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02_出会いを求めて

こちらの連載、第一弾は以下よりご覧ください。

くるくるハイツ2回目の訪問。(1回目のことはいつか書きます…)
12月に入って「20日に脱穀するのでお気軽にどうぞ!」と百恵さんから連絡がきた。くるくるハイツのお米作りは今年が初めてのことらしい。

実は11月に稲刈りがあって、それもお誘いいただいたのだが予定が合わず行けなかった。そして今回の脱穀、興味津々で絶対行くぞと決めていた。私が行けなかった稲刈りには何人かお手伝いで来ていた人もいたらしい。くるくるハイツに集まる人たちはどんな人なのだろうと興味もわいていた。

私はまたあの広さを感じたり、今回は新たな出会いを求めたいと思いながらくるくるハイツに向かった。

見知らぬ共同作業

到着早々、玄関前に唐箕(とうみ)がどどーんと待ち構えていた。

とうもみ

さっそく新たな出会い。唐箕は社会の教科書でしか見たことがない。こちらは昭和に使われていたものだが、とてもきれいな状態だ。昭和、平成を超えて令和の時代に唐箕を使うことが逆に新鮮な気持ちだった。

次にお米が育っている畑へ向かった。そこには百恵さんと息子さん娘さん、近所の子どもたち、男性二人が足踏み脱穀機で脱穀をしていた。そして後から女性とそのお子さん、男性と女性も新たに合流した。百恵さんと息子さん娘さん以外は全員初めて会う方で、ぎこちなく「これ手伝いますね」「これどうすればいいですかね」など言いながら、脱穀機のペダル踏みを交代しながらやった。

脱穀機

(↑足踏み脱穀機デス、くるくる回ります)

いなわら

(↑これくらいの量をペダルを踏み踏みしながら脱穀)
お手伝いにきていた男性(保育士さんらしい)は熟練者並みにマスターしていた。脱穀の終わり頃にやってきたイケオジな感じの方は、百恵さんと同じように糸島で古民家を改修しながら住んでいるご近所さんとのこと。

人と触れていく時間

脱穀を終えてお昼を食べに行く道中、百恵さんから脱穀機を遠くから持ってきてくれた方のことを聞いた。その方は脱穀のやり方を教えてくれた人でお米の育て方のプロらしい。

ただ脱穀をするだけではなく、なんとなく始まった会話や表情からなんとなくその人の人柄に触れることができた。私はそれが楽しく感じた。

昼食を終えて唐箕で藁などの塵とお米を選別した。唐箕もハンドルをくるくる回しながらやる。「わー」とか「おおー」とかみんなでその作業をしているのを見ると、じっくり腰を据えて会話をしていないのに不思議と一体感のようなものが生まれていた。

自己紹介もしていないので名前やどんな人なのかもよくわからないけど、同じ空間で同じ作業をして同じように楽しんでいた。そこには遠慮やどうしたらいいかわからないという戸惑いのようなものもあったけどストレスではない。そんな空気が流れていた。

そして百恵さんに質問したり、初めて来た人同士で情報交換をしたりと何かを吸収したいという熱量を感じた。唐箕での選別も終わり、ほとんどの人が帰り、私とまゆみさんという女性が残っていた。その女性は田舎と自然が大好きで、「私はみかんの木が1本あれば十分なの」とニコニコしながら言っていたのが印象的で土いじりの魅力について語ってくださった。

そして、最終的に百恵さんのスナップエンドウが好物だという話から百恵さんとまゆみさんと私でくるくるハイツの畑で育てようということになった。百恵さんと別れてから「ここで会えたのも何かのご縁だから」ということでまゆみさんが私を最寄りの駅まで車で送ってくださることになった。

ゆるやかに出会うということ

この一日はくるくるハイツでくるくる回しながら脱穀をし、スナップエンドウを育てる約束をするという、なんだか目まぐるしい一日であった。帰りの車の中で、まゆみさんには私と同い年の息子さんがいることや私の将来の夢などいろんなことを話して、今日初めて会った気がしないほど打ち解けていた。

そしてなんといっても面白いことにまゆみさんの名前は車を下ろしてもらう直前、連絡先を交換するときに知った。「順番違うくないか…(笑)」と心の中でツッコみつつ、また会う約束をしてお別れをした。

この一日を過ごして今思うことは、誰かと出会ってその誰かがどんな人なのかを知るのは名前からじゃないということである。どんな場面でも最初はまず自己紹介が普通である。「私の名前は○○で、何歳で、趣味は□□です。」こんな定型文は必要ないのかもしれない。

この定型文でその人はわからないけど、定型文で人をこんな人だと勝手に決めつけてしまうことがある気がする。自己紹介をしない。それは私が誰かの娘でも妹でも誰かの友達でもなくて、ただの私であることができるのではないだろうかと思う。そこに心地よさを感じた。

これからは、知らない誰かとなんとなく話しながら、自分の知りたいことを相手から引き出すそのプロセスを大事にしたい。そんな心の変化が生まれたくるくるハイツでの一日だった。

つづきます。

ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。