レゴ®︎シリアスプレイ®︎でアジャイル化するプロジェクトを支える
2022年2月号のハーバード・ビジネスレビュー(日本版)の特集は、アジャイル化するプロジェクトマネジメントであった。
プロジェクトは、期限と予算の制約内で独自性のある成果を達成するために行われる活動の一形態である。成果を生むプロセスが技術的に明確でルーティーン化された活動(工場での生産をイメージするとわかりやすい)とは対照的な活動として位置付けられる。
プロジェクトは、企業の競争がより激しくなり、新たな製品サービス開発が求められてくる中で、より部門横断的に、より小さく、より高速に行えるようにマネジメント研究と実務改善が繰り返されている。特にITソフトウェア開発などで生まれたプロジェクトマネジメント手法は「アジャイル開発」と呼ばれている。
アジャイル開発では、高速に試作品(プロトタイプ)を開発し、顧客に提供してフィードバックを得ながら開発を進める。フィードバックの中で仕様の変更などにも柔軟に対応することで期限内により顧客の満足度の高い成果物を生み出すことを狙っていく。
今回の特集では、どの論文でも(ある意味当然だが)、このアジャイル型のプロジェクトマネジメントの課題について取り上げている。
そこで取り上げられる中心的な課題は、活動の時間、役割分担、予算、品質管理など数値化できる部分のコントロールではない。
それらは『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK)』として長い期間(1996年〜)をかけ改訂を重ねながら、とりまとめられている。
このPMBOKの中で扱われつつも、なかなか実際には実践上で難儀している点が、今回のHBR日本版の特集で扱われているといってよい。
アジャイル化するプロジェクトのポイントと課題
ここではその特集の個々の論文を細かくレビューはしないが、総じて「プロジェクトメンバーの学習能力をいかに高く保つか」が問われている。
そこがポイントになる理由はシンプルで、より高速にメンバーとやりとりをして試作品を作り、顧客とのフィードバックを重ねるので、当初描いていた目的や計画、製品のイメージからはどんどんずれが生じることになる。そのズレをしっかりと埋めていく(それをチェックしていく)ことがポイントということになる。フィードバックを受け目的と結果のズレを埋めるという点は、学習理論の標準モデルの一つでもある。
そのズレが明示的で数値で表現可能なもの(試作品の改良点やコスト制約の変更)であれば修正が効いているかどうかはチェックしやすい。しかし、フィードバックの中で生まれる、あまり明示的では無いことに関するズレについてはどうだろう。
例えば、お互いの信頼関係や、方針転換された目的に対するコミットメントや、行動規範と裁量のバランスとか、先行きの懸念や新たに生まれた関心(それは感情的なものを伴うことが多いだろう)、などである。
明示的では無いことに関するズレを放置したまま、アジャイルなプロジェクトが展開していくことで生まれる活動障害は容易に想像できる。チームメンバー間の雰囲気は悪くなり、個々の活動がチグハグとなり試作品の品質が下がっていく。相手の懸念や関心に気づかないのでフィードバックもうまく受け取れない...
特集の論文では、こうした問題発生を防ぐための対策や起こった後の対処策は示されているが、「問題が起きているかどうか」を診断するためのプロセスにはあまり言及がなかった。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎で何に貢献できるか
レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークは、なかなか言葉には出てこないメンバーの中の感情や思考を浮かび上がらせる。
このプロジェクトに自分がどんな思いで参加しているのか。
チームの雰囲気をどう感じていて、どんな懸念を抱いているのか。
顧客や他のチームメンバーに対してどのような信頼感覚をもっているのか。
上記のような点に関する診断を定期的に行うことは、アジャイル化するプロジェクト活動のメンテナンスに有効であると考える。
できれば、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを活用して作ったチームメンバーでチームと個人メンバーの状態を表現した作品を、プロジェクトルームのどこかに飾っておくのも良いだろう。プロジェクトのなかの、ふとした瞬間に暗黙的に進行する側面に注意を払うための仕掛けになるかもしれない。
↑ルームのどこかに飾ってあれば↑#
ちょっとアートな雰囲気が出て良いかもしれないですね!
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