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大企業のDXが進まない理由をゆるっと考察

「日本国内の大手企業で、DXが進展している企業は?」と聞かれて、会社名がパッと出てくる方は少ないと思います。私は出てきません。

強いて挙げるなら、直近の事例でないものの、コマツのKOMTRAXが思い浮かびます。しかしながら事業としてどこまで成功しているのか、その効果はあまり聞こえてきません。

あとは、PayPay等のスマホ決済、銀行取引のオンライン化などは、私たちの行動様式に大きく影響しているので、DX事例だと思います。

それでは「海外には最先端のDX事例が存在するのか?」ということなのですが、少し調べてみます。


海外のDX実践企業


下記の企業がDXを実践している企業、DX成功事例として挙がっています。違和感は無いです。

  • Amazon

  • ウォルマート

  • Uber

  • Spotify

  • Netflix

  • ドミノピザ


実際のところ日本の大企業のDXはどうなっているのか?


私が在籍していた企業はDXに取り組んでいましたし、感覚的には大企業の半分くらいはわりと真剣にDXを推進していると考えます。一方で目に見える成果が出ている企業はまだ少ない印象です。

pwcの調査でも以下の通り、「日本のDXはこれから」という感じのようです。

日本企業はDXに成功しているのか?

回答者のうち59%は「経営戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と答えており、半数以上がデジタル技術を活用したビジネスモデルへのトランスフォーメーションや、企業そのものの変革に取り組んでいることが分かります(図表1)。

図表1 DXの取り組み状況
一方で、「十分な成果が出ている」と答える回答者は10%に留まっています。「何らかの成果が出ている」と評価する回答者が半数あまり存在する一方で、成果が芳しくないとみる回答者も約3割存在しています。今回の結果を踏まえると、日本企業の多くはDXに成功していると言えるまでには至っていないでしょう(図表2)。

https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/dx-survey2022.html


DXは成果が出ないから投資しない


上の調査においても、"成果が芳しくないとみる回答者も約3割存在しています"とありますが、社内のDXの進捗や戦略を報告する際には、その成果を示すことが求められます。

私もそのような報告時に、「これまでのDXの成果を示せ」と言われ、困ったことが何度もありました。その際の「成果」は売上であり、売上にどのように貢献しているのか?を問われます。

「DXの成果を示す方法」については別の機会にまとめるとして、DXの成果、DXの効果が発揮されるロードマップを示すこと、握ることは大変重要であり、それが出来ていないと「DX反対派」による『成果が出ない取り組みは投資の優先順位が低い』という論理に負けてしまいます。

大企業はDXを進めたくないのか?


先ほど紹介したpwcの調査においても、一定規模以上の企業の約6割が、経営戦略に基づき全社的にDXに取り組んでおり、少なくともデジタル活用を否定する経営者の存在はほぼ皆無かと考えます。

デジタル投資に消極的と見ていた「サイゼリヤ」も、キャッシュレス会計が導入されたり、ウェイターのハンディターミナルが高度化していたり、デジタル化が進んでいます。


大企業の従業員はDXに対してどう考えているのか?


こちらも調査結果があるので参考にします。まずは2022年5月に発表された調査結果です。

今後のDXへの関わりに“消極的”な人は約6割(60%) 理由のトップ3は「面倒くさい」、「大変そう」、「自分にできるか不安」

https://www.dreamarts.co.jp/news/press-release/pr220524/

もう一つ、異なる調査パネルですが、こちらは2021年9月発表の調査結果です。

大企業人材の44%は、DX業務にネガティブ・無関心

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000054457.html

大企業の従業員の凡そ半分が、「DXにネガティブ・消極的、無関心」というのは、私も違和感がないです。

私が属していた企業の、DXに対する従業員の態度は、以下のように分類できるかなと考えます。

① DXに対してポジティブ

  1. 自分の強みが活かせる

  2. (スキルアップすることで)自分の強みになり得る

  3. デジタル活用は必然だと考える、会社の売上や発展に貢献できると考える


② DXに対してネガティブ

  1. 自分の強み(アナログ)が使えなくなる

  2. 分からない、自分の弱みになり得る

  3. 新しいことはやりたくない、できるだけ先送りしたい


大企業におけるボトルネック


私は、大企業でDXが進まない要因の中で一番大きなものは、「中間管理職」、中でもより裁量権が強い上位管理職だと考えます。理由は、前項の分類から説明できます。

その前に、「中間管理職」以外が何なのかと、それらはボトルネックではないのか?説明します。

トップマネジメント

経営陣にとって、DX・デジタル活用は待った無しで、デジタルを手段として収益を上げること、効果的な取り組みを行うことが大きな課題であり、それをやらない、やれないことで、その地位を追われます。

一般社員

上の調査の通り、DXにネガティブな社員が多いのは事実ですが、上司が「やれ」と言ったらやらざるを得ません。上司が「やれ」と言わなかったらやりません。社員自身の評価の観点では、「やらない」方が得の場合もあります。

中間管理職

日本の大企業の中間管理職、特に部長以上の上位管理職は、50歳前後の年齢で、これまで約30年、確立したオペレーションに則って、業務において一定の実績を残し、社内政治においてもうまく立ち回ってきた方が多いです。

また大企業の出世ルートとしては、40歳前後から部門異動や、海外勤務を経るという王道がありますので、いわゆる「管理職」、The generalistが育成され、専門性が備わっていない傾向があります。

それが突然、「デジタルで変革」という環境変化に対応するには、これまで自分が出世するために培った資産をある意味リセットし、会社のため、部下のため、柔軟な思考でリスタートする必要があります。

  • 自分の強み(アナログ)が使えなくなる

  • 分からない、自分の弱みになり得る

  • 新しいことはやりたくない、できるだけ先送りしたい

「だからこうすべき」まで言いませんが、大企業の現状は大体このような感じかなと考えます。


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