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レゴ®︎シリアスプレイ®︎で変革を促す

 ハーバード・ビジネス・レビュー日本語版 2022年4月号に「限られた情報で変革を促す方法」という論文が掲載されていた。

 タイトルにも表れているが、情報が少なくても変革に向けて進んで動く「起業家タイプ」ばかりならばいいが、実際には企業では、周りの説得や調整が必要なために十分な情報が集まってこないと行動し始められない「組織人タイプ」となってしまう人が多い。「組織人タイプ」中心の組織では、情報が少ない時には動けず、十分に集まって動き始めたときには手遅れというパラドックスをどう克服するかという問題提起がなされている。

 これらの克服方法について、本論文ではいくつかのポイントを挙げているが、1番の肝になっているのは、不確実な情報を意味付けるためのストーリーが作れるかどうかであるという。大量の情報を集めたとしても、それが何を意味しているかがわからなければ、動き出すための理由はなかなか生まれず、切羽詰まった状況が出現するまで動けはしない。少ない情報でも、それが何を意味しているかが見えていれば、すぐに動き出せる。

 また、状況理解の中心となりそうなコンセプトの本質が見えていないことが原因となることもありそうだ。あるコンセプトが世の中に知られるようになったとき、それが意味することが人によって異なっているなら、どの情報をもとに評価すべきか意見が分かれるはずである。

 「自動車のデジタル化」などはそのようなことになりやすいコンセプトであろう。「自動車のデジタル化」は、中心技術が移行することなのか、ビジネスモデルが変わることなのか、消費者の車イメージが変化することなのか、はたまた「自動車」が示す範囲が変わることなのか。その人がどの意味を重視するかで、重要な情報は変わるだろう。メンバー間でのコンセプトの意味の差異を放っておいて、変革を促すなら情報が増えてもかえって混乱するだけで動けなくなっても当然であろう。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎で意味をすり合わせながら、ストーリーをつくる

 情報が少ない段階での変革行動の鍵は、意味のすり合わせとストーリー化である。幸いなことに、レゴ®︎シリアスプレイ®︎はその両方を同時に達成できる

 例えば「自動車のデジタル化」なら、それを他の人に説明するための作品を作って語ってもらう。そうすれば、「自動車のデジタル化」に抱く差異が目に見える形で浮かび上がる。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎では、作品の差異は、断絶ではなく可能性である。それぞれの作品の差異は複雑な図形を別の角度から見ているようなものなので、それらの意味の関係性を考え、作品を配置したりつなげたりすればよい。その中から変化がもたらすインパクトについてのストーリーが生まれてくる。それは個人単独では作れないストーリーである点に価値がある。

 時間がゆるすならば、そのストーリーの周りに影響を受けるステークホルダーを表した作品を置き、どこからどんな変化の兆候が現れてくるかを話し合うのもよいだろう。その話し合いに参加しているメンバーは、何の兆候がどのような変化を引き起こすかについてのストーリーを自分の中に共有できているので「起業家タイプ」として動けるようになっているのである。

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