見出し画像

対話型鑑賞とレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド

 最近、対話型鑑賞という言葉と、それらのワークショップの話をよく目にするようになってきた。

 この「対話型鑑賞」のもつ可能性と、意味については以下のNoteが実によくまとめてくれている。

 あえて描き手の話や意図を正解とするのではなく、自分にとってそれがどう見えるかを考え、言語化し、他の人との意見の比較をする。
 それを通じて、多様な解釈を知るとともに、他者比較から自分の思考の特性を知ること、すなわちメタ認知力をあげることにもつながるという手法である。

 この方法はレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドと多くの共通点を持つ。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの基本的なパターンでは、ファシリテーターから共通の問いが出され、それに基づいてモデルを作り、そのモデルに意味づけをしてストーリーを語るように進められる。

コア・プロセスとも呼ばれる4つのステップ

 そのプロセスの中で、ある共通の一つの問いに対して、自分と他者がどのように考えていることが異なるかをモデルという表現を通じてこれ以上なくあやざかに比較する体験をする。その点について、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドも「対話型鑑賞」のワークショップと非常に似た効果をもつことになる。

 またレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドには、ちょっと特殊なワークとして、先に用意されたモデルの写真のもとに、同じものを作らせ「それが何に見えるか」を語らせる(意味付けさせる)ようなワークもある。
 これをするとさらに、多様な解釈があることや、その解釈がその人の主観に基づいていること(より丁寧に話を聞いていけば、最近の出来事や過去の強烈な体験などが反映されていること)に気付けるようになっている。

 異なる点としては、美術館においては絵画の製作者がその場にいないことである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドではモデルの作り手がすぐそばにいる。

 一つの問いについては多様な解釈があるが、その問いに対して作らせたモデルについては作り手の意味づけが何よりも大事にされる。それはワークショップに対して参加者が自分の意見が尊重されるという価値を感じてもらうために何よりも尊重されねばならないことでもある。

 ただ、この考え方を回避しながらも、誰かが作ったモデルに対して「対話型鑑賞」をする方法がある。それは作り手がその作品を解説せず、他の参加者がモデルの作り手になったつもりで説明してみるという方法である。もちろん、最後には作り手がその解説を行う。他の人が代わってモデルを説明することで、一つのモデルへの印象や解釈の差異が浮き彫りになる。

 また、もう一つの異なる点としては、レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、ワークショップのテーマに対して対話を重ねて理解を深めることが重視されるため「自分軸の発見」は必ずしも主要な狙いではないことである(副次的な効果としては存在する)。

 つまり、「自分軸の発見」を意識的に導き出そうとしたら、ワークショップのどこかのタイミングで「自分軸」を考えるための時間や機会を確保しておく必要がある。また、モデルの比較から出てくる「自分軸」を言語化することは、決して易しくはない。そのためのガイドラインや追加のワーク、ファシリテーションの方法を十分に工夫しておく必要があるだろう。

 このように、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドと「対話型鑑賞」には重なる点が多くあるが、「対話型鑑賞」のエッセンスをうまく取り込むことで、ワークの価値を大きく高めることを狙っていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?