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カトウ

あと数日で関東を出て違う土地に行く、
そんな気持ちの中、思い出した奴がいた。

カトウ

高校時代の同級生。
自分は隣町の高校に通っていた。

隣町であって、
ほとんど知り合いが居ない、
高校で初めましての人ばっか。
全然友達も出来ないまま高一が過ぎて、
高二で学科選択で男子が少ない学科を選んだ
おかげで友達が出来た。
その友達のひとり、カトウ。

カトウはiPod派ではなく、
WALKMAN派だった。

地元のFM局で流れた、
好きなアーティストの曲を
WALKMANで録音してた。

カトウのWALKMANで
音楽を聴くのが好きだった。

その時よく聞いていたのは、
米米CLUB 抱きしめたい

なぜ世代でもない米米CLUBが入っていたのかは
分からないけどよく聞いていた。

高三に上がり、
カトウとはクラスが別れた。
とは言っても、
自分がいる学科は男子がいるクラスは2クラス。
体育だったり、選択教科では一緒になる。

商業高校だったこともあり、
進路は8割が就職、2割が進学だった。

自分は就職先を決め、
卒業まで過ごしていた。

そして、卒業まで1ヶ月、
就職組の1次、2次落ちた人達でも
何とか進路を決めて、
みんな足並み揃えて卒業を迎えようと
している中、
学年で唯一、進路が決まっていない奴がいた、

カトウだった。

進路が決まっていない、じゃなくて
就職も、進学もしないことが決まっていた、
が、正しいかもしれない。

進路で働くのか、学ぶのか
決めている周りの同級生は
カトウを不思議にいじった。

カトウは適当にあしらっていた。

そして卒業。
本当にカトウだけ、就職も進学もせず、
卒業した。

自分はカトウの選択を不思議と思う暇もなく、
自分の就職の進路に溺れて行った。

いろんな研修が落ち着いて、
名古屋の支社に配属された5月頃、
カトウと会うことになった。

八事で集まり、歩いて、
塩釜口のデカ盛りが有名な定食屋に行った。

その道中、
近くの火葬場でバイトしてて、
某有名人を運んだ話や、
近くで住んでて、音楽をやっていると聞いた。

高校時代、
カトウは洋楽が好きだったことを思い出した。

近々、ライブハウスでライブをやるから、
来て欲しいと言われた。
絶対行くよ、と伝えて別れた。

ひと月後、鶴舞のライブハウスで、
カトウはベースを弾いていた。

今日演奏した何曲かが収録されている、
自作のCDが舞台袖に置いてあり、
投げ銭スタイルで販売していた。

いくら出したかは覚えていないけど、
CDを買って帰った。

そのライブのあと、
カトウは東京に行くと言って、
連絡がそこで終わっていた。

10年前ぐらいの出来事。

10年で環境が大きく変わった。
自分が関東に住んで仕事してるとは
思わなかった。

そんな時にふと、
東京に行ったカトウを思い出した。

もう地元に帰ってるかもしれない、
家庭を持っているのかもしれない、
わからないけど、連絡取ってみた。

まだ返信はない。

高校時代。
嫌な思い出しかない時代。

卒業して10年がたった今、
少し印象が変わっていくのかもしれない。

そのきっかけが、
カトウ、なのかもしれない。

画像は
高三のとき、クラスメイトが、
黒板に描いてくれた筆者の似顔絵。

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