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レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでパーパス策定を支援する

 ハーバード・ビジネス・レビュー日本版の2022年6月号では「パーパス経営」が特集されている。

 なかでも、ジョナサン・ノウルズらによる論文「パーパス策定の原則」は非常に示唆に富む内容だった。

「パーパス策定の原則」のポイント

 彼らは、「パーパス」が企業経営に関わる取り組みのなかで”大出世”したものの、同時に混乱と失敗を生み出していると指摘する。その混乱は、パーパスが3つの異なる意味(型)をもつからだという。その3つとは以下の通りである。

①コンピタンス型:自社の商品サービスが果たす機能を表現したものとしてのパーパス
②文化型:事業を他の人たちとどのような思いや価値観のもとで進めていきたいかを表現したものとしてのパーパス
③大義型:実現したいと望む社会善(ソーシャル・グッド)を表現したものとしてのパーパス

ジョナサン・ノウルズ他「パーパス策定の原則」より。一部、筆者が表現を変更して掲載。

 ジョナサンらは、企業がこの3つのうちどれをパーパスとして採用するのかをよく考えるべきだという。特に③を無理に掲げることにより、実態がともなっていないことから批判をあびて企業ブランドを下げてしまう失敗を危惧している。

 また、ジョナサンらは、パーパスを策定するときには、社内のステークホルダーをバランスよく集める必要があるという。主に4種類のステークホルダーが重要だという。それは(A)「需要喚起」(販売、マーケティング、販売チャネル部門)(B)「従業員エンゲージメント」(人事部門、社内ネットワーク)(C)「ガバナンスとサステナビリティ」(法務、業務管理、広報、IR、コミュニティ対応部門)(D)「戦略と事業評価」(CEO、CFO、リスクマネジメント部門)である。
これらの種類は、同時に経営課題も反映しており、これらのいずれか(できれば全て)の課題の解決に自然と寄与するようなパーパスに仕上げるということである。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎の関わり方は?

 まず社内のステークホルダーをバランス良く集めるというアイデアは素晴らしいが、同時に難しさもある。それはそれぞれのステークホルダーは独自の見解や文化をもっているため、見解を擦り合わせていくのが難しいのではないかという点である。
 この点において、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は相互に自らの考えを机上に見える化して乗せることによって相互理解を進めるという点で非常に優れている。言葉だけでは考えのほんの一部しか見えていない状態であり、解釈の相違も起こりやすい。
 見解が鋭く対立する社会問題解決や紛争問題解決の世界的なエキスパートであるアダム・カヘンも、お互いの見解を可視化するためにレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドが優れていることを指摘している。
 パーパス策定するのはプロジェクト形式で進むので、そのチーム・ビルティングに使う価値は大きいであろう。

 また、パーパスのような非常に抽象的なものを策定することそのものにも、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は効果を発揮するだろう。すなわち、「自社の商品サービスが顧客にどのような価値を提供しているのか」という問い、「事業を他の人たちとどのような思いや価値観のもとで進めていきたいか」という問い、「実現したいと望む社会善(ソーシャル・グッド)とは何か」という問いについて、それぞれが直接語る上に、モデルを作り語る方法である。
 その後、それぞれのモデルから一つのパーパスへと絞り込む際には、参加者が作ったモデルから「ここだけは絶対にゆずれない」部分を抽出して一つのモデルに組みわせていく方法で迫っていけばよい。

 また、そうして見えてきたパーパスの意味の検証の際には、(A)「需要喚起」(B)「従業員エンゲージメント」(C)「ガバナンスとサステナビリティ」(D)「戦略と事業評価」の抱える課題を同じくモデル化して、パーパスの候補が、どの課題を解決することに寄与しているか、関係性を探っていく方法が採れるであろう。これらは全て机の上に見える化して進められるので、発言の趣旨や論点が次々に移り変わる空中戦を避け、プロジェクトを着実に前進させていくことが期待できるだろう。

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