レゴシリアスプレイメソッドにおける創造性について考える(9)『ジグザグに考えよう』:作る
レゴシリアスプレイメソッドにおける創造性はどこにあるのか。
本書で紹介される最後のステップは「形にする」である。
特に世界的な製品デザイン会社であるideoのデザイン思考の考え方を紹介して、形にすることでより思考が刺激され、改良や追加のアイデアの礎となることが強調されている。
また「thinkering」というコンセプトも紹介されている。これは、自分の手でものをいじりながら(tinkering)考えれば(thinking)、新しい考え方が出やすくなるというものである。
レゴシリアスプレイメソッドにおいてはシーモア・パパート教授が示した「コンストラクショニズム」というコンセプトがメソッドの核の一つになっている。これは、学習者は行動(他者との関わり、も含む)の中でこそ、より深い知識を構築するという考え方である。これもthinkeringと重なる部分が多く、thinkeringよりも「形にする」ことを人間の知的活動にとってより本質的なものとして積極的に位置付けている。
加えて行動は肉体の動きであるため、人間の肉体とのつながりも深く関わっている。「身体ー行動ー知識」の関係は「形にする」ということをより深く理解していくために欠かせない。
そして、「形にする」ことは、他のジグザグを構成する「質問する」「見る」などのステップを喚起するという意味においても重要である。
それだけ重要な、この「形にする」ことから創造性をより高めるために、提案される演習は4つある。
(1)描く
(2)見る
(3)組み立てる
(4)具体化する
(5)熟考する
描く
ここではまず「絵に描いてみる」ということが進められている。偉大なクリエイターや研究者はメモをたくさん残し、その中から大量のスケッチが見つかっているという。黒一色でなく、色をつけたり、一人ではなく他の人とコラボレーションしてスケッチを進化させるのも、良い方法だと推奨されている。
実は、レゴシリアスプレイメソッドは「組み立てる」の中で紹介されているが、ある意味、立体的にイメージを「描いている」ともいえる。そのときに、レゴブロックのカラフルさ、さらにブロックでの作品づくりは絵を描くことに劣らず、共同作業がしやすいということは、創造性につながる強みであると感じさせられる。
見る
ここは視覚的な切り取りを行い、それを「描く」に代えるということである。具体的にカメラで写真をとり、収集し、コラージュを作るという方法である。
レゴシリアスプレイメソッドはレゴブロックで作品をつくっていくので、写真ではないが、ブロックは動かしやすく、必要な部分のみを取り外して表現することもしやすいので、コラージュ的なものを作ることは容易である。他の人の作品と自分の作品とのつながりを見出すというのは、新しい気づきから創造性の発揮へとつながりやすい。
組み立てる
絵や写真に比べ、立体的なものは次元が一つ増える分、表現の幅も情報量も高まる。ここで、本書『レゴシリアスプレイ』も紹介されている。非常に抽象的なテーマも表現できる特徴があることも指摘されている。
具体化する
ここではアイデアをスナップショットのような静態的なものではなく、プロセスや一つのパッケージとして動体的な側面を描く演習が紹介されている。
例えば、アイデアをフローチャートとして描いたり、ある道を辿って目的地まで着く地図として描く。また、そのアイデアを一つの歌として表現する、参加者がロールプレイなどでアイデアを活用しているところを演じる、などである。
レゴシリアスプレイメソッドでは、レゴブロックのモデルそのものだけをみると静態的な表現に感じられるが、実際に言葉で説明をしてもらう、または質問の中でモデルの一部を動かしたりすると動態的な側面がたちまち現れる。
また、複数の人で、あるアイデアを活用している、さまざまな場面を作品としてつくってもらい、それらの作品を大きなテーブルに並べていくなどもよい。モデルからプロセス的な側面、動態的な側面を引っ張り出す技術はファシリテーターとして持っておきたい。
熟考する
ここでは、アイデアを形にしたのちに、さらにそれらを使って創造性を高めるための工夫を紹介している。一つは、形にしたアイデアをディスプレイして目に入るところに置いておくことである。また、それらをアイデアを眺めて、そこに至るプロセスを想像してみることも、別のアイデアを発見するヒントになる。また、視覚化されたアイデアを持ち出して他の人に見せながらプレゼンテーションすることも、アイデアから別のアイデアを生み出す創造性につながる。
レゴシリアスプレイメソッドは作ることで、考えを視覚化するだけではない。コアプロセスと呼ばれる中心的なプロセスには、作った後に、それを他の参加者に見せ、合わせて作品について説明し、お互いに質問をしあってより深くそのような作品を作った背景に迫っていくプロセスがある。
つまり、ここでいう「熟考する」にあることをコアプロセスでは行なっているのであり、この本で著者がいう創造性を自然と引き出すためのプロセスに沿っているということである。
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