して、まずそこで話し合いをさせたのちに発表させてもよい。

上記のワークはあくまで構想であり、実際に試してはいない。いつか試したのちに改めてレポートなどできればと考えている。

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