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レゴ®︎シリアスプレイ®︎で、オーセンティック・リーダーシップを支援する

 世の中には、傑出したリーダーが確かに存在する。ただ、誰もが同じように行動し発言し振る舞えるわけではない。そのリーダーに近づきたいという気持ちになることは否定しないが、傑出した偶像的リーダーに近づこうとすればするほど自分の限界が明らかになる。それが長く続くと自分に自信を失い、それまで出来ていたことさえできなくなる。

 そのような観点から生まれたのが「自分らしさ」を大事にするリーダーシップのあり方である。オーセンティック・リーダーシップと呼ばれることもある。「自分らしさ」もしくは自身の価値観を核にすえた言動は、自分のものではない価値観に基づいたときよりも、力強く発信される。自分の思うまま振る舞うことは精神衛生上にも良いだろう。

 だが、このオーセンティック・リーダーシップにも、独自の問題がある。

 一つ目は「自分らしさ」や自分独自の価値観を人は必ずしも掴めていないことである。自己認識力(セルフ・アウェアネス)を高めないと、オーセンティックな自分自身を掴めず、もちろん能力も発揮できない。

 二つ目は「優れたリーダーシップとは満足できる結果を伴うことである」という点を重視するならば、「自分らしさ」は必ずしも満足できる結果を伴うわけではない。さまざまな研究は、置かれた状況(特に関係者からの期待)とリーダー本人の言動がフィットすることのほうが満足できる結果のためには重要であることを指し示している。

 上記で紹介した書籍でも後半では、「「自分らしさ」があだになる時」「オーセンティック・リーダーシップの弊害」などの注意喚起の論文が並ぶ。「自分に正直であることを言い訳にしてはならない」というのはなかなか厳しい言葉である。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎によるアプローチ

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使うと、これら「オーセンティック・リーダーシップ」を有効なものにするための支援ができると考えられる。

 まず、自分自身がどのような価値観をもっていて、何を大事にし、どのようなときに喜びや最大限のパフォーマンスの発揮を感じるかについて、手を動かしながら自分についてのモデルを作ることで内省的な思考を助けることができる。また、ブロックでつくる作品は「喜び」や「怒り(大切なものが損なわれたとき)」などの感情についても内省しやすい(ブロックには色という要素が入っているのが大きい)。

自分らしさ

 上の写真の作品は筆者が自分自身について作ってみたものである。新しいことを見聞きしてアイデアに転換し、細かいことを考えずに先鞭をつけるのが好きな自分を表している。

 次に、周りからの期待を可視化することも、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は支援できる。期待を作品にすることで客観的な表現としての側面が強まるので、会話のように即「自分への非難・批判」とは感じにくい。リーダー役に、自分への期待がどうあるかを作ってもらってもいいし、他のメンバーに作ってもらってもいいだろう。

周りからの期待

 上の写真は筆者のケースにについての周りの期待を想像してモデル化したもの。組織のトップに現場の苦しみや要望を確実に伝えてほしいという期待が表現されている。

 何よりも大事なのは、「自分らしさ」と周りの状況の差異を浮き彫りにすることである(大抵の場合、ずれているであろう)。この2つを物理的なブロックの作品として並べることで、視覚的なインパクトを持って差異を感じさせることをレゴ®︎シリアスプレイ®︎は支援できる。

 次に、この溝にしっかりとフォーカスし、それを埋めるための方法を探ることにもレゴ®︎シリアスプレイ®︎は役立つ。何が2つの作品の間にあれば、この溝を埋めることができるのかを作品として表現するのである。上記の著書では、オーセンティック・リーダーシップが機能するように、「応援団」を周りにおけという助言があるが、「その溝を埋めてくれるのは、どのような応援団か?」問いに基づく作品を作るのもよいだろう。

応援団

 上記の写真は私のケースに合わせて作った「応援団」の作品である。アイデアを考えるのは好きだが、メンバーの気持ちに鈍感である自分の代わりに、メンバーの悩みや苦しみを引き出してくれる癒しの存在でもある。

オーセンティックリーダーのデザイン

 上記の写真は、3つの作品を組みあわせてストーリーを作ったもの。応援団が悩みを整理したり気づいて運んでくれる。私はそれらを実行アイデアに転換し、他のメンバーを傷つけない範囲で(自分の責任のもとで)、実験的にいろいろ試すイメージを表している。

 このように作品で表現することによって、3つの作品がどう噛み合っているかを明確に意識しながらまとめることができる。もちろん、実際にストーリー通りに物事が運ぶかどうかは別の話だが、少なくともこのようなワークを実施することで、リーダーが何をどう考え、行動していくのかが明らかになった上で、その集団や組織は先に進むことができるようになるだろう。そして、リーダーの「自分らしさ」が暴走してしまい、関わる人たちが人間関係の泥沼にハマることはかなりの確率で回避できるだろう。

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