見出し画像

波の先、空の下で出会った笑顔

東京から夜行バスで9時間。この日は数十年に1度の大雪でフェリーが欠航。私は2日がかりで、ある島にたどり着いた。

大学生には時間があると行っても、せいぜい4年。そのなかで、授業も就活もあるので自由に使える長期休みはそれほど多くないと感じている。

大学の課題に追われていた2019年の12月。気づいたら大学での課題は、「やりたいこと」から、「やらなくてはいけないこと」へ変わってしまっていた。現実逃避をするように次の長期休みは何をしようか、と考えるようになった。

「どこか知らない土地で暮らしがしてみたい」
そんなときに出会ったのが、島根県に浮かぶ離島、海士町だった。

島根県隠岐郡海士町
人口:およそ2400人
特産品:岩牡蠣、隠岐牛、ふくぎ茶など
海士町観光協会のHPはこちら

海士町で暮らして、3ヶ月が経とうとしている。
朝6時半に響く町歌で目覚め、天気と波の高さをチェックするのが日課。

夕日が綺麗だと車を停めて、写真を撮る。商店に買い物へ行けば、ついつい話しこんで1時間が経っている。もしも船が欠航すれば、商店は品薄になり、地元の高校は休校になる。それが海士の暮らしなのだ。

そんな海士町にある唯一の高校、隠岐島前高校で「聞き書き甲子園」の参加者である、高本亜梨紗ちゃんと出会った。

初めて会った時から、高校生と話しているとは思えないくらいしっかりしていて、こっちが圧倒されるほどだった。でも、いろんな話をしていくうちに、彼女も悩みながら、これからやりたいことを楽しそうに語ってくれる、可愛らしい高校生だと思った。

そんな亜梨紗ちゃんに海士町での暮らしを聞いてみた。
(書き手:空佐和)


空:改めましてこんにちは。簡単な自己紹介をしてもらってもいいかな?

亜梨紗:こんにちは!島根県立隠岐島前高校3年の高本亜梨紗です。出身は熊本県です。今は、海士町で寮生活をしています。部活はバスケ部に所属しています。自然がとてもとても好きです。よろしくお願いします!

れっきき

島根県立隠岐島前高校:日本海に浮かぶ隠岐諸島で唯一の高校が海士町にあります。高校生は3つの島を行き来する内航船を使い、島前高校に登校します。代表的な取り組みの一つとして、日本全国・世界各国から生徒が集まる「島留学」が挙げられます。今回対談をしている高本亜梨紗ちゃんも、島留学を使って故郷の熊本を離れて島前高校に通っています。

空:ありがとう。ありさちゃんとは海士町のことをもっと話したいな〜。初めて海士町に来た時のこと覚えてる?

亜梨紗:中3の夏に、島前高校のオープンスクールに来たのが初めてでした。地元は海が近くなかったので、海の青さ、綺麗さを見て、一気にワクワクしました!

空:すごいわかるかも!こっちの海ってすごく澄んでて癒される。初めて来た時、フェリー(本土と隠岐を結ぶ)も内航船(隠岐諸島の島と島を結ぶ)も乗り方がわかんなくて不安だった(笑)。

亜梨紗:確かに、なかなかない経験かもしれないですね。内航船のデッキに出た時、船が通った後にできる波を見て驚いたのを覚えています。

空:海士では内航船が欠航すると高校が休校になるよね。それを聞いたとき、島の高校生活っていつも自然に囲まれてるなって思った。休みの日とか、休校になったら何してるの?

亜梨紗:休校の日は風が強いので、寮で大人しくしてることもあります。この前は、友達と小さい頃の憧れだったお菓子の家を作りました!
普段の休みの日は、農家さんのところにお手伝いに行ったり、高校の畑の作業をしたり、友達と遊びに行ったりしています!隣の西ノ島に行くなど、みんなそれぞれ過ごしています。

空:島留学で来ている高校生が多いから農作業とかすごく楽しいんだろうね!しっかりしている子が多い印象だったけど、YouTubeに動画あげたり、TikTok撮ったり、すごく高校生らしいなぁって!海士町で暮らす人たちについて、何か印象深いエピソードとかある?

亜梨紗:パッと思いついたことが2つあって。1つは、なんでもできる人が多いことですね。仕事をしながらお米を作っていたり、海に潜ったり。「ないものはない」っていう精神からなのか、ないっていう環境なら自分たちでする精神を感じました。

空:うんうん。

亜梨紗:2つ目は、人との繋がりです。自分が何かやりたいって言った時に、「そしたら、あの人のところに連れて行ってあげる」と言われることがよくあります。とてもありがたいことだなと思うし、挑戦しやすい環境の一部だなとも思います。
まだまだ関わったことない人がたくさんいるので、これからたくさん関わって、海士町で暮らす人のこともっと語れるようになりたいです!

空:この前、しいたけの菌打ちの手伝いで亜梨紗ちゃんとたまたま会ったよね。そこの農家さんも平日は仕事をしながら、土日にしいたけ栽培をするっていう…。すごすぎる。
海士にいると、東京じゃ出会えない人にばんばん出会えて、都会にいるよりも人脈は広がるんじゃないか!って思う。

亜梨紗:海士町にIターンで来られた方の人脈がすごいなと感じることが多いです。

空:人が人を呼ぶってこういうことだなって。そこにいろんなことに挑戦したい高校生も合わさって、もっと大きな化学反応が起きる予感。てか、起きてるね(笑)。
亜梨紗ちゃんは今回「しぜんなガッコウ」で島前高校の記事を書くけど、どんな人に読んでもらいたい?

亜梨紗:普段お世話になっている方や家族に読んでもらいたいです。自分の学びや感じたことを書いて経験を還元できればと思います。そして、たくさんの人に見てもらいたいです。特に、同じ高校生や学びの環境を作っている人に見てほしいなと思います。

空:今までの気持ちを振り返る場になるといいな!私も実際に話していて、亜梨紗ちゃんの考えとか雰囲気がすごくいいな〜って思ってたから、たぶん記事を読んだ人はファンになっちゃうね!

亜梨紗:初めてなので、慣れないこともあると思うのですが、自分と正面から向き合って書いていきたいと思います!

空:頼もしい!楽しみにしてます!

(亜梨紗ちゃんが書く隠岐島前高校での物語、更新までしばらくお待ちください)

ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。